サイバー攻撃によるシステム障害が9月末から続いてきたアサヒグループホールディングスは、この間に手作業で行ってきた受注・出荷に関して、12月からシステムを通じた業務が復旧することをあきらかにした。当面は出荷できるSKUやリードタイムに制約が残るものの、来春にかけて正常化が順次進む見通しだ。


 11月27日に勝木敦志社長ら幹部が会見し、今回の件に関する調査結果と今後の対応を説明した。

 勝木社長は冒頭、関係者への迷惑を陳謝。得意先などから多くの励ましが寄せられたといい「皆さまには大変なご不便をおかけしているにもかかわらず、商品供給の不規則な対応をご理解いただいたことに深く感謝申し上げる」と表明した。

 事案が発生した9月29日から約2か月にわたり、外部の専門機関と連携しながらランサムウェア攻撃の封じ込めやシステムの復元作業を進めてきた。攻撃者には接触しておらず、身代金の支払いなどはしていないという。

 再発防止に向け、通信経路やネットワーク制御を再設計するなど対策を徹底。万が一の際には迅速に復旧できるよう、バックアップ戦略やBCP(事業継続計画)も見直す方針だ。

 情報漏洩に関する調査を通じて、従業員の一部PC端末からのデータ流出を確認。データセンターのサーバー内の個人情報も流出の可能性があるものの、ネット上で公開された事実は確認されていない。

 手作業で行ってきた受注・出荷は、12月からシステムを通じた業務が復旧。アサヒビール・アサヒ飲料は3日から受注を再開し、8日以降納品分から出荷。アサヒグループ食品は2日から受注、11日以降納品分から出荷再開する。


 当面は全商品の出荷には至らないものの、制約が残る配送のリードタイムを来年2月までに通常化させることで、物流業務全体の正常化を目指すとしている。

「社員らを誇りに」

 勝木社長は「今回、お客様のあたたかなお言葉、ときにお叱りのお言葉を頂戴し、いかに私どもの商品やサービスがおいしさやよろこび、つながりをお届けしてきたかを実感した」と吐露。

 「また社員の頼もしさも実感した。復旧のめどが立ったのは、社員の驚くべき頑張りによるもの。月並みな言葉だが、社員のことを誇りに思った。不適切な表現とは思うが、経営者冥利に尽きる経験をさせてもらった」と力を込めて語った。
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