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シーズンオフになると、来季のチーム作りに想いを馳せるのがプロ野球ファン。その大きな鍵となるのが監督の存在です。

名将と呼ばれる監督以外にも、実は世間的な評価は高くないけれど素晴らしい監督はいるんですよね。

モチベーションをあげてくれる監督(マネージャー)がいないとついついメイクをサボってしまう山本に、「いい監督」についてお話をさせてください。

「いい監督」の条件【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第45回

指揮官はチームの行方に大きな影響を与えますから、ファンは監督人事に注目します。監督のことを"チームを自由にできる「王様」"のように考えている人もいるかもしれませんが、実際には球団と選手・コーチの間に挟まれる中間管理職と言えるかもしれません。

結果を出さないと次のシーズンに席はありませんし、かといって結果を求めるあまり選手からの人望を失っては、現場はもちろんファンの士気も下がります。そう考えると、監督にもいろいろなタイプがあることがわかります。

・自分が責任を負うと公言する兄貴肌
・闘志をむき出しにする熱血漢
・選手と球団の折衝が得意なバランサー
・そつなく仕事をこなすマルチタイプ

名将というと、故野村克也監督、仰木彬監督などが思い浮かびます。みなさん本当に個性豊かな人たちでしたが、選手を伸ばして育てて、結果を出し続けてきました。

偉大な監督というのは、どんなに親しみやすく見えたとしても、選手との距離感があるような気がするんです。これは監督という仕事に邁進するための、ポーズとも言えるかもしれません。私は上司という立場になったことはないけれど、人を動かすときには心を鬼にする場面が必要なんですよね。もしかすると、孤独を感じることもあるかもしれません。

ただ、心の底から非情になれるかどうか、という分岐点がある気がします。思い出すのは、中日の山井大介投手が完全試合達成まで残り1イニングの場面で降板させた落合博満監督。その采配の是非を問いたいわけではなく、あの場面では監督の個性が如実に出ただろうということ。他の監督だったらどんな采配をしたのでしょうか。

名将というのは常に結果を出してきた人を指すわけですから、勝利を手にするためには手段を選ばないということもあります。ただ名将であることと、いい監督であることは違う条件のような気がしたんです。

ここで唐突に思い浮かんだのは、私の父でした。とあるメーカーで中間管理職として働く父は面倒見が良くて、自分の手から離れた仕事もつい気にかけていたそうです。それゆえ、現場の営業さんや技術者の方から愛され、「山本さんがやるなら手伝うよ」と言われていたと人伝に聞きました。

家で仕事の話をほとんどしない人ですし、家庭での言動を見る限り会社で威厳があったとは思えない父ですが(笑)、きっと人を気持ちよく働かせることができる上司だったのでしょう。

いい上司・いい監督というのは、数字や評価に表れない部分もあるのだと思います。

「いい監督」の条件【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第45回

この頃本当に寒い。
家でもあたたかくしてお過ごしくださいね

広島が緒方孝一監督時代、2016年から3連覇して黄金期を築きました。その前に監督を務めていたのが野村謙二郎さんでしたが、最高で3位とあまり立派な成績は残せませんでした。それゆえファンは不満に思っていたようですが、選手からは人望があったと聞いたことがあります。

ファンの中には、緒方監督が優勝できたのは野村監督時代の遺産もあったから、という意見もあるそうで、言うなれば中興の祖のようなもの。監督という仕事は、やはり結果だけで評価できない面もあるのだと思いました。

ヤクルト小川淳司監督も、私の中で偉大な監督の一人です。

今は黄金期を築いているヤクルトですが、小川さんが残したDNAもあるでしょう。現在はGMとして活躍されている小川さんは、球団からも高い評価をされていることがわかります。求められた職場で適切な結果を出して出世する、まさに野球界の島耕作といえるのではないでしょうか。

最近では栗山英樹監督やラミレス監督は采配も面白いし、選手からの信頼も感じます。なんだか名将になりそうな予感がします。あなたの応援するチームの監督が、いつか名将と呼ばれるその日まで応援を続けようではありませんか。

野球って本当に楽しいですね。それではまた来週。

「いい監督」の条件【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第45回

★山本萩子(やまもと・しゅうこ)
1996年10月2日生まれ、神奈川県出身。フリーキャスター。野球好き一家に育ち、気がつけば野球フリークに。
2019年より『ワースポ×MLB』(NHK BS1)のキャスターを務める。愛猫の名前はバレンティン

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作