中日は「今年は変わるんじゃないか」。山﨑武司氏が語る投打の注...の画像はこちら >>

(左から)石川や細川と談笑する新加入の中田。貧打に悩まされた打線の主軸として活躍が期待される

立浪和義監督の契約最終年となる今シーズン。

心なしか、「セ・リーグのダークホース」として中日を挙げる識者が目立つ。果たして中日は本当に期待できるのか。それとも――。キャンプ取材などでの率直な印象を、OBの山﨑武司氏に聞いた。

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結論から言うと、「今年は変わるんじゃないか」と感じたキャンプでした。昨年は球場に足を踏み入れた瞬間に「厳しいな」と思ったほど活気がなかった。

それがガラッと雰囲気が変わり、選手の顔つきも違った。そういう雰囲気づくりがまず目につきました。 

今シーズンの順位は4位と予想します。投手陣の顔触れを見ると、Aクラス争いをしても不思議ではない。最低限、打線が打てればという前提の下ですが。

中日の課題は明確で、チャンスで打てる打者の存在。

打点を稼げる主軸として、年俸3億円といわれる大型契約で中田 翔を獲得しましたが、正直、打者陣全体で大きな上積みがあるとはとらえていません。中田の加入で点が取れるチームになるかというと、また話は別ですから。

中田はオープン戦の打率が1割台(3月19日時点で.125)。どん底の状態で、数字よりも内容が良くないのが気になります。

期待も大きいですが、今の中田に30本塁打を求めるのは酷。彼を4番に起用してダメだった場合は、ダヤン・ビシエドを使うしかない。

僕はビシエドをダメだとはまったく思っていないので、1年スパンで見ると、ビシエドを腐らせないためのマネジメントも重要です。

それでもAクラスを目指すと考えると、中田と石川昂弥がキーマンになります。打点を求められるふたりがどう機能するか。それは絶対ですね。

岡林勇希ら出塁できる選手はいるので、キモは明らかにランナーをかえす選手。細川成也が状態を上げてきましたが、中田にしろ石川にしろ「4番に適任」とは言いづらく、消去法的な要素が大きい。

僕なら石川を使いたいですが、まだ迫力不足で体のキレも本調子ではない。開幕から4番は中田を起用するでしょうが、そのあたりも含めて、やはりキーマンはこのふたりです。

外野はダブつき気味ですけど、オープン戦で結果を残している三好大倫が競争に加われるかどうか。新外国人のアレックス・ディカーソンは体のキレが落ちているのが気になりますが、大島洋平も控えていますし、岡林、細川を中心にあまり不安はないです。

最大の懸念は二遊間。候補は8人ほどいるわけですが、僕から見ても抜きんでた選手がいない。

外国人選手の起用などで乗り切るのであれば、またこれまでと同じことの繰り返しになります。

候補者は一長一短ですが、あえて名前を挙げるなら、村松開人の成長を感じます。昨年にチャンスをもらった経験が生きているのか、技術的にもずいぶん改善が見られた。ただ、その成長だけでレギュラーというレベルではまだないです。

あとは、ルーキーの辻本倫太郎。打つほうも「思っていたよりもやるな」という印象ですが、彼の場合は守れるのが大きい。

経験を積むことで、いいショートになる可能性を秘めています。   

個人的には、高橋周平をどう使うかが気になります。オープン戦で結果を残しているので、一度、周平をセカンドで試してみてほしい。今の起用法だと、首脳陣の選択肢として薄そうですが、シーズンは若手だけで乗り切れるほど甘くない。「中心となるべき選手がそろそろ出てきてほしい」という願望もあります。

昨年よりは貧打が解消されると考えていますが、それは経験値や慣れが好影響をもたらすとみているからです。石川や細川、村松に岡林といった若手が昨年に得た経験は、今シーズンに還元されるはず。補強や入れ替えではなく、個々のレベルアップが期待できます。

昨年は采配にも批判が集まりましたが、そもそも選択肢が限られていた。今年はその幅が少し広がりそうですし、監督に進言できるコーチがいるのか、という部分も注目したいです。

一方の投手陣は、他球団と比べても不安が少ない。正直、「この投手陣ならAクラスに入らないと」というレベルだと思います。クローザーにライデル・マルティネスがいて、セットアッパー候補も松山晋也ら力がある選手が3、4人ほど控えている。スターターもローテ候補が8、9人くらいいます。

そんな中でも、髙橋宏斗にはエースとしての奮起を期待したい。能力の高さは疑いようがないですが、本人が「将来メジャーに行く」と公言するのであれば、今のままではダメ。毎年フォームをイジってますが、僕ならやめさせます(笑)。

現状は明らかにボールがバラついており、要所で力を入れたときに意図するボールが投げられていない。それでもシーズンが始まると微調整できる選手なので、調子を戻してくれると信じています。彼が貯金をつくってくれないと、中日は厳しい戦いを強いられてしまう。

ほかの先発候補は、根尾昂も良くはなっていますが、ひとつひとつのボールはまだ物足りなくて、もう少し安定感が欲しい。もうひとつ決め手があると、ローテ入りの可能性も出てきます。

あとは、持っているモノの良さは間違いない梅津晃大。まだ1シーズンを通して投げた経験がないので、彼の場合は〝自分との闘い〟になるでしょう。それがチーム成績につながるし、今年は大いに期待しています。

中継ぎ陣なら橋本侑樹。指にかかったボールはまず打てないし、左で球が速いだけでも希少です。右打者を抑えられる魅力もあるし、僕は対戦したくない投手ですね。今年は調子が良さそうですが、すごく評価している左腕です。

今年は阪神も含めて、セ・リーグ各球団の戦力に大きな差はない。中日にもチャンスがあるとみています。投手を中心とした「ディフェンス野球」をどれだけ徹底できるか。正直、いきなり打てるチームになるとは思えないので。

ロースコアのゲームで1、2点を積み重ね、接戦を制していく。そんな野球でどれだけ勝ち星を拾えるかで順位が決まるでしょうね。

取材・文/栗田シメイ 写真/産経新聞社