中国では、日本における神風特攻隊の世界遺産登録への動きを受け、「新たな軍国主義のため」とする批判が高まった。中国のインターネット上では特攻隊を「無恥な人間爆弾」と揶揄(やゆ)する書き込みも見られる。
記事は、神風特攻隊の世界遺産登録への動きは厳しく批判したが、特攻隊員については「戦争の犠牲者」との立場を明確にした。
日本軍が神風特攻隊を採用した原因としては、当時の日本軍では、特攻隊成立以前からパイロットは消耗品となっており、さらに優秀なパイロットの不足が深刻になったと指摘。米空母に魚雷や爆弾を命中させることがほとんど期待できなくなり、体当たり方式で、なんとか戦果を上げようとの考えが出たと紹介した。
記事は、パイロットはそもそも優秀な若者だったと指摘。特攻隊員の多くの遺書にカントやゲーテ、ルソー、場合によってはマルクスを引用するなど「多くは文化的素養が高い学生だった」と紹介した。
残された遺書を見ても、実際には「英雄的な死」を望んだのではなく、事実上の強要で特攻隊員にならざるをえなかった若者が多かったと主張。
また、日本人作家の保坂正康氏が、元海軍参謀から聞いた話として「基地の者は無線で、死に臨む特攻隊員の声を聞いた。『大日本帝国万歳』、『天皇陛下万歳』と叫ぶ隊員は、きわめて少なかった。多くが『おかあさん』と、あるいは恋人の名を叫んだ」と紹介した。
記事はさらに、日本でも「特攻隊は日本の恥」とする考え方があると指摘。
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◆解説◆
中国当局は、日本との戦争について「加害者と被害者」を分離する方針を貫いている。自国側については一部の「裏切り者」を除けば被害者だ。日本側では一部の軍人と政治家が加害者であり、一般人は被害者だ。軍人であっても、上官の命令に従っただけで特段の残虐行為などがなければ「被害者」とみなしている。
上記記事は特攻隊員について従来の方針にもとづき、「戦争被害者」とする見方に立っている。神風特攻隊の世界遺産登録申請については、「戦争責任を曖昧に、または回避しようとする」ことを批判している。
上記記事は銭江晩報の20日付記事を人民網が転載したものだ。銭江晩報は、中国共産党浙江省委員会の機関紙である浙江日報の姉妹紙で、人民日報は中国共産党中央の機関紙だ。したがって、上記記事は中国共産党の見解を反映したものと考えてよい。(編集担当:如月隼人)(イメージ写真提供:123RF。ギニアで1970年代に発行旧日本軍機をデザインした郵便切手)
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