この日は中田監督、前田&成宮コンビが舞台あいさつでステージに立つとあって、会場の沖縄コンベンションセンター・シアター1は、開場前から長蛇の列。映画ファンの期待と主演コンビの人気の高さがうかがえた。大歓声と大拍手に迎えられた3人は、来場した観客に感謝。前田「予告編を見たみなさんの“ヤーッ!”という反応を裏で聞いて、すごくうれしかったです。怖がって帰ってください」、成宮「去年作ったこの映画、やっとみなさんに見てもらえてうれしい。今日は絶叫してスッキリしてください」、中田監督「Laugh&Peace(笑いと平和)がコンセプトのこの映画祭で、真逆の“Cry&Fear”な映画かもしれませんが、エンターテイメントを感じるホラー映画のつもりで作りましたので、楽しんでいただければと思います」と、メッセージを送った。
続いて沖縄国際映画祭に出席した感想を、前田「沖縄だけあって、みなさんすごく元気。作品を持っての映画祭参加は初めてなので、いい思い出になります。『クロユリ団地』を初めて見てもらう場所、というのもうれしい」、成宮「笑っていれば平和が訪れる、という沖縄っぽいテーマの映画祭ですよね」、中田監督「オープンシアターが素敵で、この会場も立派。バイキングでソーキそばを食べて、少し沖縄気分になっています」と、それぞれ語った。
また本格的ホラー作品への出演は初となる前田が、「現場も怖いのかなと思っていましたが、“ホラーの現場は、笑いが絶えない方がいい”と監督に教えられて、楽になりました。
「二宮明日香」という孤独な女の子を演じる前田は、特殊メイクを施し体当たりの演技で全力で取り組んだというが、陽気な中田監督のお陰もあり、役を引きずることはなかったという。監督は「前田さんは自身の繊細さや傷つきやすさを出し、リアルな感覚で演じていることを知って感銘を覚えました」と絶賛。成宮についても「予想通りのカッコ良さ。そして役を掘り下げて深みを持たせ、真剣な役作りに感激しました」と、褒めちぎっていた。監督が本作に込めたのは、「隣に住んでいる人がどんな人だかわからないとか高齢化社会とか、日本の現代社会とマッチするような雰囲気のリアルなホラーにしたい、今まで積み重ねた技法を全部ブチ込みたい、という思い」だそうだ。。
メディア用の写真撮影の時は突然場内が暗くなり、後方の映画パネルの中から“少年・ミノル”役の田中奏生が飛び出てくるサプライズ発生! 知らされていなかった前田と成宮が絶叫し、演出は大成功した。特に前田は「ミノルくん、来てたの~!? ビックリしました」と飛びあがるほど大騒ぎしながら、「怖いの苦手なんです。みなさんも映画を見て、同じくらいビックリしてください」と上手にアピール。
退場前のあいさつでは、前田「ホラー映画なので驚いたり怖いと思ってもらえるのがうれしいですが、それぞれのキャラクターの心情も深く描かれている所がポイントです。明日香ちゃんとミノルくんのぶつかり合う孤独感からさびしさを感じ取って、感動していただけたらうれしく思います」、成宮「僕も孤独を抱えている役で、誰もが持っている満たしきれない思いや孤独な魂がお互いを引きつけ、助け合っていきます。人は1人で生きていけない、と演じながら感じていました。でも基本的にホラー映画。団地という日本ならではの舞台で起こる、ザ・ジャパニーズホラーです。沖縄で公開できて本当に良かった!」、監督「若々しいキャスト3人と、エンターテイメントであるホラーの仕事ができ光栄に思います。20年位ホラー映画を作ってきましたが、集大成にするべく一生懸命やりました。怖がって楽しんでいただければと思います」と思いを伝えた。監督からは、5月の公開に向けて「リングの貞子と本作のミノルを対談させたい」というプランも明かされた。
日本初上映時の地・沖縄で、出演者の魅力と恐怖感あふれる映像で盛り上がった、中田ホラー『クロユリ団地』。