
「酒税改正後も両者の価格差は残るが、縮まる。ただエコノミーはビール活性化に欠かせないカテゴリー。消費者の購入量やニーズを踏まえても、その活性化はビール会社としてきわめて重要な仕事であると考えている」(9月29日の発表会でサントリー・多田寅=すすむ=常務)。
同社ビール事業では「ザ・プレミアム・モルツ」「サントリー生」「金麦」による、プレミアム・スタンダード・エコノミーの棲み分けを明確化した価格帯別マーケティングに力を入れる。
20年から段階的に進む酒税改正で、エコノミービールから他カテゴリーへの需要流出が続くなか、同社発泡酒ブランド「金麦」は健闘。今年も年初のリニューアルが奏功し8月まで累計出荷数は前年同期比96%と、市場を4㌽上回っている。
現在、金麦の酒税法上の区分は「発泡酒②」。23年の改正で発泡酒と税率が統合されるまで「新ジャンル」「第三のビール」などと呼ばれていたカテゴリーだ。
同品の原料に占める麦芽比率を50%以上に高めることで、名実ともに「ビール」として刷新。
ビール化後の価格も税率アップ分の転嫁のみで、店頭では引き続きエコノミービールとして値ごろ感ある価格帯で販売される見込み。
“ビール化”する3品「金麦」本体とともに〈糖質75%オフ〉〈ザ・ラガー〉の主要3品種をビール化。麦芽比率アップにより飲みごたえ強化を図るとともに、すっきりとした後味にも磨きをかけた。〈晩酌サワー〉などその他の品種については検討中という。
「日々、家で飲むのに一番ふさわしいビール類」として「金麦」を挙げる人は、エコノミービールの平均を3倍程度上回る12%前後で推移している(同社調べ)。
「金麦の価格を今以上に上げると、エコノミーニーズに応えられない」(多田氏)と判断。現行の価格帯のままビール化することで“納得できる価値”を強化した。生活に寄り添うビールとしての支持をつなぎとめるとともに、エコノミー市場の活性化を図る考えだ。