瀬戸芸2025 犬島ホッピーバーで美食家のソウダルア氏と折紙作家の勝川東氏が共演 和紙の創作物に瀬戸内満喫できる料理盛りつけ
石渡美奈社長
 ホッピービバレッジは8月9日、「犬島ホッピーバー」(岡山県岡山市)に出張料理人・現代美食家のソウダルア氏と折紙作家の勝川東氏、関係者らを招き、食とアートを組み合わせたイベントを開催した。

 地域貢献や「ホッピー」の地域食材との新たな可能性を探るのが狙いとみられる。


 取材に応じた石渡美奈社長は「『犬島ホッピーバー』は実は観光客の方にもお楽しみいただきたいが、それ以上に犬島のお父さん・お母さんに非日常の楽しみを提供することが本来の目的。今回、初開催したクローズドのイベントが好評だったため、今後は犬島の方たちもお招きしたい」と意欲を示す。

 犬島ホッピーバーは、石渡社長やホッピービバレッジの社員が現地に出向き不定期で営業。「瀬戸内国際芸術祭(以下、瀬戸芸)2025」の憩いの場にもなっている。

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石渡美奈社長 ホッピービバレッジは、2019年より瀬戸芸に協賛。今回も地球環境を守るための取り組み「ホッピーアースプロジェクト」の一環として瀬戸芸2025のパートナー企業を務めている。

 犬島ホッピーバーでは、環境にやさしいリターナブルびんから注がれる「ホッピー」をはじめ、や犬島で栽培されたハーブや赤紫蘇等の食材を活かして開発されたホッピーカクテルを販売している。

 この日のイベントは、ソウダ氏と勝川氏が共演。建築家の妹島和世氏がデザインした三日月形のテーブルの上に和紙を敷き、その和紙を使って勝川氏が即興で創作。勝川氏の創作物にソウダ氏が調理済みの食材を盛り付け創作料理へと仕立てていった。

両氏はこれまでに他のイベントで3回共演。今回の共演について勝川氏は「いつもは一般的な形のテーブルの上で行っているが、今回は月形のためかなり難しかった。
(創作物について)何回やっても山脈のようになってしまい、今回、それを断ち切りたくて(和紙の端を)『ホッピー』のびんを包めて横の流れを生み出そうと試みた」と振り返る。

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左から出張料理人・現代美食家のソウダルア氏と折紙作家の勝川東氏
左から出張料理人・現代美食家のソウダルア氏と折紙作家の勝川東氏 ソウダ氏とは、折紙作家としての新境地開拓を模索する中で巡り合ったという。

 「折紙は何かを完成させないと意味がない行為と思われがちだが、それは違う。シワがよっているというのも悪くはない。こういうことを模索していたところルアさんに出会い“これだったらいける”と思った」と語る。

 創作料理は、ソウダ氏が和紙の創作物に絵を描くように、トマトとパプリカのソースやフルーツ(パイナップル・マンゴー・ゴールデンキウイ)のソースをふりかけ、瀬戸内の食材を並べたものとなる。

 並べられた食材は、炙ったサワラ、ベイカ(子持ちのイカ)、鯛の刺身、ししとう、みょうが、ミニトマト、枝豆など。デザートとして、半冷凍にしたいちじくやシャインマスカット、シナモンをきかけたゼリーも用意した。

 炙ったサワラには豊島(てしま)産の塩をまぶし、鯛は昆布と塩で軽くしめ、ししとうやみょうがには、いりこ出汁で味付けするなど、シンプルな調理に留め素材そのもの味わいを前面に押し出した。

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創作料理(炙ったサワラなど)
創作料理(炙ったサワラなど) 「とにかく夏の瀬戸内をそのまま満喫していただきたい。春や秋だと、ゆっくり食べるイメージになるが、今回は夏で、場所が『犬島ホッピーバー』ということから、芸術祭のお祭りと『ホッピー』の明るいイメージで瀬戸内の食材を楽しく堪能できることをイメージしたに考えた」とソウダ氏は説明する。

 味付けは、「ホッピー」と合わせやすいにように塩味や酸味を強く意識したという。


 一方、ドリンクは、創作料理と合わせるように、「ホッピー」に香川の和三盆と塩、藍のシロップを落とした「海のホッピー」を特別に用意。
ジョッキの青とホッピーの黄金色の二層のコントラストが映えた。さらに、隣家で栽培される赤紫蘇などを使った「島赤紫蘇」や「モヒートホピート」などのオリジナルカクテルでも参加者をもてなした。

 石渡社長とソウダ氏、勝川氏の三者を結びつけたのは、ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)の塩田基コミュニケーション本部サステナビリティ推進室エキスパート。

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「犬島ホッピーバー」
「犬島ホッピーバー」 ベネッセと公益財団法人福武財団は、長年にわたり、瀬戸芸が開催される直島を始めとする地域の再生に30年以上取り組み続けているほか、学びや介護の事業を通じて変化の激しい社会を生き抜く個人や企業の支援も行っている。

 塩田氏がソウダ氏と出会ったのは2016年の瀬戸芸。

 「女木島(めぎじま)の食とアートのイベントでルアさんの料理に感動してしまった。その時は、女木島キュイジーヌといって害獣とされるイノシシのジビエ料理をいただき、以降、プライベートで何回か通うようになった」と塩田氏は述べる。

 3年前にソウダ氏と勝川氏が出会い、塩田氏がコラボイベントをプロデュース。

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すりガラスなど古民家の内装を活用して改装
すりガラスなど古民家の内装を活用して改装 石渡社長も塩田氏と同じく16年のイベントでソウダ氏のジビエ料理を食し、昨年開催したコラボイベントにも参加。
 「昨年のイベントに石渡社長がお越し下さり“犬島でも何かやろう”という話になった」(塩田氏)という。

 塩田氏と石渡社長の最初の接点は、幸福学(幸福経営学)を提唱する慶應義塾大学の前野隆司教授らを招いたイベントを塩田氏が主催し、そのトークセッションに石渡社長が登壇したことにある。


 これをきっかけに、2016年、石渡社長は父(故・石渡光一会長)とともに瀬戸芸で直島を訪れ、それまでの美術館の常識を覆す瀬戸芸に圧倒されたという。

 犬島を訪れた際、当時犬島を担当していたベネッセのスタッフから寄せられた“犬島の人口減を食い止めるために、古民家を改装したバーをつくってほしい”との声を受け、「瀬戸芸をもっと知りたい、末席からでも仲間に加えてもらいたい」との想いから当時まだ健在だった二代目光一会長の賛同を得て、2019年「犬島ホッピーバー」を設立した。

人口約30人の犬島 活性化へ「末永く続けていきたい」

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犬島
犬島 犬島諸島のうちのひとつ犬ノ島には、うずくまった犬の形に似た巨石「犬石様」があり、犬島の名の由来となっている。

 良質な花崗岩(犬島みかげ)の産出でも知られ、古くは江戸城、大坂城、岡山城の石垣、明治以降では大阪港礎石の切り出し場となるなど、全国各地で犬島の石が珍重されてきた。

 1909年には、犬島製錬所を開設。これにより最盛期に住民は3000人を超えた。以降、精錬所閉鎖と採石業の衰退により人口は減少の一途を辿っている。

 精錬所は現在、「犬島精錬所美術館」と称し犬島「家プロジェクト」の一端を担い犬島観光の目玉となっている。

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折紙作家の勝川東氏
折紙作家の勝川東氏 犬島「家プロジェクト」は、福武財団が犬島の集落に「日常の中の美しい風景や作品の向こうに広がる身近な自然を感じられるように」との願いを込め、2010年に開館した企画展示を目的としたギャラリー。

 アーティスティックディレクターに長谷川祐子氏、建築家に妹島和世氏を迎え入れ、現在、「F邸」「S邸」「I邸」「A邸」「C邸」などさまざまなアーティストの作品を公開している。

 直近では、妹島氏が設計を手がけた新たなパビリオン「HANA(ハナ)」を6月5日に公開。同パビリオンは、イタリアのファッションブランド PRADAからの寄贈によって実現した。


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出張料理人・現代美食家のソウダルア氏
出張料理人・現代美食家のソウダルア氏 「犬島ホッピーバー」の家具に加えて、「犬島ホッピーバー」も妹島氏が監修する。家主の許可を得て、空き家だった民家を改修。延石を含め,建物を支える骨組み部分をそのまま活用し、新たにHPシェル構造の屋根の軒とこれを支える梁を設け,その端部を高さ約2m・重さ8トンの花崗岩(犬島みかげ)が支えている。

 「犬島ホッピーバー」は、犬島がかつて栄えていた頃、飲食店や映画館があった最も栄えていた場所に位置する。

 ソウダ氏は「島にはシンプルにお酒を楽しめる場所が少なかったりすることから、『犬島ホッピーバー』を起点に犬島の方や島外から来られた方、アーティストが一緒にお酒を酌み交わす風景が広まっていってほしい」と期待を寄せる。

 石渡社長は「絵柄が彫られたガラスも、改修時に割れなかったものを活用した。現在、日本には絵柄が彫られたガラスをつくれる職人さんがいないと聞いており貴重なガラスとなる。新旧が合わさった空間をさらに活用して、ライフワークとして携わっていく決意だ」と力を込める。

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創作料理(ベイカなど)
創作料理(ベイカなど)
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赤紫蘇を活かして開発されたホッピーカクテル
赤紫蘇を活かして開発されたホッピーカクテル
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