2011年12月に初代を発売してから約12年で累計250万台オーバーを達成したN‐BOX。 この数字はホンダ車として史上最速。
国内の新車販売で9年連続トップに輝き、完全無双状態となっているのが、ホンダの軽スーパーハイトワゴン「N‐BOX」。そんな〝絶対的強者〟が昨年10月にフルチェン、3代目となる新型が爆誕した。しかし、一部ディーラーではまだ2代目が新車で買えるという。なぜそんなことに? カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
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――国内の新車販売総合トップは、23年もホンダの軽N‐BOXだったそうで?
渡辺 はい。N‐BOXは、昨年末にホンダ史上最速で累計250万台を突破し、新車販売の軽自動車部門で9年間連続トップに輝きました。
――絶対的強者!
渡辺 つけ加えると、23年は月平均1万9300台が届け出され、国内で売られたホンダ車の実に39%を占めました。
――国内のホンダ車の3分の1以上がN‐BOXじゃないスか!
渡辺 ただし、23年のホンダ全体の国内販売順位は4位です。
――これだけN‐BOXが売れているのに?
渡辺 N‐BOXの爆売れは、フィットなどホンダのコンパクトカーの需要を奪った数字でもあるんですよ。
一部販売店ではまだ新車購入できる先代N‐BOX
――あー。
渡辺 何が言いたいかというと、ホンダの国内販売はN‐BOXへの依存度が非常に高い。
――具体的には?
渡辺 新型の登場から3ヵ月を経過した23年1月中旬時点でも、販売会社によっては先代型の在庫が残っています。販売店によると、「先代N‐BOXなら、カーナビの装着などを含め20万円は値引きします。
――新型と旧型が併売されていると。
渡辺 複数の販売店から「先代型の在庫は急速に減っている」という返答もありましたが......私も長いことクルマ業界の末席を汚させていただいていますけどね、新旧モデルを比べて買えるという新車は稀有(笑)。
――とはいえ、先代の在庫は順調に減ってんスよね?
渡辺 はい。ただ、先代型の在庫が減った代わりに、今度は新型N‐BOXの在庫が増えている。
――どういうこと?
渡辺 N‐BOXはホンダの基幹車種で、薄利多売の軽自動車ですから、生産ペースを落とせません。
――単純に考えて販売店は在庫を多く抱えると困るのでは?
渡辺 クルマはほかの商品に比べてサイズが大きく、保管コストも高額なので早急に売却したい。そこで販売店では、「在庫車ならメーカーへ新規で発注するよりも値引きを増やせます」と言います。
――それでも在庫がさばけないときは?
渡辺 販売会社が届けを出して、実質的に未使用の届け出済み中古車として中古車販売店に並べます。
届け出済み未使用中古車が多いという新型の標準モデル
――要するに新型N‐BOXも届け出済み未使用中古車が多いと?
渡辺 発売から3ヵ月だからまだ大量ではありませんが、すでに増え始めています。カスタムよりも標準ボディが多いですね。
――届け出済み未使用中古車はお買い得なんスか?
渡辺 値引き額に相当する数万円は安くなる場合もありますが注意も必要です。業者によっては届け出済み未使用中古車の価格を安く抑えながら、点検整備費用などの名目で、高額の法定外諸費用を請求する場合があるからです。
――価格を安く見せて、諸費用で儲ける戦略ですね。
渡辺 また新車で買えば24年式ですが、届け出済み未使用中古車には23年式が多い。数年後に売却する際は、年式が基準になるため、23年式の届け出済み未使用中古車を24年に買うと損です。いずれにせよ、N‐BOXは大量に売られてきた車種ですから、ほかのクルマに比べて裏側のアレコレも多いのです。
撮影/週プレ自動車班 写真提供/本田技研工業