中国メディア・浙江老年報が1日に掲載した記事では、日本の旅行で触れた小さな幸福感について紹介している。その中に、京都にある小さい釣具店「永塚釣具店」で買い物をした際のエピソードがある。中国人観光客である筆者一行は、この釣具店で「プライスレス」なひと時を過ごしたようだ。
創業が明治45年という老舗の木戸を開けて入った店内は、わずか5-6平方メートル。3人入ればもういっぱい、というスペースに、釣り具がいっぱいにディスプレイされている。店に入ってしばらくすると、ようやく白髪頭の年配の女性が顔を出す。日本語のできる同行者の話によると、「子どもたちはみんな東京に出てしまい、1人で店を守っている」とのこと。
お目当てにしていたアイテムが見つからなかった同行者が「店で一番高いのをください」と言うと、女性店主は「初心者にはこれがいい」としてそれほど高価でない竿を持ってきた。議論の末同行者がその竿で納得すると、店主は「特別な結び方があるから、私がやりましょう」と糸を釣り竿に結び付け始めた。しかしその動作はゆっくりで、手は甚く震えている。「ごめんなさいね、遅くて」と謝りながらの作業だった。
記事は、結局その日の午後を、まるまるこの釣具店で過ごすことになったと説明するとともに、帰るまで別の客は1人もやって来なかったとしている。筆者たちは、店主とのやりとりを存分に楽しんだようである。景色を見て、おいしいものを食べて、免税店で買い物をするだけが海外旅行ではない。現地の人との何気ない心の触れ合いも貴重な体験なのだ。異国の地で出会った人と心を通わせることで、金銭では決して得ることのできない「ささやかな幸福感」を味わうことができる。「爆買い」の熱狂から冷めた中国人観光客たちは今、そんなことに気づきつつあるのかもしれない。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)
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