こんにちは。結婚相談所「マリーミー」で代表を務める植草美幸です。
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)での特集をはじめ、各種メディアで見たことがある――なんて方もいらっしゃるでしょうか。
 マリーミーは設立15年となり、現在では年間約6500件もの結婚や恋愛にまつわる相談を受けています。これだけの相談を聞いていると、多くの問題はいくつかの類型に分けられ、それぞれに存在する鉄板の解決策が見えてくるものです。人間関係は十人十色のようで、対応には同工異曲の趣があります。

 リニューアルした本連載では、「結婚後のリアルな悩み」にお答えしていきます。ただ、結婚や同棲中の方だけでなく、お相手選びに迷いのある婚活中の方にも参考となるよう、手加減なしの“辛口”モードです。心してお付き合いくださいね。

「似たような学歴、同じような収入」の2人が結婚しても十分に起...の画像はこちら >>

“キラキラ”の裏で生じる子育ての闇

 2024年夏、「タワマン文学」こと、麻布競馬場さんの『令和元年の人生ゲーム』(文藝春秋)が直木賞の候補に選ばれたのは記憶に新しいかと思います。

「タワマン文学」の背景には、エリート層の“マウント合戦”や、その一形態ともいえる“教育ママ”問題があります。しかし、この層の存在自体は新しいものではありません。

 たとえば、『クレヨンしんちゃん』に出てくる、風間トオルくん。幼稚園児ながらに塾通いをし、本人にも「エリートになるんだ」という自覚があります。タワマン文学的なキャラクター造形とも評せられそうです。


 他方で、そういったコンテンツの広がりによって、負の側面にも注目が集まるようになってきたのではないでしょうか。教育ママ(パパ)を超えて“教育虐待”、教育費が嵩みすぎることで訪れる家計のピンチ。果てには精神を病んでしまう子供に、離婚の危機……。

“キラキラ”の裏で生じる子育ての闇は、事実存在するのです。今回はこうした「教育問題」が発生しやすい夫婦像のリアルについてお届けします。

「教育問題が発生する夫婦」は2パターンに分類

 教育問題が発生する夫婦は、大別して2パターンに分類できます。結婚前に行うべき判断・すり合わせを怠っているケースと、結婚後に必要なたゆまぬ努力を欠いたケースです。

 婚前から爆弾を抱えた状態になる夫婦とは、格差婚をした2人。婚姻・出産後の生活態度が問題になるパターンは、もっぱら夫の家庭不参加によって引き起こされがちなようです。

 ちなみに格差婚については、その“格差”の意味に応じてさらに2つにわけられます。

 まずは夫婦の出身家庭の価値観に格差がある場合。もう一方は、エリート高所得男性が、経済力にものを言わせて、妻となる相手に若さや容姿ばかりを求めて結婚した場合。後者は男性だけでなく、上昇婚志向の女性も共犯関係となっている状況が多いようです。


 各タイプがどのようにして教育問題に悩まされてゆくのか、順に解説していきます。

①出身格差婚

 似たような学歴、同じような収入、同世代の2人で結婚する、いわゆる“同類婚”であったとしても、その出自や価値観が近しいものであるとはかぎりません。

 どちらかが、必死に独学を重ねつつ奨学金を利用して大学をやっとの思いで出たタイプだったとします。反対にその相手は、内部進学や手厚い教育投資に守られながら悠々と学歴を得たタイプだとしましょう。

 この2人の教育についての価値観が、大きく異なっている可能性が高そうなのは簡単に想像できませんか?

 本人の意思と能力こそが重大で問題だと思いやすい前者と、親のサポートが保険をつくりうると思いやすい後者。家計に対する教育費のバランス感に大きな衝突が起きるばかりか、義実家からの援助や期待の大きさの違いによる軋轢が生じることもあるでしょう。

 交際中は2人の人生経験の違いをただ純粋にたのしむこともできてしまいますが、違いが意味することを掘り下げないままでは、結婚後の雲行きはあやしくならざるを得ません。

②本人スペック格差婚

 つづいて、当人たちの“スペック”そのものに格差がある場合です。こちらは先に出した例と同様に、​​女性上昇婚の事例のみ取り上げたいと思います。

 というのも、最近では女性が年上かつ経済力がある、男性側の上昇婚も存在しますが、この組み合わせでの教育問題エピソードは現状聞いていないからです。おそらくこうしたケースでは、家計を担う女性が教育方針についても先導しきるため、問題にならないのかもしれません。

 しかし男性が年上・高学歴・高収入で、女性が若い・容姿端麗・学歴および収入そこそこないし低めの2人となると、問題は起きやすいようです。

 こうした家庭において、妻は専業主婦として家庭のあれこれを一手に引き受ける立場になることがほとんど。くわえて、上昇婚のその名のとおり、生活レベルや身分に対する上昇志向が強いタイプの女性が、割合としてはやはり多いです。


 そうすると、自分の子供にも最上級の教育を施して、有名学校に入れたいという思考に傾きがちなのもやむを得ません。しかも夫は夫で、「自分の子供なんだから頭がよくて当然。そうじゃないなら妻(の教育、遺伝子)が悪い」と直接言うか匂わせるだけかはさておき、プレッシャーを与えもするでしょう。

 残念ながら、学業による成功経験のない側である妻が、子へエリート教育を行おうとしても、そう上手くいくものではないのは当然のこと。泥沼と化して、教育問題へと発展してしまいがちです。

③家庭不参加夫

 先ほどの女性上昇婚型においての教育問題では、「妻ばかりが教育を先導している」ことも一因であると述べました。このことと共通する部分があるのが、家庭不参加の夫に起因する教育問題です。

 ただし、このケースは「妻が先導する」というより、「妻が先導せざるを得ない」と言ったほうが的確かもしれません。夫婦ともにフルタイムでの仕事を継続しようとしているにもかかわらず、家庭への参加度合いに大きな差がある場合に問題が発生します。

 夫の家庭参画度が低いと、家庭の意思決定におけるパワーバランスが極端に妻へと偏り、ひいてはいびつな上下関係が生まれてしまうことになります。

 年齢や収入差や性格などから合意した役割分担をそれぞれが担うことそのものを、上下関係とはもちろん言いません。

 ここで言う上下関係とは、もはや夫婦の体をなしていない状態を指しています。仕事がありながら一人で家庭を回す妻にとって、もはや夫は相談したり頼れたりする相手ではないのです。


 したがって、「家計に大きく影響することだから」と夫が意見を出したくなっても――それが客観的に正しい内容であっても――、もう妻の耳には届かなくなっています。

 正しかろうと正しくなかろうと、妻の方針に従うほかない状態は、夫は自業自得でしかないとしても、子供のことを考えると厳しい事態であるかもしれません。

生育環境や価値観を聞いておくのは、おかしいことではない

 以上、教育問題が発生しやすい3つの夫婦像を紹介しました。

 ですが、「なにもかも似た者夫婦」でなければ問題を必ず抱えるというわけではありません。そうした相手しか認めないと思って婚活するのは茨の道であり、私としても推奨するつもりはありません。とはいえ、違いを許容できる範囲にはそれぞれ限界がありますから、その見極めは注意深く行うことをおすすめします。

 そのうえで、どんな人間同士であっても、2人の夫婦関係が長持ちできるかどうかは、コミュニケーションの質と量にかかっています。

 教育問題についても同じことですが、結婚前の確認・判断を適切にできていないと、取り返しはなかなか厳しい領域もあります。

 ですからどんなに遅くとも、交際期間中に相手との結婚および子育てを思い描くようになったら、お互いの生育環境や価値観をしっかり把握しておきましょう。

 なにも難しいことや不躾な話題ではありません。マリーミーの会員さんであれば、初対面である約1時間の「お見合い」の時点ですでに、ある程度は聞くように言っているほどのことです。

違和感なく相手の本音を掘り下げていくには?

 私がよく「逆時系列の法則」と言っている、質問の重ね方がミソ。相手の現在の職業などを起点にし、幼少期までの相手の人生を辿るのです。

「どうして今そのお仕事をしているんですか?」
「大学の専攻から専門だったんですね。
ではなんでそれを専攻しようと思ったんですか?」
「高校時代の趣味とか部活とかは関係ないんですか?」
「勉強一本だったんですか! じゃあ勉強はすごく頑張られたんじゃないですか?」
「親御さんの期待が大きかったんですね、応えられてすごい……。高校時代はともかく、小中では『もっと遊びたい!』といった反抗心とかはなかったんですか?」

 このような会話であれば、結婚相談所でなく、マッチングアプリなどでの出会いであったとしても、なんら変な会話ではないはず! むしろ、話題に悩むこともないので、今お相手を探している最中の方はぜひ覚えておいてください。

 自然であるにもかかわらず、ばっちり相手の生育環境と、それに対する思いまで把握できているのがおわかりいただけるでしょう。

 ここで自分の感覚と相違があれば深堀りすべきですし、溝がどうにも埋められないように感じたら、そのときには、よりストレートかつダイレクトに聞くことも辞さないように。

 また出会いたてだけでなく、交際期間中も折に触れてどんどんこの話題は深めていけます。ちょっとした思い出話をきっかけに、その背景事情と現在の価値観を聞く……。これこそがお互いを知り、ともに幸せな関係性を築いていくために必要な、大切なコミュニケーションです。

意見の対立を乗り越える姿勢は子供にとっても大事なこと

 結婚後も、このような「お互いをわかりあう」ための、実のあるコミュニケーションを続けていくことで、2・3ケース目のような事態はかなり避けられるはずです。

 子供の教育には時間もお金もかかりますから、お相手の主張には必ずなんらかの理由があるもの。それを相互に把握したうえでこそ、意見の対立を2人で乗り越えていけるものではないでしょうか。

 こうした姿勢は、夫婦間だけでなく、子供本人にとっても非常に大事なことです。2人のあいだでいくら問題がなくても、子供が置いてけぼりでは本末転倒ですから。


 夫婦間に教育問題が起きたとき、子供こそが一番の被害者となってしまいます。わが子を大切に思う気持ちが逆効果になってしまうことがないよう、夫婦2人でしっかりコミュニケーションを取りつづけてください。

<TEXT/植草美幸>

【植草美幸】
結婚相談所マリーミー代表取締役、恋愛・婚活アドバイザー。 1995年にアパレル業界に特化した人材派遣会社エムエスピーを創業。そこで培ったマッチング能力・人材発掘力を生かし、2009年に結婚相談所マリーミーを設立。日々カウンセリングを行いながら、セミナーの開催、テレビやラジオへの出演など幅広く活動中。著書に『ワガママな女におなりなさい 「婚活の壁」に効く秘密のアドバイス』(講談社)、『モテ理論』(PHP文庫)など
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