あのニーチェやナポレオン、ショーペンハウアーなどの名だたる歴史的偉人をはじめ、芥川龍之介や太宰治、三島由紀夫など日本の文豪を虜にした詩人がいる。ゲーテだ。


 そんな彼は我々の人生に貴重な示唆を与えてくれる数々の著作、そして名言・格言を遺しているのだが、よく私たちが目にするネットの名言も、実はゲーテ的な思想を受け継いでいるんじゃないか…?と考えた新刊JP編集部。

 ということで、今回はメトロポリタンプレスから出版されている『ゲーテに学ぶ 賢者の知恵』(適菜収/編著)から、名言の巣窟でもあるインターネット上で話題になった名言とゲーテの名言の接点を見出してみた。


1)「明日やろうは馬鹿野郎だ」
 これはネット上の名言スレッドで支持を集めているこの言葉だが、2007年に放送されていたドラマ「プロポーズ大作戦」(フジテレビ)第5話の長澤まさみ演じる「礼」の祖父の言葉。これをゲーテ流に言い直すと・・・。

「三十分などチリくずのようなものだと言っている暇に、チリくずのような仕事を片付ければいい」(『ゲーテに学ぶ 賢者の知恵』p44より)

 なかなか辛辣だ。そしてこんな風にも言っている。「何をやるべきか、いかにやるべきか。そればかり探していたら、何もせずに十年がたってしまうだろう」。どんどん過ぎていく時間は、取り戻せない。


2)「今>>○○がいいことを言った」
 これはネット掲示板で使われる言葉。○○にはレス番が入る。示唆を与えてくれる発言があったとき、この言葉で発言の価値を認めるのだ。
名言じゃないじゃん!という声も聞こえてきそうだが、実はこの言葉すらもゲーテ流に言い直すことができる。

「私たちは自分の上にあるものを認めないことで自由になるのではない。自分の上にあるものに敬意を払うことにより、自由になるのだ」(『ゲーテに学ぶ 賢者の知恵』p75より)

 そう、すぐれたものには敬意を払うべきである。そして優れた良い発言があったら、それを認めないといけない。優れたものを認めないのは、社会の損失ではないだろうか。


3)「愛されなかったということは 生きなかったということと同義である」
 動画「2ちゃんネガティブ名言集」に掲載されているもの。やたらネガティブなこの言葉はルー・ザロメというドイツの著述家による言葉が原典となっている。同じドイツ人のゲーテもこの言葉と同じような詩を残している。

「―私たちはどこから生まれてきたか。
  愛から。
  私たちはどうやって滅ぶか。
  愛なきため」(『ゲーテに学ぶ 賢者の知恵』p204)

 愛がなければ私たちは生まれはしない。
愛がなければ私たちは滅ぶのだ。「愛しながらふたりで生きがいを感じること、それこそ天上の喜びと言わねばならない」(同p197)とまで言い放つゲーテ。事実、生涯はまさに恋愛の人生とも言うべきもので、『若きウェルテルの悩み』に代表される大失恋も経験している。

4)「恋はうぬぼれと希望の闘争だ。」
 これは名言サイト「世界傑作格言集」からの引用で、スタンダールの言葉。ブログやツイッターなど至るところで引用されており、恋愛の戒めの言葉として広く使われている。しかし、ゲーテはこの恋の希望を吹き飛ばすような名言を我々に残している。

「私が君を愛しても、君の知ったことではない」(『ゲーテに学ぶ 賢者の知恵』p192)

 嗚呼、片想い…。知ったことないよね、そうだよね。実は恋はうぬぼれだけだった。だって君の知ったことではないのだから。こう言い放つゲーテ、とてもカッコいい。


 いかがだっただろうか。
他にも様々な名言とゲーテの至言の関連性が見られたのだが、やはり恋愛ネタになると、ゲーテは大失恋しているせいもあるのか辛辣なことを言う。特に最後に紹介した言葉はまさに片想いの核心をついている。
 『ゲーテに学ぶ 賢者の知恵』は恋愛だけでなく、仕事や趣味、人生などの様々な格言を収録した1冊。長い歴史の中で活躍してきた偉人たちの心を揺さぶってきたゲーテ。悩みがあるなら、是非本書を読んで乗り越えて欲しい。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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