2年前、弱冠17歳の平野美宇選手が中国で開催されたアジア選手権女子シングルスで、中国の主力選手である丁寧選手、朱雨玲選手、陳夢選手を次々に破り、史上最年少で優勝、中国全土に衝撃を与えた。この時から、中国では日本の「狼」の存在を意識するようになったようだ。その後も張本智和(15)選手や、平野選手と同い年の伊藤美誠(18)選手を始め、先日のポルトガルオープンで元世界ランク1位の中国・劉詩ブン選手を破ったばかりの早田ひな選手(18)など、10代の日本人選手の快進撃が続いている。
スポーツ競技で「敵国」に塩を送るような行為は、通常ではあり得ない。サッカーなどは敵に戦術を知られないため、練習を非公開にする場合もあるほどだ。ところが、中国の「養狼計画」は中国人コーチの海外派遣や、外国人選手の受け入れを積極的に行い、ライバルたちのレベル向上を全力でサポートする。平野選手のコーチも中国人の張成氏だ。張本選手は両親が中国出身で、2人とも元卓球選手というサラブレッド。福原愛選手が幼い頃から中国で練習を積んできたことは周知の事実だ。石川佳純選手も中国人コーチに師事していた時期がある。
早田選手は、憧れの選手に中国の丁寧選手を挙げる。2016年のカタールオープンで左利きの練習相手を探していた世界チャンピオンの丁選手に指名され、無事に相手を務めた。当時はまだ15歳。この時、丁選手に「私を超えて!」と激励されたことが大きな糧となったようだ。前出の張氏はこう語る。「若い選手の最大の武器は、未知数であること。調子のよい時はもはや敵なしだ」。張氏によると、他国では主力選手は20代が一般的。東京五輪が来年に迫るなか、日本の若い「狼」たちが世界最強の中国を脅かす一大勢力となっていることは間違いなさそうだ。(イメージ写真提供:123RF)
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