国際競争力に劣る日本。移住者が増加するなか、己の才覚と哲学を武器に成功する外国人経営者たちがいる。
日本人の既成概念を飛び越えて活躍する彼らの“日本で成功するための仕事の流儀”に迫った。
今回は、数々のヒット製品を手掛けてきた中国出身の起業家の流儀に学ぶ。

「スイカゲーム」を生んだ中国人起業家が明かす、成功するために...の画像はこちら >>
issin・CEO 程涛(ていとう)氏(中国出身)
中国河南省出身。東京工業大学卒の起業家。東大発ベンチャー「popIn」を創業。現在はissinCEO。日本で大流行したパズルゲーム「スイカゲーム」の開発者でもある

「スイカゲーム」数々の大ヒット製品を手掛けてきた起業家

「中国ではビジネスにおいてスピード感が命。黙々と考え込む時間はありません。迷ったら手と口と体を動かすことで道を切り開いてきました」

そう語るのは、中国出身の程涛氏(issin・CEO)。パズルゲーム「スイカゲーム」をはじめ、スピーカーとシーリングライトを一体化した「ポップインアラジン」、体重測定と健康管理が同時にできる「スマートバスマット」など、数々の大ヒット製品を手がけてきた起業家だ。

ヒットの起点は身の回りに。成功の秘訣は「n=1」

「アイデアの種を見つけたら絵や文章にする、近所の人でもいいから相談する、ヒントを持っていそうな人に会いに行く。アウトプットすることで、必ず大なり小なりの手がかりが見つかるんです」

対話の相手は「ChatGPTでもいい」と語る。


「スイカゲーム」を生んだ中国人起業家が明かす、成功するために「IQよりも必要なもの」
「オンラインエクササイズ同時接続者数のギネス世界記録」の賞状など
「最近、自分はミーティング前にAIとチャットして考えをまとめるようにしています。おかげさまで会議中のアウトプットも効率的になりました」

IQよりもAQ(逆境指数)、成功におごらず逆境に強くあれ

座右の銘は「居高峰而自謙 処低谷而自強(成功におごらず逆境に強くあれ)」だ。

「私自身、大学や大学院での試験に失敗した経験があり、起業しても最初の2年間は売り上げゼロ。やっと製品が売れても、災害で導入延期など逆境ばかりでした。目標に向かい追求していくタフさは日本でも変わらず大事だと思います。私も逆境に立たされるたびにこの言葉を思い出し、この先にこそ成功があると信じて耐えて解決してきました。ビジネスではIQより逆境を乗り越えるタフさを表すAQ(逆境指数)こそ重要だというのが私の持論です」

ヒットを生み出すにはデータや統計に頼りすぎないことも重要だと語る。

「スイカゲーム」を生んだ中国人起業家が明かす、成功するために「IQよりも必要なもの」
体重計と珪藻土マットが一体化したスマートバスマット。乗るだけで体重測定と健康管理が可能
「私が主軸にするのはn=1という、特定の個人の欲求や体験をもとに製品を考える手法。これまでヒットしたアイデアは自分の願いが起点でした。“体重計に乗るだけで健康管理できたらいいのに”など、身の回りの不満や違和感を意識化することが重要。ヒットの種はシンプルなんです」

家族の期待を背に中国を飛び出し数々の逆境に打ち勝ってきた

実際、ポップインアラジンは“家族の団らんを大切にしたい”、スマートバスマットは“家族の健康寿命を延ばしたい”という願いから生まれた。家族を第一に考えるのは中国発祥の儒教思想との繋がりも感じられる。

「スイカゲーム」を生んだ中国人起業家が明かす、成功するために「IQよりも必要なもの」
父母との写真。父の急死前の体重変化をきっかけにスマートバスを考案することになる
「中国にいた私の父は普通の公務員で月給は当時日本円で1万~2万円。しかも病で半身不随になってしまったのですが、それでも母は“家のことは任せて、日本で学びなさい”と背中を押してくれました。
父母をはじめとした家族への感謝の念は尽きませんね」

家族の期待を背に中国を飛び出し、日本での数々の逆境に打ち勝ってきた程氏。彼の次なる発明に期待だ。

程氏の仕事の流儀

①迷ったら手と口と体を動かす
②逆境の先にこそ成功があると信じる
③自分や家族を起点にアイデアを考える

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[外国人経営者に学ぶ[仕事の流儀]]―
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