まずは、日経225オプションのガンマの値を見てみましょう。0.000云々といった非常に小さな値が並んでいます。前回の例でも、2月20日(金)午前9時10分時点で、3月限権利行使価格8000円コールのガンマは「0.000457」となっていました(注)。
(注)シンプレクス・インスティテュート製のオプション・プライサー(計算機)で計算しました。
この小さな小さな値である「ガンマ」も、日経平均の値が変化する時、オプションの値段に影響を与えます。その影響のことを、ここでは「ガンマ分」と呼んでいますが、ガンマ分は下記のような簡単な式で求めることができるのです。
オプション価格の変化(ガンマ分)=(日経平均の変化の二乗)×ガンマ÷2
本来、「ガンマ」とは、日経平均が1円動いた時に「デルタ」に与える影響を意味します。ガンマが0.000457の時は、日経平均が1円動くと、デルタが0.000457変化します。このことからわかるように、日経平均が500円も動けば、デルタの値も大きく変わってしまいます。だとすると、「日経平均が変化する前のデルタ」を使ってデルタ分を計算するだけでは、オプション価格の変化の予測がずれてくるので、このような式が登場するのです。ガンマ分の式についての細かい説明は省きますが、便利ですので、この式は是非暗記してしまって下さい。
では、ガンマ分がどれくらいになるか、式を使って見てみましょう。
日経平均が100円下がった時
(-100円)×(-100円)×0.000457÷2=+2.3円
日経平均が500円下がった時
(-500円)×(-500円)×0.000457÷2=+57.1円
日経平均が100円下がった時、ガンマ分は「2.3円のプラス」になることがわかりました。一方、日経平均が500円下がった時のガンマ分は、「57.1円のプラス」という結果になりました。日経平均が100円下がった時と比較すると、日経平均の変化は5倍ですが、ガンマ分の変化は5倍にとどまらず、なんと約25倍(=57.1÷2.3)になっています。これは、ガンマ分を求める式の中の「二乗」の効果によるものです。
ガンマ分を求める式の最も重要なポイントは、「日経平均の変化」を「二乗」する点です。上記の日経平均が100円動いた時の例のように、日経平均の変化が小さければ、二乗したところでガンマ分の値は小さく、無視してもいいくらいです。しかし、日経平均が500円動いた例を見ると分かるように、日経平均が大きく変化すると、ガンマ分が極端に大きくなってきます。
また、日経平均の変化が「マイナス」の時でも、二乗すれば、値は「プラス」になります。ガンマの値は常にプラスと決まっているので、「ガンマ分」は、日経平均が上がろうが下がろうが、常にプラスになることがわかります。
コールの場合、日経平均が下がると「デルタ分」は「マイナス」になります。しかし、「ガンマ分」は、日経平均の上下に関わらず、常に「プラス」なのです。
前回、2月20日に日経平均が500円下がった場合、3月限8000コールの値段は75円程度のマイナスと予想しました(IVは変化しないという前提)。その理由は、前回求めたデルタ分「-135円」(=-500×0.27)に、今回求めたガンマ分である「+57.1円(呼び値が5円なので+60円)」を足した結果が-75円だからです。
このように、日経平均の変化によるオプション価格の変化は、(デルタ分)+(ガンマ分)で求められるのです。
コールを買った時、デルタ分を考えると日経平均が上がることが望ましいのですが、さらにガンマ分を考えると、日経平均が大きく上がれば上がるほど、コールの値上がり幅が大きくなるのです。プットの場合は、その逆です。日経平均が下がれば下がるほど、ガンマ分が効いてきて、プットが値上がりします。
オプションを「買う」場合は、ガンマ分も考慮に入れ、日経平均が「大きく」動くという相場観の時に戦略を練ってみて下さい。
次回は、オプション価格に影響を与える要因のうち、「満期日までの日数」のお話をしていきます。
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