中国社会科学歴史研究所先秦史研究室の宋鎮豪主任はこのほど、中国国内で盗掘が“一大産業”になっていると述べた。中国新聞社が報じた。


 宋主任によると、“盗掘産業”の従業者は少なく見積もっても10万人。以前にも地元住民が盗掘を行っている例は珍しくなかったが、現在は盗掘・流通・販売など、産業チェーンが確立された。

 盗掘団は、埋蔵物探査や地下遺跡内の空気チェックなどでハイテク機器を導入。遺跡侵入では夜間に爆発物を使って入り口を開けることが多いが、20メートル離れればほとんど音が聞こえないようにできる「高級技術者」もいるという。

 ひとつの盗掘案件を捜査すると、範囲が複数の省に及ぶことも珍しくない。国外から受注して盗掘を行う者もいる。
盗掘された文化財は、3日後には香港の古美術市場で販売されているという。

 宋主任によると、警察や司法当局など取締る側の力が不足しているだけでなく、警察が盗掘に関与している場合もある。山西省の西周時代の遺跡では、警察官が盗掘に関与し、「公務執行」として堂々と掘り出していた。

 当局が押収した文化財を一般に売り出す例もある。山東省棗荘市では、当局が押収した大量の青銅器を現地には戻さず、安徽省の博物館に「現金販売」した。青海省の馬家窯から盗掘された陶器は当局がいったん押収したが、後になり個人所有になったり古美術市場で売り出されていたことが分かった。
実質的に、当局が“盗掘産業に参画”した構図だ。

 中国では2009年12月、河南省で、三国志の主要人物として知名度が高い曹操の墓が見つかったとして、大きな話題になった。このため、“盗掘産業”はこれまで以上に活気をみせだしたという。

 写真は河南省の曹操高陵で出土した玉(ぎょく)や瑪瑙(めのう)製の副葬品。(編集担当:如月隼人)

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