就職難の中国、日本留学でチャンスをつかめ:ヒューマン・齊藤氏
日本では多くの大学や専門学校が少子化による学生数の減少で定員割れを起こしており、中国人留学生の増加に期待が寄せられている。上海で日本への留学や人材紹介を行う「上海ヒューマングループ」の齊藤総経理に2つの国を結びつける想いについて話を聞いた。<br><br>【関連写真】<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0721&f=column_0721_005.shtml&pt=large" target="_blank">中国市場でも「資生堂らしさ」の追求を:資生堂・鎌田氏</a>(2009/07/21)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0630&f=column_0630_008.shtml&pt=large" target="_blank">中国顧客も満足させる価格とホスピタリティ:アスクル・千代氏</a>(2009/06/30)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0617&f=column_0617_002.shtml&pt=large" target="_blank">中国で9年連続トップシェアの秘訣:東芝テック・須毛原氏</a>(2009/06/17)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0513&f=column_0513_006.shtml&pt=large" target="_blank">上海でも『黒烏龍茶』のヒットなるか:サントリー・福山氏</a>(2009/05/13)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0507&f=column_0507_004.shtml&pt=large" target="_blank">我が人生、ゴルフ場とともにあり:上海ウエストGC・原田氏</a>(2009/05/07)"(サーチナ&CNSPHOTO) 画像(1枚)
 中国から日本への個人観光旅行が始まり、ますます両国の距離が縮まろうとしている。これに期待を寄せるのは観光業界だけではない。
日本では多くの大学や専門学校が少子化による学生数の減少で定員割れを起こしており、中国人留学生の増加に期待が寄せられている。そこで、上海で日本への留学や人材紹介を行う「上海ヒューマングループ」の齊藤憲治総経理に2つの国を結びつける想いについて話を聞いた。

――徹底的な基礎の繰り返しでしか、身に付かないことがある

 「これまで私はずっと営業をやってきました。あまり営業マンっぽく見えないかもしれませんが、昔からこんな感じでやってきたんです」

 日本語教育、人材紹介、コンサルティングの3法人で構成されている「上海ヒューマン」の総責任者である齊藤氏はそう言って笑った。親会社は、日本で人材紹介や派遣・社会人教育・介護などの事業を行う「ヒューマンホールディングス」(以下、ヒューマン)である。

 ヒューマンは東京と大阪に日本語学校も経営しており、現在、41の国と地域から来た約800名の学生が学んでいる。さまざまな国籍の学生が集まった国際的な雰囲気の中で日本語を学べるのが特徴だという。

 世界一の人口を抱える中国は当然重要市場だという認識だ。1997年には天津に「修曼天津同文渉外職業学校」を設立し、早い時期から中国進出を果たしている。また、2003年には上海へ進出し、人材紹介事業を皮切りに業務を開始した。当時、齊藤氏は日本のヒューマンリソシア(人材関連と教育事業部門)のトップで、上海のでの業務開拓を円滑に進めるため、04年に短期の予定で来海したという。

 それまで出張経験はあるが、中国に駐在するのは上海が初めて。
そこで齊藤氏がまず始めたのが、中国語の学習だった。

 「出社初日、日本語の上手な中国人の方が人材登録に来ていた。とっさに『中国語を教えてください』とお願いし、週3回、その方から中国語を教わるようになりました」

 齊藤氏は4か月間、この人のもとでひたすら発音練習を続けたという。

 「私は長らく音楽をやっていたので、耳には自信があった。外国語の学習も一番重要なのは音ではないかと思ったんです」

 こうして音から言語習得へのアプローチを試みた齊藤氏だったが、何事も基礎の基礎を徹底して反復することで、身に付いていくものだという。

 「楽器と同じ。つまらないことを地道にやり続けることでしかマスターできないことがあるんです」

――会社の落ちこぼれだって、成長することができる

 実は齊藤氏は、紆余曲折の仕事人生を歩んできた。大学卒業後、大手企業に就職したが、営業成績が伸びずに2年で退職。しばらくはプロのジャズトロンボーン奏者として生計を立てていた。その後再び営業の世界に戻ったのは、30歳の時だった。

 「リゾートトラストという一部上場のリゾート開発会社に再就職しました。形のないモノを売るのが仕事。
もともと営業がダメで辞めた人間が、簡単に売れる商品ではありませんでした」

 その当時、齊藤氏は客先と話すことが非常に苦手だったという。それを克服するために始めたのが、会社の先輩のアドバイスによるロールプレイングでの訓練だった。

 「1年半の間、家族を相手に毎日特訓したものです。初対面の人に私という人物を気に入ってもらえないことには、会員権という目に見えない商品を相手に理解していただくことなどできない。最初は苦労しましたが、毎日の練習のおかげで、その後は営業成績がぐんぐん伸びました」

 こうして齊藤氏は、トップセールスマンに見事変身する。難易度の高い商品が、努力によって面白いように売れるようになったのだ。のちにここでの経験が買われ、ヒューマンに入社することになる。それから15年、齊藤氏は人材関連や社会人教育の現場に携わってきた。仕事で苦労と努力を重ねてきた齊藤氏にとって、まさにうってつけの仕事といえる。

 「部下のことを『彼はダメだ』と人が言っているのをよく聞きますが、私はそういう見方はしない。まず、部下がやる気を起こすためにはどうしたらいいのかを考えなければ。私も以前は落ちこぼれでしたが、努力により成長した。
人は変われるんです」

――日中の教育現場を結ぶべく、自ら営業に奔走する日々

 昨年5月、当時の福田内閣が出した「留学生30万人計画」。日本のグローバル戦略を展開する一環として、2020年を目処に30万人の留学生受け入れを目指すというこの計画は、それと同時に、少子化による大学入学者数の減少に歯止めをかけるという目的もある。齊藤氏は現在、日中の教育現場を結び付けようと尽力している。

 「上海には海外への自費留学の仲介をすることを認められた会社が13社あります。日本への留学希望者を当社の日本語学校に送り出してもらえるよう、全社を回って交渉するのが私の仕事です」

 だが、それらの仲介会社はすでに日本各地の日本語学校と長年提携しており、なかなか会ってくれないのだという。

 「急に当社の学校に学生を入れてくれと言われても、それは無理です。でも、それを変えていくのが営業の仕事。繰り返し訪問して、ようやく話を聞いてくれるようになればしめたもの。地道な交渉を重ね、今年10月に4社から30人を送り出すことが決まりました。しかし、まだまだこれから。今は端緒を開いたばかりです」

 今年6月に中国の大学を卒業した学生の数は580万人。昨年からの就職浪人100万人を加えた680万人のうち、200万人以上が就職浪人になるという数字が出ている。
来年はさらに大学卒業生の数が増え、今年以上に厳しい就職戦線になることが予想されている。

 「就職難の今、日本に留学すればよりチャンスが広がる。日本と中国に日本語学校と人材紹介会社がある当社なら、そのサポートができる。私もそれに貢献できればと心から思っています」(情報提供:China Concierge)

齊藤憲治(さいとう・けんじ)
精密機械メーカーの営業、ジャズミュージシャン、リゾート会員権の販売、ビリヤードバー経営などを経て、1995年にヒューマンホールディングスに入社。2005年に上海修曼人才有限公司に赴任し、2年後に一時帰国の後、07年5月より現職。趣味はゴルフで、自称シングルの腕前を持つ。

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