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――基本方針について。
森本 これまでの路線を継承し、新型コロナウイルスに起因する需要の大幅減と海外市況の大幅上昇、業界を取り巻く環境がより厳しくなっている中、砂糖業界のサステーナブルで健全な発展のために会員各社や関連業界団体とともに貢献していきたいと思う。
具体的には、政府は現行ルールの再検証、生産者には生産コストのさらなる削減や適正生産量の設定、流通にはバリューチェーン全体でのコスト削減や合理化を求めつつ、われわれ製造者も絶え間ない合理化努力を続けなくてはならない。残された時間は多くはないという危機感を持っている。
精製糖業は地域経済、国産農業振興のバリューチェーンの重要な担い手であること。鹿児島県、沖縄県の離島国境防衛を担う産業としての役割や、諸外国との経済連携協定を通じた多国間および2国間の経済外交への関わり。さらに、さとうきび、ビート栽培を通じた地球環境にやさしい商品で、脳エネルギーや運動エネルギーを生み出す伝統的な産業として重要と考えている。
その中で糖価調整法の維持と健全な経営の点から申し上げると、同じ糖調法のプレイヤーである砂糖、異性化糖、加糖調製品の負担は公平性に欠けるものであり、是正すべきと考えている。また、制度外の高甘味度甘味料についても砂糖需要を侵食するケースもあり、対応が求められると考える。
また、残念ながら砂糖消費が相対的に縮小し総需要が大きく減少している現状において糖価調整法維持の根幹は調整収支のバランスであり、現行ルールにおいてはビート生産のコスト削減を目指して、総需要の実態に即した適正生産量への抑制をも検討せざるを得ないとも思っている。
総砂糖需要が減少する中で、輸入糖とのアンバランスを背景に累積差損は看過できない状況になっている。このままでは制度維持に危機感を持つ一方で、これ以上の砂糖自給率を高める国民のコンセンサスが定かでない中、さらなる負のスパイラルにつながる調整率の引き上げについては断固反対である。
今の状況を打開して制度を維持するためには、逆に調整金についてはほかの甘味料との公平性や国の負担を持って一時的に調整率を下げていただくことも検討すべきものと思われる。
――砂糖消費拡大の取り組みについて。
森本 異性化糖、加糖調製品を加えた甘味総需要の中で公平性がしっかりと担保され、息の長い砂糖需要の喚起は業界団体として大きな課題と認識している。ここ数年続けてきたシュガーチャージ運動を今後どのように発展させるかは、協議会や関係団体と議論して推進していきたい。
――砂糖消費の回復について。
森本 昨年4月、5月あたりから緊急事態宣言に伴う移動制限などがあり、家庭内の巣ごもり需要の拡大で一部商品の上昇はあった。しかし、レストラン、ホテル、土産のお菓子需要で消費される業務用砂糖の方が圧倒的に大きいため全体ではマイナス傾向が強い。その中で毎月の出荷状況などを見ていると、やはり緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出されている期間の出荷は大きく落ちる。一方、「Go Toキャンペーン」があるときは戻る。タイムラグはあるが如実に表れている。
それを見るとワクチン接種が進んで10月、11月には希望する人の接種は終えると言われている。そこからは繰り延べ需要というのが大きく出ると思っている。
一方、長期的なトレンドで言うと過去を見ても年間1~2%の漸減傾向は歯止めをかけなければならないが、先ほど申し上げた施策とともに対応していかないと漸減傾向は止まらないだろう。