今回は、本来ならば性的接触がないはずの「リフレ」で売春行為を繰り返す女性を描いた問題作『#違法ガール 履歴書に書けない私の裏バイト』(新潮社)の原作者、阿部ベア氏にインタビューを敢行。普段は芸能ライターとして活躍する阿部氏が見た、リフレの闇とは――。
現役リフレ嬢や有名リフレ店からも反応が
――『#違法ガール 履歴書に書けない私の裏バイト』の反響はいかがでしたか。阿部ベア(以下、阿部):「こいつ、リフレのことなんもわかってねぇ」といった、批判的な意見が目につきましたね。ライターの仕事では、そういうコメントをもらうことがほとんどないので、正直「これは(ネットでの誹謗中傷を理由に)自殺してしまう人もいるだろうな」と感じました。
一方で、実際にリフレで働く女性の「リフレを否定的に描かないでくれたのが嬉しかった」といったコメントや、毒親にまつわるエピソードにはX上で多くのいいねがつくなど、ポジティブな反応もたくさんいただきました。また、連載が始まった瞬間から、とある有名JKリフレ店より「コラボしましょう」というオファーをもらいました。こちらは丁重にお断りしましたが……(笑)。
芸能記事と漫画原作は「野球と書道くらい違う」
――そもそも、芸能ライターの阿部さんが漫画原作を書くことになったきっかけは何だったのでしょうか。阿部:もともと他社から漫画原作のオファーをもらっていたのですが、諸事情で掲載が難しくなり、同時進行でお話をいただいていた『くらげバンチ』(新潮社)で書くことになりました。自分はもともと芸能スキャンダルを追う仕事をしていたので、まさか漫画の原作者になるとは思いませんでしたね。
――芸能記事を書くことと漫画原作を書くことに、どのような違いを感じましたか。
阿部:野球とサッカーくらい違うというイメージだったのですが、いざやってみると野球と書道くらい違いました。具体的に言うと、これまではライターとしてひたすら事実を突き詰めてきましたが、漫画は事実を書きすぎても問題になる。
リフレが「売春斡旋所」に。未成年がいる店も…

阿部:もともと明確なモデルがいて。その女性は男性アイドルの追っかけをしながらリフレに勤めており、当初はその男性アイドルのネタ元(情報提供者)としてやり取りをしていました。その後、リフレという場所が売春斡旋所のようになっているという話を彼女から聞き、興味を持つようになったんです。取材を進めていくうえで、本当に未成年がいる店を見つけてしまったときは驚きましたね。事実をありのままに書くと個人や店舗が特定できてしまうから、具体的なエピソードは改変していますが、あくまで取材で得た事実をベースに描いています。
信頼関係を築くため、“地雷客”の話を…
――さまざまな事情を抱える女性たちを取材するときに、意識していることがあれば教えてください。阿部:同じ目線に立って、信頼関係を築くことですかね。そのために普段から10~20代の女性が好きなものについて情報収集して、できるだけ向こうが理解しやすい会話を心がけています。あと、リフレやメンズエステで勤める女性とは、よく“地雷客”の話で盛り上がります。
――地雷客になってしまうきっかけは何なのでしょうか。
阿部:少しでも希望を持たせると、それにすがってしまう人がいるんですよね。「こんなに可愛い女性が相手をしてくれた」「この女性がこんなことをしてくれるのは自分だけかも」と……。でも、本作に出てくるような女性も、地雷客も、僕たちと同じ世界に生きている。特に男性は一万円もあれば電話一本でそういうお店に行けてしまうので、僕自身もまったくの他人事ではないと思っています。
違法売春の入り口はSNSのDM
――昨今、若年女性の違法売春が社会問題化していますが、これについてどう思われますか。阿部:スマホの影響は相当大きいんじゃないでしょうか。古くはテレクラがありましたが、女性があそこに電話をかけるハードルってかなり高いと思うんですよ。でも、今はSNSのDMでそういう誘いがいくらでも流れてくる。お金が必要だったり、嫌なことがあって自暴自棄だったり、タイミングがうまくハマってしまうと、簡単に違法売春の世界に足を踏み入れてしまう。
――本作を通じて世の中に伝えたいことはありますか。
阿部:特にありません。芸能ライターを始めたばかりのころ、先輩に「お前の意見は誰も聞いていない。お前が自分の意見を言うのは百年早い。お前の意見は原稿に入れるな」と言われました。だから自分としては、とにかく丁寧に取材したものを淡々と出して、その上で面白い漫画にしたいと考えています。作者の意図は入れず、受け取り方は読者の皆さんにゆだねる感じ。
たとえば、本業で芸能人のスキャンダルを出すときも、別に僕は「コイツは悪いことをしているから裁いてやろう」とは決して思っていません。「こういう人がこういうことをしました」という事実をただ伝えるだけ。記事の中では悪いことをしている人のように表現する場合があるものの、自分がその人の立場だったら(不祥事を)やってしまうかもしれませんし。
――最後に、読者の方々へメッセージをお願いします。
阿部:これ、必ず聞かれると思っていたのですが、何も思い浮かばなくて(笑)。インタビューを受けるのって難しいですね。えっと、今回はリフレ編をお読みいただきましたが、今後もっとディープな業界がたくさん出てくるので、お楽しみに……という感じでいかがでしょうか(笑)。
<取材・文/渡辺ありさ>


















































【渡辺ありさ】
1994年生まれ。フリーランスライター兼タレント。ミス東スポ2022グランプリ受賞。東京スポーツ、週刊プレイボーイ、MEN'S NON-NO WEB、bizSPA!フレッシュなどで執筆。隔月刊漫画雑誌「グランドジャンプめちゃ」にて連載中の漫画「スワイプ」の原作も務める