『金瓶梅』は明代の山東省に住んでいた放蕩者の主人公・西門慶が、潘金蓮をはじめとする女性たちに次々と手を出して情欲の限りを尽くすとともに、権力と癒着して悪の限りを尽くすという凄まじい物語である。
今回日本で公開される最新映画は、2008年に香港で公開されたもの。香港では映画が一級から三級に分かれており、『金瓶梅』は最も暴力的あるいはポルノ的要素の強いとされる「三級片」(片は映画の意味)である。香港の映画業界では長年にわたりこの「三級片」が人気の下支えになっていた。また、「三級片」から輩出される名女優も多く、今やカンヌ国際映画祭の常連となっている舒淇(スー・チー)も「三級片」出身である。
かつては香港を代表する映画産業として90年代を中心に栄華を誇ってきた「三級片」も近年は勢いが衰えているという。また、韓国ポルノや日本のAVに比べて古くさくて安っぽいというイメージも持たれているようである。そこで舒淇のデビュー作『玉蒲団之玉女心経』(スー・チーのSEX&禅)も手がけた銭文※(チン・マンカイ)監督は、潘金蓮役の早川瀬里奈をはじめとする日本のAV女優を多数起用して、ヒットが望める『金瓶梅』を製作することで停滞気味の業界にカツを入れようとしたようである(※は金へんに奇)
中国・広州のメディア、金羊網が以前に行ったインタビューでチン監督は、出演した日本のAV女優について「AVならば2日で稼げるギャラ程度しか払えない割に時間を使うということで、実際多くのAV女優は出演したがらなかった。出演した彼女たちは、一般の女優たちと同じように真面目に仕事に臨んでいた。常に監督が何を求めているかを知りたがり、それを忠実にこなしていた。私はもっと彼女たちの好きなようにやってもらいたかったのだが」と語っている。
日本ではチン・マンカイという監督の名前が早速「ネタか?」といじられているようだが、「本番なし・前貼りつき」(チン監督談)という、AVとは異なる状況の中で日本のAV女優がどのような演技を見せているのだろうか。なお、香港では久々のヒット作となり、台湾では同時期に公開された一般映画を大きくしのぐ人気を集めたことから09年3月に続編『金瓶梅2』が公開された。日本での『金瓶梅』の反応が良ければ、2作目の公開もあるかもしれない。(編集担当:柳川俊之)
【関連記事・情報】
・毛沢東が性愛小説『金瓶梅』推奨…「読まねばイカん」(2009/06/12)
・「孫悟空は韓国人!」で、日本人も“目まい”-中国(2009/04/09)
・西遊記~中国四大奇書のひとつ、日本にも絶大な影響(2009/03/11)
・香港の街角、騒然 日本女優がアダルト映画PR(2008/09/16)
・秘宝!?手触りうっとりの性愛小説「金瓶梅」(2008/06/19)