AIの仕事ぶりをフィードバックして成長させる必要があり、導入後はむしろ手間が増えていることも
いよいよAI(人工知能)が社会の隅々まで実装され、"普通の人"の仕事や暮らしにまで浸透し始めた2025年。それは世の中をますます便利にする一方、速すぎる変化が戸惑いやあつれきを生んでもいる。
業務効率化のためAIを導入する業界が増えている。その中でも早い段階からAIを使って自動化を進めたのがコールセンター。メリットもある一方、現場にはさまざまな形でしわ寄せが来ていた!
【どのようにAI導入が進んだ?】急速に進化を遂げているAI。特に近年、AI導入が加速しているのがコールセンター業界だ。保険会社、通信事業会社、クレジットカード会社など、コールセンターを設置する各社では、自社開発のAIを使って業務の効率化を図っている。
しかし、そんな各社のAI導入に対して、ユーザーの〝イライラ〟は日に日に高まっているのだ......!
XなどのSNSでは「Q&Aコーナーでは解決できないから電話するのであって、それを定型文しか返してこないAIなんかで対応されたら怒り倍増」「AIで済む話ならわざわざ電話しないんだよな......」といった声が急増。
顧客満足度がだだ下がりしては本末転倒な気もするが、果たしてコールセンターへのAI導入の是非は?
導入が進んだ背景について、AI研究を専門に行なう北海道大学大学院の川村秀憲(ひでのり)教授はこう解説する。
「これまでは番号を押して目的の問い合わせ先までつなげる『電話自動応答システム』が長いこと使われていましたが、近年はAIの発展によって、チャットボットなどの『対話型システム』の導入が徐々に進んでいます。
AIは初期こそ人の対話能力には及ばなかったものの、その後学習能力を大幅に高めていき、今では人との会話も違和感なくできるほどまでに成長しました。
こうした革新的な技術はここ1年ほどで急速に発展し、コールセンターという対話型サービスとの親和性も高いため、各社がシステム開発に乗り出したのでしょう」
それでは、コールセンターでは実際どのようにAIが活用されているのだろうか? 保険会社のコールセンターで契約内容確認や保険金請求などの問い合わせを担当するAさんはこう語る。
「私が入社した4年前頃からAIが導入されています。顧客の目的に応じた適切な部署への誘導はもちろん、通話の自動文字起こしや要約、リアルタイムでのFAQ検索にスクリプト提示といったオペレーター支援業務などで生かされていますね。
また、その顧客がポジティブな感情を持っているのか、ネガティブな感情を持っているのかといった感情分析もAIが行ない、クレームを早期に予知する機能もあります」
続いては通信業界のコールセンターに勤めるBさん。主に携帯電話やネット回線に関する問い合わせ電話を受ける「インバウンド業務」を担当しているが、Bさんが入社した3年前にAIが導入されたとのことだ。
「導入当初はFAQの簡単な問い合わせに対応するチャットボットとして活用され、現在では料金確認や契約内容の変更など、定型的な業務をAIが担っています。シンプルな質問はAIが先に対応してくれるため、オペレーターは複雑な相談や顧客の感情面のフォローに集中できるようになりました」
【AI導入で逆にクレームが長引く?】しかし、そもそも電話で問い合わせる時点で「人に対応してもらいたい」という思いを持つ顧客は多い。BさんはAI導入のメリットを感じる一方で、顧客対応に手間取ることが増えたという。
「AIがまだ顧客の要望を正確に理解できないケースが多くあり、不便に感じています。顧客からすると『同じ質問を繰り返されて、なかなかオペレーターと話せない』という不満につながり、結果的に対応が長引くことが多々あるのです。
また、完全にAIに任せきりにできないため、オペレーターが逐一回答の精度を検証して改善点をフィードバックする必要があり、導入直後はむしろ手間が増えていました。現場ではAIを人間が補完する形での運用が求められ、完全な省力化には至っていないんです」
AさんもAI導入でかえって不便になった点についてこう話す。
「AIの要約機能や感情分析は完璧ではありません。AIが提示した情報をそのままうのみにすることはできないため、結局は人が最終確認する必要があり、二度手間に感じることも。
また、やはりAI対応が長くてオペレーターにつながりにくいという不満の声は増えています。
前出の川村氏によると、AIによる〝中途半端な業務効率化〟が起こっているそうだ。
「現在のコールセンターでは、問い合わせ内容を識別して自動解決する業務と、個別対応が必要な案件を各担当部署に振り分ける〝前さばき〟の業務をAIが担っています。
そうして効率化された分、人員は削減されて、個別対応できるオペレーターの人数が減っているわけです。そうなると、AI導入前よりも顧客が問い合わせてから人につながるまでの時間が長くなってしまうのは、当然考えられることでしょう」
AI対応で長時間待たされて怒りを募らせた客をなだめるため、オペレーターが工夫を凝らす必要も
また川村氏は「一定数不満が出てしまうのは当然のこと」としつつ、こう続ける。
「AI対応に不満を持つ人たちには何パターンかあると思いますが、例えば年配の方やITリテラシーが低い方がAIチャットボット機能などを使いこなせず、最も使い慣れている電話で解決しようとするケースはあるでしょう。
クレジットカードの不正利用が発覚したなどの緊急性を要する件で電話をする場合も、すぐにつながらない状況にイライラしてしまう人も多いと思います。
結局、AIの導入によって人員が削減されている今、人のサービスは相対的に価値が高くなっているため、ある程度融通が利かない状況は致し方ないと割り切る姿勢も大事かもしれません」
コールセンターのAI活用は今後どう発展していくのか。
「顧客はどうしても人間と話したいわけではなく、直面している問題を解決したいだけ。そのためAIがすべての問い合わせに完璧に対応できれば、顧客の不満やイライラは発生しないわけです。
ただ、まだAIにそこまでの能力は望めない。いわば今は、AIの完全対応が可能になるまでの〝過渡期〟とも言えるかもしれません」
そう遠くない未来のコールセンターでは、AIがなんでもすぐに対応・解決してくれるようになるのかもしれないが、われわれ顧客はいつまで我慢を強いられるのだろうか......。
取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio) 写真/Adobe Stock











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