ユニバーサルエンターテインメント(本社・東京都江東区)が運営する岡田美術館(神奈川県足柄下郡箱根町)が16日、中国の国立美術館である劉海粟美術館と姉妹提携した。提携調印式には両美術館関係者に加え上海市人民政府文化管理処の楊春曼処長も出席した。
岡田美術館は7月3日から9月30日まで姉妹提携特別記念展「-中国人の魂-玉器の名品/併設特集 かわいい生き物たち」を実施する。(写真左から劉海粟美術館の沈虎副館長、張堅館長、岡田美術館の小林忠館長、岡田和生名誉館長。サーチナ撮影)

 岡田美術館は2013年10月の開館。収蔵品はユニバーサルエンターテインメントの創業者で取締役会長である岡田和生名誉館長が収集した日本、韓国、中国の歴代陶磁器、日本絵画、漆器、仏教美術などだ。所在地は日本屈指のリゾート地である箱根・小涌谷。箱根地域には美術館などが多くあるが、その中でも屈指の規模だ。


 劉海粟氏(1896-1994)は中国における新美術運動の創始者であり、画家や美術教育家として、中国近現代美術史に巨大な足跡を残した。劉氏は晩年になり、生涯を通じて収集した宋、元、明、新時代の美術品計910点を国家に寄贈。この910点が、劉海粟美術館の収蔵品の中核になった。同美術館は上海市において上海美術館と肩を並べる存在であり、省が運営する「省美術館」と同格に扱われている。劉海粟美術館は1995年3月の設立。中国で美術館に個人名がつけられたのは初めてだった。


 調印式に出席した岡田美術館の小林忠館長は、岡田美術館について「前途への大きな夢を持つ、若い発展途上の美術館」と紹介。収集したアジアの美術品を公開しながら後世に伝えていく、同美術館の理念を説明した。劉海粟美術館との提携については、「今後、親しく交流していきたい。日中の文化交流が実質的に盛んになるように、実り多いものになるように願っている」と述べた。

 劉海粟美術館の張堅館長は提携について、「日中それぞれの関係者の努力と誠意で、活動が順調に進んだ」と感謝の意を表明。「個人が収集した美術品を、引き続き今後にいかしていきたい。
美の喜びを伝え、分かち合いたい」という考えが出発点となったという双方の美術館の特徴を指摘し、岡田美術館と劉海粟美術館の「軌をひとつにする」特徴と述べた。

 上海市文化管理処の楊春曼処長は、両美術館の提携について「日中文化交流のよろこばしいできごとであり、すばらしい祝い事」と祝福。「良縁を結ぶことについて、私も多少なりと貢献できたことを光栄に思う」と述べた。

 岡田和生名誉会長は美術品について「作者が命がけで作り上げたもの。人の気持ち、人の魂を込めて作られたものだからこそ、人を感動させる」と述べ、「(日中韓の)漢字文明圏が手を携えることに、私は感動するのです」などと述べた。今回の提携成立については改めて、「上海の美術関係者、政府関係者、劉海粟美術館の張堅館長のおかげです」と中国側の対応に感謝の意を表明した。


 劉海粟氏は若い時代に来日経験があり、日本での見聞や日本人美術関係者との交流の経験を、その後の活動に役立てたとされる。岡田美術館側は、劉海粟氏と日本の「縁」にも着目。日中における知名度や認識度のギャップの原因を「日中文化関係の断絶期、交流の空白期」と考え、日本における劉海粟氏の紹介も進める意向だ。

 劉海粟美術館は収蔵品の増加に伴う移転のために閉館中だ。2015年には上海凱橋緑地に新館がオープンする。敷地面積はこれまでの約5000平方メートルから1万2540平方メートルと、規模が大幅に拡大される。
劉海粟美術館側は、岡田美術館との提携で日本における同美術館への関心も増すと考えられることから、海外に向けた劉海粟氏の作品紹介に、これまで以上に力を入れたいという。

 両美術館ともに提携による「補完効果」に期待しており、今後は収蔵品の交換展示を行う予定だ。手始めとして、岡田美術館は7月3日から9月30日まで、姉妹提携特別記念展として「玉(ぎょく)」の名品を公開する「-中国人の魂-玉器の名品/併設特集 かわいい生き物たち」を実施する。

 両美術館はさらに、研究者や芸術関係者の交流も行いたいとして、今後は具体的な協議を進めていくという。(編集担当:如月隼人)


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