北朝鮮入国禁止のヤン・ヨンヒ監督、家族を守るための行動とは!?
北朝鮮から25年ぶりに日本に一時帰国した、長男と家族を描いた映画『かぞくのくに』。ヤン・ヨンヒ監督の実体験に基づいたストーリーで、全国行脚を続けるヤン監督が12月1日沖縄へ飛び、桜坂劇場にてトークショーを開催した。(写真は筆者撮影)<br><br>【関連写真】<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1213&f=national_1213_018.shtml&pt=large" target="_blank">【中国BBS】北のミサイル発射、わが国が喜ぶのは誤りか?</a>(2012/12/13)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1213&f=national_1213_005.shtml&pt=large" target="_blank">【中国BBS】日本のH2Bロケットがアジア最高? 中国人の意見</a>(2012/12/13)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1209&f=entertainment_1209_031.shtml&pt=large" target="_blank">北朝鮮代表を選んだ在日コリアン3世ストライカーのドキュメント</a>(2011/12/09)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1207&f=politics_1207_001.shtml&pt=large" target="_blank">北朝鮮、長距離弾道ミサイルの発射台への設置を完了</a>(2012/12/07)<br>・<a href="http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1206&f=entertainment_1206_028.shtml&pt=large" target="_blank">【韓流】キム・スヒョンが行く…『太陽を抱いた月』日本プロモーション参加</a>(2012/12/06)<br>"(サーチナ) 画像(1枚)
 “近いのに遠い”北朝鮮から、25年ぶりに日本に一時帰国した長男とその家族を描いた、話題の映画『かぞくのくに』。在日コリアン2世であるヤン・ヨンヒ監督の実体験に基づいた衝撃のストーリーで、世界各国の映画祭で高い評価を受け、日本でも大ヒット中。
映画を見た観客と語るため、また自身の家族を守るためと全国行脚を続けるヤン監督が、12月1日沖縄へ飛び、桜坂劇場にてトークショーを開催した。(写真は筆者撮影)

 「この『かぞくのくに』は、私の実体験が元になっています」と切り出したヤン監督は、映画では兄1人だが「実際は北朝鮮に渡った兄が3人いて、一番下の兄が日本で3か月治療する許可をもらったのです。こういったケースはまれで特殊。でも一体何だったんだろうという感じで、3か月経たない内に帰りました」と自身の兄の状況を語った。「基本的に実話で、病気を持ちながらも実際の兄は今も生きております。映画にしていない長男が、何十年も躁鬱病を患って3年前に他界しました」と観客に語った。


 過去に『ディア・ピョンヤン』(2005年)、『愛しきソナ』(2009年)と、家族を映し出したドキュメンタリー作品を発表したヤン監督の、初の劇映画となった本作。「北朝鮮は100か国以上と国交があり、特にヨーロッパの映画祭には北朝鮮の映画人が売り込みに来ています。私の作品は大きな映画祭で賞をいただき、現地の新聞に報道されましたので、北朝鮮関係者が見に来ているかもしれない。なのであいさつの場では、“この映画は、私が勝手に作っていますので、家族を罰するようなことは絶対しないでください”と、お願いするようにしています。聞いているのかどうかはわかりませんけどね」と笑ったヤン監督は、北朝鮮の組織から電話を受け「謝罪文を書くように」言われた過去を持つ。「何について、誰に謝罪するかわからなかった」ヤン監督は、「名前や顔を映画で出されたうちの家族が、止めろと言うならわかります」と強調し、「政府や団体がどうこう言ってくるのは変だと思いました。
謝罪文はもちろん書かず、その代わりに2本目の『愛しきソナ』を作った」と裏話を面白く語ったが、その作品によって北朝鮮への入国が禁止になったことも明かした。

 「いつか近い内に兄たちと一緒に、私の映画が楽しめる日が来るだろうと信じています。家族に会えないのは寂しいですが、私の愛情や尊敬の気持ちは、作品を通して表現しようと決めた。そして家族を守るため、オフィシャルな問題児として有名になりたい! 私の名が知られて世界中の方に作品を見ていただくことによって、“あの家族に触れるのは止めよう”と思われるくらいではないと、家族を守れない!」と痛感したというヤン監督からは、「どんどん取材を受け、こういったトークショーでも率直に語っています。映画祭もなるべく参加して、現地で語っています」と、自ら動くことが家族のためになるという切々とした思いが語られた。

 次作は家族の話ではない物を作ろうと構想を練っている、というヤン監督。
「自分が詳しいテーマを描くとなると日本や在日、韓国だったり朝鮮だったりになりますね。いきなりロシア人やブラジルの話は書けませんから(笑)。ネタを求めて遠くに行くより、自分の身近にあることを撮りたい。それはドキュメンタリーの時から変わりません」と強い意思を述べ、「今回『かぞくのくに』にはヤン・イクチュンが加わってくれましたので、もっと韓国の役者さんやスタッフと一緒にやるとか、日本の俳優さんと韓国で撮影するとかできればいいな、と思っています。でも私の作品は出資を集めにくいので、今後を考えずに作るかもしれません」と本音も述べた。

 企画段階では出資や協力先が見つからず、配給会社のみのバックアップで製作が叶った『かぞくのくに』。
主演の安藤サクラ、井浦新ほかキャストはヤン監督が希望した第一候補者で、全員から出演快諾の返事が届いたとのこと。また2013年2月に授賞式が行われる、「第85回米国アカデミー賞」の外国語映画賞の日本代表にも選ばれた。わずか2週間だったという撮影期間は、酷暑の下で頭に氷を載せながら出演者・スタッフ一丸となり、がんばり続けたという。

 製作に関わった人たちは、「ほんとにみんな家族でした」という言葉と、観客席にいた在日コリアン3世の若い女性に「朝鮮籍のパスポートは不便で大変だけど、行ける外国はたくさんある。国籍について悩むより、いろんな国をどんどん訪ねて友達を作って学び、その後で国籍を変えるかなど考えればいい。朝鮮籍でいいという結果になったら、そのままでもいいと思います」と親身にメッセージを送った、ヤン監督の姿が印象に残った。
(取材・文責:饒波貴子)