この日は、六本木ヒルズアリーナの特設ステージ上で約30分トークを収録する予定だったが、早速、CDの音に合わせて即興でライブを行い、ファンを喜ばせた。アリーナ中央に設営された横7メートル縦4メートルの巨大なキャンバスと対峙、重さ40キロ以上に及ぶ大筆を振るい、書き始めから書き終りまで僅か10分足らずという瞬間技で「蝉」という巨大な文字を一気呵成に書き上げた。
普段のライブとは全く違う、言わば「ギターを筆に持ち替えた」ライブパフォーマンスを目の当たりにして、ファンも固唾を呑んでただただ見守る状態。その静寂に都会の蝉が泣き叫ぶなか、あっという間に詩画の実演が終了、場内は興奮の坩堝と化すことになった。
パフォーマンスを終えてそこに仁王立ちする長渕の姿は、全身墨汁まみれで、さながらボディペインティングを施した、戦いに挑む先住民族のような佇まいだった。イベント終了後、書き上げた詩画は「乾燥」させるためにそのまま当地に置かれたが、それを記念撮影しようとするファンがその場に残り、六本木には夜遅くまで沢山の長渕ファンが残ることとなった。
「詩画」は、長渕が10年以上にわたって行なってきた芸術表現のひとつで、1998年に東京・銀座の「日動画廊」において初の詩画展を開催、2002年の同所での2回目、さらに鹿児島、福岡にもそれぞれ2万人を動員した実績がある。7月に発売したシングル「蝉 semi」のミュージックビデオ(PV)で、初めて「音楽と詩画の融合」が実現、3枚の巨大な詩画を書き上げる模様が収録され、ファンの間でも好評を博していた。
長渕がこの曲で「鳴くのは今しかない」とばかりに自己の「生」を主張し、そしてわずかな時間で潔く散っていく蝉の鳴き声を「チキショウ~」と詠み上げた感性もさすがだが、そこに筆の刹那的な世界を照らし合わせることで、このPVのアイディアが浮上したという。そんな、詩画の実演を生で体感することができるという、ファンにとっては感涙もののイベントとなった。このような試みは、先月に行なわれた鹿児島に続いて2度目。
その「蝉 semi」、さらに「卒業」といったシングルなど全13曲が収録されたアルバム「FRIENDS」は、具体性に富む情景描写が印象的な楽曲が多数収められ、「長渕文学」の持つ豊かな情緒性を、改めて浮き彫りにした作品と言える。
【関連記事・情報】
・長渕剛が新曲PVで詩画初実演、公開実演も計画 (2009/07/15)
・モンキーマジックがルパン三世と対決、最新PVで実現(2009/08/07)
・チャート1位獲得のDJ KOMORI、最新作を発表(2009/08/07)
・@peps!ミュージック夏フェス、レッカの出演決定(2009/08/06)
・東方神起「解散を望んでいない」契約実態明らかに(2009/08/05)