サントリースピリッツは、昨年3月に発売した国産ジン「翠(SUI)」の販売好調を受けて、今年の販売計画を当初の20万箱(700㎖×12本/箱)から、25万箱に上方修正した。昨年の販売実績は9万5千箱であり、約2.6倍の成長を見込む形だ。


コロナ禍の影響で酒類市場は業務用を中心に打撃を受け、今年1~5月も前年同期比95%と落ち込むが、ジンは122%と高い伸びを見せている。

国内ジン市場を牽引しているのは国産品だ。1~5月の輸入品は83%だったが、国産は197%と大幅に伸長。シェアも国産は昨年の34%から55%と輸入を逆転した。

中でも、1936年からジンを製造しているサントリーは強い存在感を見せつけ、小売価格2千円未満のスタンダート帯では「翠」がシェア70%を誇り、2千円以上のプレミアム帯でも同社が17年に発売した「ROKU」が54%。特に「翠」が市場を押し上げたという。

好調の背景には新生活様式のニーズがある。酒巻真琴RTD・LS事業部課長は「家で酒を楽しむ時間が増えたことで、ちょっと良いお酒を自分なりに楽しみたいという意識が高まり、結果として瓶入りの酒を手に取る消費者が増えた」と分析する。「そのような中で、『翠』が話題となり、ジンカテゴリーが伸長した」と語る。

同社国産ジン中期販売計画では、24年に売上高100億円を目指しており、「大きな新市場創造に挑戦する」(酒巻氏)と意気込む。

新需要創造に向けては「翠ジンソーダ」といったスタイル、「気軽に楽しめる」ことを訴求したCM、店頭ポスターの掲示などで接点づくりの戦略を展開する。6月時点で飲食店約3万店(昨年比6千店増)、小売店約4万店(2万5千店増)が取り扱っている。
購入者の約8割が新規のジンユーザーで、性・年代も幅広い。

「翠」は、居酒屋で食事と合わせて楽しむ、ハイボール・レモンサワーに続く第3のソーダ割という地位が期待されており、「ジンは、自分には馴染みがないなどのイメージが強いが、日常的に楽しむ酒に変えたい」(同)として、日常の食事に合うよう柚子・緑茶・生姜といった3種の和素材を使用。2回蒸留することで日本人の味覚に合わせたという。

酒巻氏は、「翠ジンソーダ」は「居酒屋の定番料理である唐揚げ、ギョウザと合う」と評価。「それぞれの食事に合うものがあると思うので、探してほしい」と話している。
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