おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! ...の画像はこちら >>

ふりかけが最近、おかずの一品として利用されている。物価高で支出を減らすためということもあるが、素材にこだわった贅沢系商品や、楽しさのある企業コラボ再現系商品なども多いからだ。

令和に現れた〝ふりかけブーム〟の全貌を明らかにする!

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■ふりかけは栄養バランスを補う健康食品だった!

今、ふりかけが大ブームだ。市場調査会社の「富士経済」によると、ふりかけの販売額は2022年には約538億円だったが、23年に約577億円、24年には約592億円(見込み)と右肩上がりで伸び、25年は約601億円と予測されている。

ふりかけ最大手の「丸美屋食品工業」広報室は「コロナ禍が明けた23年以降も順調に推移し、過去最高売り上げを更新しております」と言う。

また首都圏や関西を中心に食料品専門店を展開する「北野エース」も「ふりかけコーナーを強化した24年から、2倍以上売り上げが伸びています」と話す。

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
「北野エース ピオレ姫路店」にあるふりかけのコーナー棚「ふりかけの壁」。ほかにも10店舗ほど「ふりかけの壁」が設置されていて、多い店舗は約200種類も扱っているという

「北野エース ピオレ姫路店」にあるふりかけのコーナー棚「ふりかけの壁」。ほかにも10店舗ほど「ふりかけの壁」が設置されていて、多い店舗は約200種類も扱っているという

なぜ、これほどまでにふりかけの売り上げが伸びているのか。その理由を国際ふりかけ協議会の松江慎太郎代表理事が解説する。

「一番の要因は、物価の高騰によって節約志向が高まっていること。そして、乾燥技術が向上して、おかずの一品にもなりえるクオリティの高いふりかけが増えたことです」

フードジャーナリストのはんつ遠藤氏も同じ意見だ。

「やはり物価高によって、お昼は『お弁当を持っていこう』、夜は『外食するよりも自炊して家でごはんを食べよう』と考える人が多くなったからだと思います。そして、そのときに白米だけだと寂しいので、ふりかけをかけてちょっと豪華感を出そうという人が増えたからではないでしょうか」

昨今の物価高によって、ふりかけは食事に欠かせないアイテムになっているようだ。では、どんなふりかけが人気なのか。

「定番のふりかけはもちろんのこと、『岩下の新生姜味』『ほっともっとのり弁味』『松屋牛めし味』『ポテトチップス のり塩味』『すっぱムーチョ』(以上、ニチフリ)など飲食チェーンやスナック菓子などとの〝コラボ再現系ふりかけ〟や『ゴロっと北海ホタテの焦がし醤油』『いか昆布』(以上、澤田食品)などの〝素材にこだわった贅沢系のふりかけ〟が人気です」(北野エース)

「今は企業などとコラボした〝再現系ふりかけ〟と〝素材にこだわった贅沢系のふりかけ〟の2大ジャンルが注目されています。

再現系ふりかけは『一回、食べてみようかな』と思わせますし、素材にこだわった贅沢系は『おかずの一品』として需要があるのだと思います」(松江氏)

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
岩下の新生姜味ふりかけ(ニチフリ) 140円

岩下の新生姜味ふりかけ(ニチフリ) 140円

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
松屋牛めし味ふりかけ(ニチフリ) 140円

松屋牛めし味ふりかけ(ニチフリ) 140円

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
ポテトチップスのり塩味ふりかけ(ニチフリ) 140円

ポテトチップスのり塩味ふりかけ(ニチフリ) 140円

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
ゴロっと北海ホタテの焦がし醤油ふりかけ(澤田食品) 540円

ゴロっと北海ホタテの焦がし醤油ふりかけ(澤田食品) 540円

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
いか昆布(澤田食品) 540円

いか昆布(澤田食品) 540円

丸美屋は「のりたま」などの定番商品のほかに、しっとり系のふりかけも人気だという。

「ふりかけとして、まず思い浮かべるのはサクサクした食感のドライタイプかと思います。種類も豊富でご利用になる機会が多いのもこのタイプです。

しかし、同じふりかけでも、〝しっとり柔らかな食感〟のウエットタイプもあります。ドライタイプにはない素材本来の味わいを楽しめます。弊社の一番人気は『ソフトふりかけ ちりめん山椒』です」(丸美屋食品広報室)

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
ソフトふりかけ ちりめん山椒(丸美屋) 140円

ソフトふりかけ ちりめん山椒(丸美屋) 140円

今、ふりかけは〝企業コラボ再現系〟〝素材にこだわった贅沢系〟〝しっとりソフト系〟の3つが人気のようだ。

また『ふりかけ 日本の食と思想』(学陽書房)などの著書がある食文化研究家の熊谷真菜氏は、ふりかけ人気には、もうひとつの面があるという。

「ゴマ塩やカツオ節などの〝ふりかけ的〟なものは鎌倉時代からあります。しかし、現在のようなふりかけは、大正時代に健康食品として考案され、戦後になってから『ふりかけ』と名づけられました。

ふりかけは、もともと不足しがちなミネラルやカルシウムなどを取るための健康食品だったのです。そういう意味では、物価高騰で節約志向になり、おかずを一品少なくしなくてはいけないときに、ふりかけは栄養バランスを補ったり、健康維持のための大切な食品なのかもしれません」

はんつ遠藤氏は、最近のふりかけは「味が強めになっている」と言う。

「わさびふりかけの『しげき』(三島食品)や濃厚梅干し味の『男梅ふりかけ』(大森屋)などが典型的ですが、最近の人気のふりかけは味をひとつの方向に強く、濃厚にする傾向があります。

そうすることによって、使う量を少なくできるんです。節約志向が高まっている時代に、強い味のふりかけはとても経済的です。

また、最近はふりかけを単体で使うのではなく、2種類以上合わせて使う人が増えています。例えば『のりたま』に『しげき』を混ぜると、少しわさび味のする〝大人ののりたま〟ができます。『うなぎふりかけ蒲焼味』(ニチフリ)に『しげき』を混ぜれば風味が増します。『男梅ふりかけ』も、のり系のふりかけととても相性がいいんです。

ふりかけは、何種類かまとめて買うことが多いので、皆さんいろいろカスタマイズして楽しんでいるようです。

また、ドライタイプのふりかけをお湯で10秒くらいふやかして、しっとりさせてから熱々のご飯にかけるとまた違った味わいがありますし、お米を炊くときに炊飯器に一緒に入れると炊き込みご飯のようにもなります。

例えば『うなぎふりかけ蒲焼味』を入れれば、おいしいうなぎご飯ができるんです。ドライタイプのふりかけは100円台の商品が多く比較的低価格なので、さまざまなアレンジが可能です」

今やふりかけは、ご飯にかけるだけのものではなくなっていたのだ。

■ふりかけベスト5とGP金・銀賞を紹介!

はんつ遠藤氏に、オススメのふりかけベスト5を聞いた。

1位は「うなぎふりかけ蒲焼味」(ニチフリ)

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
【第1位】うなぎふりかけ蒲焼味(ニチフリ) 140円

【第1位】うなぎふりかけ蒲焼味(ニチフリ) 140円

「うなぎを買ってこなくてもこれをかけるだけで、うな重を食べた気になると言っても過言ではありません。しかも、最近、濃厚さがアップしているんです。これを100円台で味わえるなんて奇跡です」

2位は「焼鮭ふりかけ」(セブンプレミアム)

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
【第2位】焼鮭ふりかけ(セブンプレミアム) 181円

【第2位】焼鮭ふりかけ(セブンプレミアム) 181円

「封を開けた瞬間に焼きさけの香ばしさが漂います。ここまでの商品は少ないと思います。ふりかけだけでなく、お茶をかけてさけ茶漬けにしてもおいしい。しかも、普通のふりかけの容量は25g程度ですが、これは58gも入っているのでお得です」

3位は「しげき」(三島食品)

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
【第3位】しげき(三島食品) 140円

【第3位】しげき(三島食品) 140円

「三島食品といえば赤しそ味の『ゆかり』が大ヒット商品ですが、このわさび味の『しげき』も人気です。その名のとおりすごい刺激なので、ほかの味と合わせて使うサポート的なふりかけとして欠かせない商品だと思います」

4位は「男梅ふりかけ」(大森屋)

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
【第4位】男梅ふりかけ(大森屋) 259円

【第4位】男梅ふりかけ(大森屋) 259円

「これはノーベル製菓の『男梅』とのりで有名な大森屋のコラボ商品です。甘辛い?油風味の味つけのりと男梅独特の梅の味のバランスが良く、一回買うとハマってしまうはずです」

5位が「のりたま」(丸美屋)

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
【第5位】のりたま(丸美屋) 130円

【第5位】のりたま(丸美屋) 130円

「ド定番です。

そのままでもおいしいですし、うなぎやサケなど、ほかの商品とかけ合わせることでおいしさが増すオールマイティなふりかけです」

国際ふりかけ協議会は、『全国ふりかけグランプリ』を開催している。2024年度の金賞は「サムライ贅沢ふりかけ」(神田工業)だ。松江氏が解説する。

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
【金賞】サムライ贅沢ふりかけ(神田工業) 960円

【金賞】サムライ贅沢ふりかけ(神田工業) 960円

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た

「これは王道のノーマルなふりかけですが、本当にのりにこだわっています。のりのクオリティが非常に高いんです」

銀賞に選ばれたのは「まごわやさしいふりかけ」(通宝)

「大豆、ゴマ、のり、ホウレンソウ、エビ、シイタケ、ヤマイモの7種類が入っています。素材にとてもこだわっているふりかけです」

おかずの一品としての需要で昨年は過去最高の売り上げを記録! 令和の「進化系ふりかけ」大ブームがやって来た
【銀賞】まごわやさしいふりかけ(通宝) 387円

【銀賞】まごわやさしいふりかけ(通宝) 387円

やはり、素材を生かしたふりかけは、人気も注目度も高いのだ。

そんな日本のふりかけが今、世界にも広がっている。

「訪日外国人観光客が『日本の味をお土産にしたい』ということで、ふりかけを買っていくんです。ひと袋100円台ですから、たくさん買っていろんな人に配っているみたいです」(松江氏)

「アメリカやヨーロッパは今、おにぎりブームなんですが、そのおにぎりと一緒にふりかけも注目されています。しかも、ご飯にかけるだけではなく、ドレッシングの代わりにサラダにかけたり、パスタにあえたりと、調味料のような使われ方もしているんです」(熊谷氏)

ふりかけは定番のドライ系、しっとりソフト系、企業コラボの再現系、素材にこだわった贅沢系などさまざまに進化している。そして、日本だけでなく世界中に広まっていたのだ。

そんなふりかけの魅力をぜひ味わってほしい。

取材・文・撮影/村上隆保 「ふりかけの壁」写真/北野エース提供

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