大谷翔平「FA争奪戦」の大本命、ドジャースとの関係はウィンウ...の画像はこちら >>

今季は右肘のケガの影響で途中離脱するも、日本人初のメジャー本塁打王のタイトルを獲得し、投手では10勝を挙げた

今オフのMLBのフリーエージェント(FA)市場は、ワールドシリーズが終了した翌日から開かれる。最速だと現地時間11月1日、遅くても11月5日には〝大谷争奪戦〟のゴングが鳴らされる。

今年のFA市場は大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)を中心に動き、その去就が決まらないと、ほかの選手たちの新天地が決まるのも遅くなるだろう。

MLBの全30球団が、球界最高の選手で、最大のスーパースターでもある大谷をチームに加えたいと願っているだろうが、実際に争奪戦に参戦するチームは10球団程度と予想される。昨オフから、その大本命といわれているのがロサンゼルス・ドジャースだ。

ドジャースタジアムは、エンゼルスの本拠地アナハイムから約50㎞の距離にあり、大谷は6年間を過ごして慣れ親しんだ環境にとどまることができる。また、大谷の肘の手術を担当した〝スーパードクター〟ことニール・エルアトラッシュ医師は、ロサンゼルスを拠点としているだけでなく、ドジャースのチームドクターも兼務している。

映画『ロッキー』シリーズでおなじみのシルベスター・スタローンの義兄でもあるエルアトラッシュ医師は、大谷の1度目の肘の手術も執刀したが、今回の手術に関しては詳細が明かされていない。

従来のトミー・ジョン手術(TJ手術)ではなく、新しい技術「インターナル・ブレース」を使った手術なのではないかと噂されている。

新技術なだけに過去の事例が少なく、大谷のリハビリは医師の定期的な診断の下、慎重に行なわれる必要がある。もし大谷が投手だけの一刀流であれば、シーズンを全休して医師の近くでリハビリに専念できるが、大谷は来季も打者としてフルシーズン活躍するつもりだ。

大谷翔平「FA争奪戦」の大本命、ドジャースとの関係はウィンウィン!?
9月に右肘の手術を行ない、来季はリハビリをしながら打者としてシーズンを戦う予定。担当医師はドジャースのチームドクターも務めている

9月に右肘の手術を行ない、来季はリハビリをしながら打者としてシーズンを戦う予定。担当医師はドジャースのチームドクターも務めている

エルアトラッシュ医師を頼るスーパースターは大谷だけではない。今季の年俸が56億円を超える、NFLのニューヨーク・ジェッツに所属するアーロン・ロジャースは、大谷の6日前にアキレス腱の手術を受けた。

多くのアスリートが同医師に手術と術後のリハビリを頼んでいる状態で、仮に大谷がロサンゼルスから飛行機で片道5時間以上も離れている東海岸のチームでプレーするとなると、定期的にリハビリを見てもらうのは難しい。

しかしドジャースに入団すれば、エルアトラッシュ医師は頻繁にホームゲームに足を運んでいるため、手厚いサポートを受けられる。

大谷は8月9日の試合後の囲み会見を最後に、マスコミへの取材対応をしていないので、今の本心を知ることはできない。だが、一昨年9月末に口にした「勝ちたいという気持ちが強い」という思いは変わっていないはずだ。

エンゼルスに入団してからの6年間で1度もプレーオフに出られなかったが、ドジャースはその6年すべてでプレーオフに出場。大谷は、ひとりの力でチームをプレーオフに導くのは無理だと身をもって学んでいるだけに、11年連続プレーオフ出場中のドジャースは理想的だろう。

大谷翔平「FA争奪戦」の大本命、ドジャースとの関係はウィンウィン!?
今季もドジャースはレギュラーシーズンで100勝を挙げたが、プレーオフの地区シリーズで敗退。大舞台に強い大谷が救世主となるのか

今季もドジャースはレギュラーシーズンで100勝を挙げたが、プレーオフの地区シリーズで敗退。大舞台に強い大谷が救世主となるのか

一方のドジャースは、すでにプレーオフに出場できる戦力を誇るが、プレーオフを勝ち抜き、ワールドシリーズを制覇するためには大谷の力が必要だ。

60試合の短縮シーズンだった2020年を除き、直近の5年すべてで100勝以上を記録しているドジャースは、レギュラーシーズンでは圧倒的な強さを見せる。

しかし、100勝以上した4シーズン中、3度もプレーオフ一回戦の地区シリーズで敗退。今年もアリゾナ・ダイヤモンドバックス相手に地区シリーズで3連敗と〝スイープ負け〟の屈辱を味わった。

大谷は今年3月のWBCの準決勝、決勝戦で見せたように、大舞台で活躍できる勝負強い選手。

世界一奪回を狙うドジャースの救世主となれる存在なのだ。

ドジャースはフレディ・フリーマンと27年まで、ムーキー・ベッツと32年までの長期契約を結んでいる。だが、それ以外で来季の契約が保証されている主力選手は、年俸1300万ドル(約19億5000万円)のクリス・テイラーと、同500万ドル(約7億5000万円)のミゲル・ロハスという〝お買い得〟な2選手だけだ。

今季に36本塁打、105打点を記録したマックス・マンシーは1000万ドル(約15億円)の球団オプションなので、マンシーとも契約は更新するはずだが、それでも年俸500万ドル以上の選手は5人のみ。大谷と超大型契約を結ぶ余裕はたっぷりある。

昨オフには指名打者のJ・D・マルティネスと単年契約をしたため、その契約が切れる今オフは大谷の席を空けて待っている。

大谷の投手としての復帰は25年になるだろうが、そのときにはウォーカー・ビューラーも2度目のTJ手術から復帰して、大谷と二枚看板を組むことになるだろう。

100マイル(約161キロ)の高速シンカーを投げるダスティン・メイも、25年には2度目のTJ手術から復帰予定。22年に16勝1敗の成績を記録したトニー・ゴンソリンも今年9月1日にTJ手術を受け、来季はリハビリに励む。

大谷、ビューラー、ゴンソリンの3投手は同じ1994年生まれということもあり、同級生と一緒のリハビリは、大谷にとって心強い支えとなりそうだ。

一方、2度目のDV容疑で逮捕された左腕エース、フリオ・ウリアスは退団が濃厚だ。ドジャースは今年1月、2021年に女性への性的暴行疑惑で長期の出場停止処分を受けたトレバー・バウアー(現DeNA)を、今季の年俸2250万ドル(約34億円)を負担してでもクビにしたように、暴力行為に対して厳しい態度を保っている。

ただ、21年に最多勝、22年に最優秀防御率のタイトルを手にしたウリアスが抜けても、投手・大谷が完全復活すればその穴は十分に埋められる。

地区シリーズ3連敗を喫したことで浮上した「大谷待望論」。相思相愛に思える大谷とドジャースだが、果たして大谷が出す答えはどうなるのだろうか?

取材・文・撮影/三尾 圭