呂布カルマの『フリースタイルダンジョン』後とバトルに「まだ熱...の画像はこちら >>

『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『フリースタイルダンジョン』について語った。

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★今週のひと言「『フリースタイルダンジョン』の思い出編・下の巻」

俺は最初からわかっていた。『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日、以下FD)の本当の主役は挑戦者ではなく、モンスターだということを。

当初のもくろみはともかく、初代モンスター期の段階でコアなHIPHOPファンよりもFDをきっかけにバトルを知る層、HIPHOPうんぬんよりもキャラクターに重きを置いている新規ファン層に対してアプローチしているということを俺は理解していた。

フリースタイルはおろか、HIPHOPがなんたるかも理解していない視聴者にとっては、どこの誰だかわからないチャレンジャーよりも毎週目にするモンスター側のパーソナリティのほうが伝わりやすく、モンスター同士の協力関係なども手伝って、極端な話、バトルに勝とうが負けようがモンスターの人気が高まっていくのだ。

それを2代目就任前に理解していた俺は、勝敗へのこだわりやそこに対する恐れや悩みはなかった。とはいえ、これは嫌みになるかもしれないが、2代目モンスター期、俺はトップの勝率を誇り、負けたら負けたでその負けが話題になるほどだったので、正直なんのストレスもなくチャレンジャーの迎撃に勤(いそ)しんだ。

それにより10年以上、一部の日本語ラップマニアのものだった呂布カルマというキャラクターの認知はその外側に広がっていくことになった。

そうすると、いわゆる古参といわれる人たちからは、ミステリアスな魅力がなくなっただの、テレビに魂を売っただの言われるのだが、それはFDを経てさらに広がる俺の仕事の幅に応じて永遠に同じことを言われ続けるのだった。

俺は生来の図太さと自己肯定感の高さを有しているから、外野に何を言われてもまったく動じないのだが、本来繊細なアーティストであるモンスター仲間たちの中には、それまでとは比べものにならない量の賛否や急激な境遇の変化にメンタルを疲弊させていく者もあった。

今や国民的なスターとなったR-指定や、先日東京ドーム公演を成功させたBAD HOPのT-Pablowらの初代モンスターたちがおよそ2年、俺たち2代目も同じく2年ほどでモンスターメンバーの入れ替えがあり、高い勝率を誇った俺とFORKさんを残し、3代目となった。

単純に勝率が高ければストレスが低いのか、ストレスによる影響が少ないから勝率が高かったのか、俺もFORKさんもチームの年長組で環境の変化に影響を受けづらかったからなのか、その要因はわからないが、心から俺はFDを楽しめていたと思う。
 しかしFDは、出演者の中から多数の逮捕者を出したことやコロナ禍も手伝い、3代目に代替わりして間もなく放送終了することになった。

その後、俺はバトルの大会に個人でエントリーしても正直モチベーションが上がりづらくなっていた。FDの目的意識を持った戦いから受ける緊張感や達成感と比べ、個人戦で得られるものは、賞金を別にすると自分の名誉のみ。そこに物足りなさを感じるようになってしまったのだ。

すでに日本一を決める大会で優勝していたこともあり、これ以上バトルでいくら勝っても名前の売りようもない上、対戦相手からの「テレビに出てリアルじゃない」うんぬんの判で押したようなディスにも飽き飽きしていた。

そんな中、現在FDの後継番組である『フリースタイル日本統一』(テレビ朝日系)で地元の裂固、楓と共に〝チーム東海〟として再び戦っている。チームのため、地元に栄誉を持ち帰るための戦いは今もまだ熱くなれる。

ぜひその結果に注目してほしい。

撮影/田中智久