「とにかくラクチンで疲れない」。ママのクチコミで瞬く間にシェア拡大したベビーキャリア(抱っこひも)が『エルゴベビー』。
アメリカ発のブランドらしいラフ&タフな使い心地、実用性を追求したのがウケた。ニセモノが出回るほど人気の『エルゴ』だが、最安17,000円から最高26,000円(いずれも税別)までいくつかのラインナップが存在し、どれを買えば良いのか迷うママも多いはず。今回はエルゴベビー日本正規総代理店である株式会社ダッドウェイに取材し、主要な4つのラインナップを比較検証した。ぜひ購入時の参考にしてほしい。結論から言うと、一番コスパが良いのは「アダプト(ADAPT)」だと思う!
■ベビーキャリア『エルゴベビー』シリーズのおさらい

おおまかに分けて、『エルゴ』には4種類のラインナップが存在する。価格順に紹介するとこのとおり。(価格はいずれも税別)
①オリジナルが、一番売れているベーシックモデル。②ヴェントスは通気性が良くてスポーティな夏向けモデル。③アダプト(ADAPT)は2016年5月に発売、これまでのエルゴの弱点を補った最新モデルで、おためし新商品ナビのイチオシ。④スリーシックスティ(360)はエルゴシリーズで唯一前向き抱っこができるほか、ママにも赤ちゃんにも優しい高級モデルという位置付けだ。
これら4種類を順番に紹介する。検証は子育て経験のある複数の編集部スタッフと、乳児の人形「おためしリサ」で行った。

尚、この記事はダッドウェイ社の広告ではないので念のため。消費者目線で商品検証することをダッドウェイ社に伝えた上での取材記事である。では、まずは①オリジナルを紹介しよう。
■『エルゴベビー』のスタンダード、①オリジナル
オリジナル(Original)は、『エルゴベビー』のもっともベーシックなモデルである。商品名に「オーガニック」や「デザイナー」と表記してあるモデルも、このオリジナルに含まれると考えてよい。

税別17,000円から購入可能。模様や素材によって価格が上がる。最安だとブラックやレッドなどシンプルなものしか選べないところ+1,500円でドットやストライプなどかわいい模様が入り、+2,500円以上でオーガニックコットンやリネン(麻)混紡素材を用いたものや、ブランドコラボモデルと選択肢が広がる。つまり基本的な機能はどれも同じで、値段の差はデザイン料だと考えて良い。

抱っこひもを「道具」と割り切るなら安いもので十分、しかし1~2年間は頻繁に使うものだから愛せるデザインを選ぶのも悪くない。今回の取材では、最安17,000円のブラックを用いて検証した。

■抱っこしてみると、『エルゴ』はやっぱり、疲れない!
『エルゴベビー』最大の魅力は、ママ(パパ)が疲れないことだと記者は考える。
そのヒミツは極太のストラップにある。

肩ひもはパッド入りで超肉厚、それを背中でガッチリとロック。

腰のベルトも超幅広。

そしてこれら極太のストラップが、赤ちゃんのからだをギュッとママに引き寄せてくれる。

赤ちゃんの重心がママ(パパ)に近いから軽く感じられるし、太いストラップはからだに食い込まないから、とてもとてもラクなのだ!

今回の取材では検証しなかったが、すべてのエルゴベビーは同じ要領で「おんぶ」のほか「腰抱き」もできるようになっている。
■『エルゴ』に備わった、細かな機能
細かな便利機能を紹介する。まず「スリーピングフード」は、赤ちゃんがスヤスヤと寝た時に重宝する。

エルゴ本体に縫い付けられた、赤ちゃんの頭部を包み込む布。拡げて肩ひもにボタンで留めれば日よけになるし、赤ちゃんが首カックンしないよう固定してくれる役割も果たす。

使わない時は、ポケットにギュッと押し込んでおけばOK。このあたりのラフさがアメリカ発らしい。

またフード収納ポケットとは別に、本体横にジッパー付きのポケットがある。
中はけっこう深い。財布や定期券を入れてもいいし、赤ちゃんの体温調整に保冷材を忍ばせてもOK。ちょうど赤ちゃんの背中にあたる位置だ。

ただし、ダッドウェイ社によれば「カイロ」はNGとのこと。赤ちゃんに低温やけどの危険がある為。
あとは「ベビーウエストベルト」が付属している。

これは赤ちゃんの落下防止、もしもの時の命綱だ。2016年からすべての『エルゴ』に標準で付属するようになっているもので、旧来のエルゴ・ユーザーはご存じないだろう。万が一、赤ちゃんがすべり落ちた時、このストラップが地面への衝突から回避してくれるかもしれない。

ただし、抱っこするたびにベルトを赤ちゃんの腰に巻いて……というのは、ちょっとダルいかもしれない。これを毎回セットするかは保護者の判断という感じだろうか。もちろん当サイトは危険行為を推奨するものではないし、今後もし着用義務化など法改正あれば、当然それに従ってほしい。
「ベビーウエストベルト」は単品2,000円(税別)なのだが、公式ショッピングサイトでは2015年以前のベルトなしモデルを2,000円引きで提供しており、この企業姿勢は評価したい!
■『エルゴベビー』の罠!? インファント インサート!
ここまで記事を読んで「価格の安いモデルで充分満足できそうだから買っちゃおう」と思われた読者もいることだろう……。しかし断言しよう。エルゴ購入希望者は皆、約4千円の「インファント インサート」が別売であると知って強烈なショックを受けるのだ! 安いと思ったら罠じゃないか! と。

まあ、罠は冗談としても、「インファント インサート」を買うかどうかで迷うママは多いだろう。エルゴ単体では新生児を抱っこできないのだ。具体的には生後4ヵ月以上、体重5.5kg以上、首が完全にすわって、両膝がキャリアから出る大きさの赤ちゃんにしか単体では使ってはいけないという制限がある。まだ身体の小さい新生児をエルゴで抱っこする場合は、別売3,800円~4,800円(税別)のインファント インサートを購入して、グラグラしないようサポートしてあげる必要がある。


あとはインファント インサートを買わずに済ますために、そもそも赤ちゃんの首がすわるまではベビーキャリアを使用しない、という選択肢・考え方もアリか。

ともかく、このインファント インサートを本体とセット購入すると他社製品よりぐっと高く感じられてしまう点、これがエルゴのウィークポイントだったと記者は考える。
これから新生児をお迎えする保護者の方はこの点、きちんと把握して頂きたい。そしてのちほど紹介する③アダプト(ADAPT)、これが記者のおすすめモデルだが、そちらは“インファント インサートが要らないエルゴ”なので、ぜひ最後までお目通し頂きたい。
さて、お次はスポーティなモデルの②ヴェントスを紹介しよう。
■②ヴェントスは、スポーティなエルゴ!

ヴェントス最大の特徴は、見てわかる通り、本体がメッシュ地になっていることだ。

そもそも赤ちゃんは大人に比べて体温が高く、眠っている時は尚更。寝汗がひどいと風邪、あせも、そして着替えの心配が出てくるし、抱っこするママやパパも汗だくになる。見るからに涼しげなヴェントスは、出産予定日が春~夏のママには気になるラインだろう。

しかし、はじめて買うベビーキャリア(抱っこひも)としては、ヴェントスをおすすめしない。あくまで2本目のキャリアを買い足したいと思ったときの選択肢と考えた方が良いと思う。それはなぜか。

まず、ほかのエルゴがすべてコットン(綿)製であるところ、ヴェントスだけはポリエステル製。新生児の肌に触れるのに、優しい素材のアイテムを使いたいママは多いはず。
次に、抱っこひもは通常2年くらいは継続的に使うアイテムであることを考えると、夏は良くても冬は? という考えがよぎる。真冬にメッシュはなんとも赤ちゃんがかわいそうに思える。そもそもの使用感について言えば、メッシュ地だからといって劇的に涼しさを感じられるものではなかったが、それでもやっぱり、真冬にメッシュは……である。
■メーカーも「ヴェントスは2本目のエルゴ」と位置付けている模様
そして、ヴェントスは2本目のキャリアに相応しい、というのはメーカー側もどうやら同じ考えであるようだ。月齢が進んだ赤ちゃんにフィットするよう、やや大きめのサイズ感なのだ。まず、首周りのカットが高めに作られている。

身体が大きめの赤ちゃんでも、首を支えられる構造だ。
スリーピングフードも大判で、下部を留めるボタンも付いているのはヴェントスだけだ。

ほか細かな違い、これはサイズとは関係ないが、肩ひもの厚みは控えめで、左右の肩ひもをつなぐスライダーがうごかしやすい形状に変更されている。

ダッドウェイ社によると、ヴェントスは男性ユーザーが好むケースが多いそう。なるほど、スッキリとした見た目で、それも納得できる。

さて、いよいよ大本命の③アダプト(ADAPT)を紹介しよう。
■最新&最強のエルゴ、その名はアダプト(ADAPT)!
③アダプト(ADAPT)最大の特徴は、インファント インサートが要らないエルゴ、ということになる。

ただし価格は22,000円(税別)で、①オリジナルのエルゴとインファント インサートを同時購入するのと比べ同じレベルかむしろ高くなる場合もあり、割安感に優れているわけではない。それでもアダプト(ADAPT)の機能に、記者は感動した! シンプルに完成されたエルゴベビーに、まだこんなに改良の余地があったのか、と。


■なぜアダプト(ADAPT)は、インファント インサートが不要なのか?
まず、どうやってインファント インサート無しでも新生児のからだを支えられるようになったか? アダプト(ADAPT)は各所のサイズを面ファスナー(いわゆるマジックテープ)やボタンで調整できるという、シンプルな仕組みでそれを実現した。赤ちゃんの股サイズ、内側はマジックテープでの3段階調整。

外側はボタンで3段階調整。

これによって新生児に合わせたサイズに変更できるだけでなく、立体的な丸みを作り出すことに成功。

おかげで赤ちゃんのお尻を包み込むようなフィット感が生まれた!

赤ちゃんの首周りに当たるクッションも分厚めだ。

まだ首のすわっていない赤ちゃんの首も、しっかり受け止められる。

そして子供の成長に合わせて、クッションの位置はボタンで3パターンに変更可能だ。
■新型エルゴ、アダプト(ADAPT)の進化はそれだけじゃない!

インファント インサートが不要なエルゴ、アダプト(ADAPT)の進化はそれだけではない。目立つのは腰ベルトの分厚いパッド。

これのおかげで、ママ(パパ)の腰へのダメージは更に軽減された。

そして記者が何より驚いたのは、肩ひものバッテン掛けができることだ!

ストラップを長めに調整して、バッテン掛け。これが思った以上にラクチンなのだ。従来のエルゴと比べると、まず腕が動かしやすい。それから肩ひもがズリ落ちそうな感じがしない。従来のエルゴでも背中のバックルでちゃんとロックできるのだが、それでもズリ落ちそうな感覚があって、ストラップをギュウギュウに締めたことのあるママも多いはず。“エルゴあるある”で言えば、そもそも背中のバックルに手が届かなくて苦しい、というのもあった。

それらがすべて解消! バッテン掛けは肩ひもを掛けてサイドのバックルで固定する。

ちなみにこの箇所に限らないが、エルゴのバックル近くにはゴム製のループがついている。これは万一バックルが外れた時に引っ掛けて止める安全装置なので、必ずループを通すようにしよう。

というわけで、これから新生児用にエルゴベビーを買う場合は、保護者もラクチンな③アダプト(ADAPT)で間違いないと、ひとまず太鼓判を押しておく! だが……もしも赤ちゃんに最高の上質さを提供したいと考えるならば、アダプトに勝るのが④スリーシックスティ(360)なのだ。最後にこれを紹介しよう。
■前向き抱っこができるエルゴ、④スリーシックスティ(360)

前向き抱っこができるエルゴは、このスリーシックスティ(360)だけ。基本的にはその認識で間違いない。

だが、それ以外にもこのスリーシックスティ(360)だけの上質な装備が備わっていることを紹介したい。検証にはピュアブラックのスリーシックスティ(360)を使用した。
特徴的なのは、腰ベルトが面ファスナー、いわゆるマジックテープで留める仕組みになっていること。

バリバリ……という音にあまり高級なイメージを抱かない向きもあるだろうが、使ってみた記者の実感として「これが一番腰がラク」なのである。付け外しはもちろん、赤ちゃんが軽く感じた。

ダッドウェイ社も科学的な圧力測定検査を行ってみたところ、スリーシックスティ(360)の腰ベルトがいちばん荷重分散してラクちん、という結果が出たそうで、記者の実感と一致する。

ほか、面ファスナーの恩恵として、パパとママで『エルゴ』を共用する際毎回ストラップの長さを変更しなくて良いのも嬉しい。ただし注意したいのは、ママがニット地のカーディガンなどを着ている場合……マジックテープがくっついて、服をボロボロにしてしまう恐れがある。この点注意して使ってほしい。
■スリーシックスティ(360)は赤ちゃんに最上級のクッションシートを備える
スリーシックスティ(360)は、赤ちゃんが座るシート部もひときわ上質に作られている。シートも首周りを支えるクッションも肉厚。

全体のシルエットは、ストンとした①オリジナルよりもグッと立体的で、赤ちゃんを包み込んでくれる形状。グッドデザイン賞を受賞したモデルでもある。

スリーピングフードも、ギュッと突っ込むだけの①オリジナルと違って、ジッパーで綺麗に収納できる。まさに上質・上品なエルゴなのだ。
■では、実際にスリーシックスティ(360)を買うかどうか……
ただしこのスリーシックスティ(360)、お値段は23,500円~26,000円(税別)。オリジナルとの価格差6千円~9千円あり、それだけの価値を見出せるかどうかがポイントである。面ファスナーも好みが分かれるだろうし、インファント インサートも別途必要だ。


参考までに、一般的な賛成派の意見としては、
- 大人と一緒の景色を見られる
- 幼い時から視覚を刺激して、好奇心が養われる
- かわいい我が子をみんなに見せたい
反対派の意見は
- 大人が転んだとき、顔から着地するから危ない
- 赤ちゃんの重心が大人から離れて重く感じるし、不安定
■結論 : 『エルゴベビー』買うならアダプト(ADAPT)!
というわけで、これから新生児用に購入するならアダプト(ADAPT)シリーズがおすすめなのである。インファント インサート別途不要という以外の付加価値、つまり腰パッドと肩のバッテン掛けはインパクトある改良だった。これが現段階でナンバーワンの『エルゴベビー』だ。


だが元祖エルゴ、オリジナル(Original)シリーズももちろん素晴らしい。なにより安価だし、細かい調整ナシでラフに使えるのが心地よい。赤ちゃんの首がすわってから使うことを想定しているなら、これで必要十分と言える。アダプト発売前なら、疑いなくこれが1位だった。

第3位スリーシックスティ(360)は、数千円の差など気にせず、とにかく赤ちゃんに上質なものを使いたいとお考えのファミリー用である。
2003年に誕生した『エルゴベビー』ブランドは今年で13年。基本の使い心地はそのままに、更なる改良にチャレンジそして成功したことに感服! 今回はコストパフォーマンスも含めて厳しくランク付けしたが、これから赤ちゃんをお迎えするご家庭にどの『エルゴ』も満足を届けてくれることを約束する。すべてのファミリーに幸あれ!

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