主人公の人気脚本家、35歳の高遠奈津は夫の抑圧に苦しみ、ついには夫と衝突、彼との田舎暮らしを捨てる決心をする。

 家を出た奈津は、それまでの抑圧の反動のように、自らの殻を破るようなセックスを重ねていく。


 もういちど誰かとめくるめく恋がしたい。性愛をともなう、相手のことを考えただけで、吐息まで乱れてしまうような。そう思う彼女の行き着く先は・・・。

 「おいしいコーヒーシリーズ」、映画化もされた「天使の卵」など多くの純愛小説を世に送り出してきた村山由佳氏。どちらかというと爽やかさを感じさせる同氏の小説は本作で大きな転換を遂げ、新しい境地に達した。

 今までの作品には皆無といってもよかった過激な性的描写が目立つゆえ官能小説とも呼ばれているが、大人の女性の生々しさ、生きる哀しさや寂しさなどありのままの女性の姿が見事に書きあらわされ、性的描写の多い作品に感じがちな不快感はない。

 発売後四カ月が経過したが、「人によって好き・嫌いの分かれる小説」と村山由佳氏も自身のブログで語っているとおり、読者の感想は賛否両論のようだ。

 今までは良くも悪くも期待を裏切らなかった村山氏。
 この作品は確かに小説家・村山由佳のイメージを変えるものだが、これで次回作にどんなものを発表するのか予想がつかず楽しみになった、と感じる人もきっと多いことだろう。
新刊JPニュース編集部)

◆『ダブル・ファンタジー』
著者:村山由佳
出版社:文藝春秋
価格(税込み):1779円
発売中
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