アサヒビールでは成長戦略の一環として、100%子会社である同社の洋酒事業を再強化。積極的な設備投資で、樽貯蔵庫の新設などを進める。
6月5日の戦略発表会でアサヒビールの松山一雄社長は「ニッカウヰスキーはアサヒビールの洋酒・スピリッツ事業を一手に担う重要な戦略子会社。全世界でウイスキーの消費が拡大しており、特にプレミアムカテゴリーが伸長。またジャパニーズウイスキーは今後も拡大が見込まれ、世界の愛好家がニッカウヰスキーに感じる価値が高まっている」と、90周年を機に飛躍を目指す考えを述べた。
そのうえで松山氏は、プレミアムウイスキーカテゴリーでグローバルトップ10を目指す長期目標を表明。現状は40~50位だといい、世界10位以内に入るには現在の4倍以上の売上規模が必要。あくまでも遠大な目標であり、達成期限は定めない「ニッカウヰスキーの志」との位置づけだ。
国産ウイスキーは近年、国内外での需要急増から需給ひっ迫が続く。ただウイスキー不遇の時代に積極的な設備投資が行えなかったこともあり、不足する供給力の増強が各社に共通する喫緊の課題だ。
ニッカウヰスキーでは19~21年にかけて余市・宮城峡の両蒸溜所で樽貯蔵庫の新設や蒸留設備の増設を行い、原酒製造能力は2割アップ。今年は60億円を投じ、栃木工場の樽貯蔵庫新設、余市・宮城峡の新貯蔵庫設計と樽購入を実施。
「当社の強みは創業者・竹鶴政孝から受け継ぐパイオニアスピリット、蒸留酒のテロワール、そして卓越した技術。品質にこだわったウイスキーをつないできたからこそ、今のニッカウヰスキーがある」(ニッカウヰスキー・爲定一智社長)。
多様な原酒を使用した希少な一本その歴史を体現する90周年記念商品「ザ・ニッカ ナイン ディケイズ」(税別30万円/2千本限定)は、1940~2000年代にかけて9つの年代にわたる多彩な原酒をブレンドした。余市や宮城峡に現存する最古のモルト原酒のほか、スコットランドのベン・ネヴィス蒸留所も含む150種類以上の原酒を使用。松山社長も「(グラスに)1cmくらいしか飲ませてもらえなかった」とぼやく希少な品だ。
国内スペシャルアンバサダーとして、歌手・俳優の福山雅治さんを起用する。また体験の場も展開。7~12月にかけて都内にオープンするコンセプトバーでオリジナルカクテルなどを提供するほか、世界をリードするロンドンやNYなど海外都市のバーとのコラボレーション企画も実施予定だ。

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