乾物・乾麺市場発展へ各メーカーの事例共有 コロナ後の変化に業界結束 AK研が総会
佐々木淳一社長(日本アクセス)
アクセス乾物乾麺市場開発研究会(AK研)の第2回総会が7日に開催された。「日本伝統の美味しさを、まもる、つなぐ、つくる」を理念に掲げ、日本アクセスが19年に設立した同会。
同社の卸機能と全国のメーカーや生産者とのつながりを活用することで、乾物・乾麺市場の発展を目指している。

当初、4月に予定されていた総会だが、緊急事態宣言のもと、いったん延期に。「そうめんの日」でもあるこの日、参加を都内の会員企業に限定しての開催となった。

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佐々木淳一社長(日本アクセス) あいさつした日本アクセスの佐々木淳一社長は「今年はウイズコロナ、ポストコロナが共存する年。変化を的確に読んでスピーディに対応したい。厳しい環境にある乾物・乾麺市場の活性化へAK研が設立され、はや3年目。新規加盟の希望も多数いただいており、当会を業界のプラットフォームとしていきたい。乾物は製造過程で味や香り、栄養価が増して付加価値が高まり、SDGsの観点にも合致する食材としてブランド商品化が期待できる」と述べ、会員企業と同社とでWin―Winの関係を築いていく考えを表明した。

また、にんべんの髙津伊兵衛社長は「巣ごもり消費で家庭での調理機会が増え、中食需要も堅調に推移。食べる場所、食べ方は変わったが、食べるものはなくならない。生活者や企業は持続可能な世界を目指すことにも気を遣うようになり、保存性が高い乾物・乾麺はそうした人にやさしい商品だ。ただ、そのままでは今の生活者に伝えることが難しいのも事実で、簡便化、ミールキット化、電子レンジ対応、オリジナルレシピ開発など、新たな提案が必須になっている」との認識を示した。


活動報告を行った日本アクセス乾物乾麺MD部長の笠松裕也氏によれば、昨年度は21社が新たに加わり、乾物・乾麺メーカーとNBメーカー合わせて加盟社は156社に拡大。今年度も20社が加盟を予定する。会員企業の乾物・乾麺販売実績も、20年度は合計で前年比112.7%。巣ごもり需要拡大を背景に、大きな伸長を見せたという。

さらに、同社ならではの産地とのつながりを生かして丁寧に生産された宮崎産切干大根や、ゆでのびしにくい調理専用「揖保乃糸」を使ったにゅうめんの提案によるスーパーでの調理麺採用事例など、6部会の活動成果が紹介された。

味の素からは、東京支社長の寺本博之氏が取組事例を報告。同社では「Yes!We Canbutu」を合言葉とした乾物メニュー提案(19年)を皮切りに、自社の調味料商品を生かした乾物活性化に力を入れてきた。昨年にはイトーヨーカ堂やユニバースなどの店舗で、乾物と同社製品によるコラボメニュー提案を実施。ユニバースでは、集中的にレシピ訴求を行った高野豆腐の出荷数が前年比291%と躍進。乾物が高利益商材であることや、高野豆腐の新しい食べ方、たんぱく質+野菜という健康的食卓の提案に、バイヤーから大きな評価が寄せられたという。

「当社の『Cook Do』のような商品は野菜価格に売れ行きが左右されるが、乾物は年間を通して価格が安定。保存性が高い乾物はフードロス削減の観点からも優れ、生活者にやさしい食材だ。
NBメーカーとしてのメニュー提案力で、新しい切り口の訴求ができた」と、寺本氏は手応えを語る。

石丸製麺の石丸芳樹社長は「新市場開拓のためには新しいアイデアが必要だ」として、異業種がそれぞれの強みを持ち寄り新たな発想を生み出す「融業」の考え方を紹介。価格の乱高下が激しい農水産物を、粉末にして練り込んだ同社の乾麺の事例を通して、新たなビジネス展開へのヒントを提示した。

愛知県の海藻メーカー・ヤマコンからは、山下久美子副社長が三重県・伊勢志摩地方の海産物を紹介。答志島の塩ワカメづくりなど地域の風土に根差した昔ながらの製法とともに、海からの豊かな恵みを通じた食文化提案に日本アクセスと取り組んでいることを報告した。

AK研の副会長を務める兵庫県手延素麺協同組合の井上猛理事長は「コロナ禍以降は試食販売も容易にできなくなったが、食は人間生活になくてはならないもの。あらゆる行動が制限される中、食事は在宅生活の唯一の楽しみと言っても過言ではない。乾物・乾麺はもとより、食品の価値が再認識されている。食に携わる私たち乾物・乾麺メーカーと日本アクセスが一体となり、豊かな生活に貢献できるよう頑張っていきたい」とあいさつした。

締めくくりに、会長を務める日本アクセスの西村武副社長があいさつ。「AK研に参加した以上、必ずメリットがあるような活動を皆さんとともに行っていきたい。乾物・乾麺の伝統をつなぐという大きな目的だけでなく、やはり商売なので少しでも皆さんの売上げに貢献できないと意味がない。
6つある研究会に加わっていただき、積極的にいろいろなご提案をいただきたい」と呼びかけた。
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