新入社員もそろそろ会社に慣れてきたころかもしれない。研修期間も終え、いよいよ社会人としての第一歩を踏み出す。
そんななかで、すぐに辞めてしまう新入社員もいる。今回は、将来を期待されていた2人のエピソードを紹介する。

“ザ・営業マン”タイプのはずだったが…

「この会社は体質が古い」大口叩いた新入社員が“入社5か月”で...の画像はこちら >>
 事務職として人材派遣会社に勤めていた永木裕子さん(仮名・30代)。会社では常に営業職を募集しており、ほとんどの新入社員が半年未満で辞めてしまう環境だった。

 そのなかでも、特に印象に残っている20代男性のKについて話してくれた。

「Kは中途採用で入社したのですが、元気で快活な“ザ・営業マン”という印象の人でした。新入社員は、入社初日から1週間は午前中に座学、午後から先輩社員に同行して営業の実務見学になっていました」

 Kは、座学も問題なく、休憩時には喫煙所で先輩社員たちと楽しそうに会話をしていたという。
永木さんは、「この人は続きそうだ」と確信したそうだ。そして、Kの初日の同行相手はN課長だった。

「N課長は、30代男性で社歴も長く、少し乱暴な口調でしたが面倒見もよく、とても頼りになる人でした。Kともお酒の話で盛り上がったようで、仕事が終わったら飲みにいこう!と声をかけていました」

 しかし、N課長とKが出発してから4時間後、N課長から予想外の連絡が入る。

「営業先近くの公園でタバコを吸っていたとき、Kがトイレに行ったそうです。しかし、そろそろ取引先に向かわなければならない時間になっても、Kが戻ってこなかったという連絡でした」

社用車ごと行方不明に

 N課長はKを待っていたのだが戻ってこなかったため、トイレを見にいったところ、Kはいなかったという。

「公園付近を急いで探し回ったそうですが、結局見つけられず、課長は1人で営業先に向かったとのことでした」

 その後、N課長からありえない報告を受けることに……。


「コインパーキングに停めていた社用車がないと焦っていました。社長に相談したところ、『社用携帯を持って社用車に乗って逃げたかもしれないから、すぐ警察に届けるように』と言われました」

 駅から遠い営業先に置き去りにされたN課長。その後、駅まで2時間歩いて電車に乗り、会社に戻ったとのこと。

「N課長は疲れ切っていて『怒りを通り越して悲しい』と言い、しょんぼりしていましたよ」

 警察に盗難届を提出してから2日後、車が見つかったとの連絡があったそうだ。

「発見されたのは、隣県との県境にある高速道路のSAでした。社用携帯は見つかりませんでした」

 社用車はガソリンがなくなっていたこと以外は無事だったが、警察を呼んだのは初めてだったと、永木さんは話す。
肝心のKは行方不明となり、失踪した理由は依然わからないままだ。

「女性初の幹部になる!」ビッグマウス系女子

「この会社は体質が古い」大口叩いた新入社員が“入社5か月”で辞めていくまで
フレッシャーズ女性
 山下未来さん(仮名・20代)が勤務する教育業界の中小企業では、毎年5~6人ほどの新入社員が入社する。しかし、1年経つころには半分くらいの人が辞めていくという。

 そのなかでも特に印象に残る、女性Aについて話してくれた。彼女は入社から約5ヶ月で退職したという。

「Aは、いわゆる“ビッグマウス系”で、『この会社は体質が古い!』『私が女性初の幹部社員になって、女性でもやれるんだということを知らしめたい!』などと大袈裟に話す人でした」

 Aの向上心そのものは確かで、先輩社員や幹部陣からも期待を寄せられていたが、現場赴任後1週間ほどして雲行きが怪しくなってきた。

「遅刻をしたり、顧客と積極的に関わらないような姿勢を見せたり、やや怪しい行動が目立っていました。
考え方も我が強く、なかなか曲げられないようなんです」

新入社員が大規模部署の責任者候補に

 とはいえ、そんなAが任されたのは、大規模部署の責任者候補だった。

「Aの評価は高かったので、新規出店をするタイミングでの人員配置でした。Aも赴任して2週間ほどはやる気満々だったのを覚えています」

 電話をした際も、「前よりいろいろ楽しいです!」と言い、山下さんは安心していたと話す。しかし、当初に抱いた悪い予感が当たってしまう。

「『自分の思うようにいかない』や『もっと私はできるはずなのに』と恨み節を吐くことが多くなっていきました。そして、7月に行われたエリアミーティングにAも参加したのですが、事例共有や取り組み発表をする際に、急に泣き出したんです。
そこからは、急転直下でした」

 7月末頃から出社しなくなり、お盆休み明けには退職が確定したとのこと。Aが退職したことは、社内に大きな波紋を生み、上層部の見解は割れていたと振り返る。

「新卒に大きな部署を任せたのが間違いだったのでは?」
「キャリアの場所を提供したにもかかわらず、ムダにしたのはAだ」

 そんななかで、山下さんは「私としては、最初にあれだけ大きなことを言っていたのに期待外れだったなと。正直、何ともいえない気持ちになりました」と締めくくった。

<取材・文/chimi86>

―[すぐに辞めた新入社員]―

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。
趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。