©2025「近畿地方のある場所について」製作委員会
表現はメディアと密接な関係がある。
マンガの原作を映画化したり、あるいは映画の物語をノベライズ化したものが往々にしてうまくいかないのはそのためである。これは怪談やモキュメンタリーについても同様で、そうしたメディアで極めて効果的にその力を発揮した物語表現が、ホラー映画という枠組みに必ずしもうまく収まるわけではない。
本作の原作はさまざまな記事や掲示板の書き込み、インタビューなどで構成された一種の書簡体小説である。映画版でもテレビの録画やVlog、配信ビデオなど、さまざまなメディアの映像がそれぞれ違う角度から恐怖を盛り上げる。
これらのパスティーシュ的な映像の完成度は非常に高く、映画のリアリティレベルを押し上げるものだ。
しかし、そういうメタ映像内の恐怖が「地の文」たる普通の劇映画パートに持ち込まれたとき、メディア間の齟齬がくっきりと浮かび上がってしまったように思える。怪談小説で恐ろしく感じる言い回しが、劇映画内で同様の効果を発揮するとは限らないのである。
STORY:行方不明になったオカルト雑誌の編集者。彼が消息を絶つ直前まで調べていたのは、幼女失踪、中学生の集団ヒステリー、心霊スポットでの動画配信騒動など、過去の未解決事件と怪現象。彼はなぜ消息を絶ったのか?
監督:白石晃士
出演:菅野美穂、赤楚衛二ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
上映時間:103分
全国公開中