中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。

 ドミノ・ピザジャパンの親会社であるドミノ・ピザ・エンタープライゼスが日本の172店舗を閉鎖すると発表しました。国内約1000店舗のおよそ2割。

 2023年には出店強化宣言をして2000店舗を目指すとしていました。一変したドミノ・ピザに何が起こっているのでしょうか?
 
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今後は「効率重視型の小規模店」が増加傾向に

 2023年10月にオープンした江東古石場店で、国内1000店舗を達成したドミノ・ピザ。その際に事業戦略発表会を行っており、通常よりも小規模の店舗を開発。営業時間も半分程度とする省オペレーション化を掲げ、新規出店の約4割をこの効率重視型の小規模店にする構想を明らかにしていました。

 2022年にドミノ・ピザジャパンはマーティン・スティーンクス氏をCEOに迎えています。スティーンクス氏は学生時代にドミノ・ピザオランダに配達員として入社し、卒業後に店長になったという現場経験が豊富な人物。ドミノ・ピザ・エンタープライゼスの中で最も大きなマーケットである日本の事業展開に意欲を燃やしていました。

 小型店の発表にあたり、コンビニに行くような感覚で使ってもらえるようになればいいと述べています。

国内のピザ市場は「2023年に縮小」

 コロナ禍の2020年から2022年にかけてピザ市場は盛り上がりを見せていました。ピザ協議会によると、2021年度に初めてピザ市場が3000億円を突破。2022年度は3278.9億円となって過去最高を更新しました。しかし、2023年は3237.5億円であり、1.7%減少してしまいます。


 Web上の検索需要を把握することができるGoogleトレンドで「ドミノピザ」を調査(2004年から現在まで)すると、2022年7月に最高値である100に達しましたが、そこからは下降気味で2024年12月は66。3割以上の検索需要が失われていることになります。

「ピザ」というキーワードもやや似た動きをしており、2020年5月に100となって2024年12月には74まで下がっています。

 スティーンクス氏はピザショップをコンビニに行くような感覚で使ってほしいと語っていました。“行く”と表現していることから、デリバリー市場が下火になることを織り込んでいたように見えます。そしてそれは、経営効率を高めたいドミノ・ピザにとって歓迎すべきことだったはず。一方で、リモートワークは定着してテイクアウト需要は残ると読み、小型店の出店を強化することで、コンビニ感覚でピザを買いに来る顧客の来店に期待したのではないでしょうか。

 しかし、ピザの需要そのものが縮小し始めてしまったのです。ドミノ・ピザジャパンのCEOとして早く成果を出したかったはずですが、その目論見は外れてしまったのでしょう。今回の大規模閉鎖がそれを物語っています。

セブンイレブンがまさかの殴り込み

 強力な競合も誕生しました。

 コンビニ大手のセブンイレブンが、焼きたてのピザを最短20分で配達するというサービスを開始。2024年8月に対応店を200店舗に広げる計画を発表しました。
7月時点で東京都や神奈川県など首都圏約30店舗で導入、好評を得ていました。マルゲリータのピザは780円で、配送料は110~550円。コストパフォーマンスの高いサービスが広がり始めています。

 セブンイレブンのピザが成功すれば、強力かつ広大な配達ネットワークが構築されることになります。商品開発力もあるため、このサービスがヒットすればメニューの拡充にも期待ができるでしょう。サービスの核となる「7NOW」はセブンイレブンの商品が注文できるため、豊富なサイドメニュー、ドリンクも選択することができます。

 ドミノ・ピザが大量閉店する大部分は直営店であると報じられています。市況の悪化や競合サービスの台頭によって不採算店が目立つようになったのでしょう。

弁当の販売で“日常食化”を狙う

 ただし、ドミノ・ピザも反転攻勢に出ています。ピザを溶け込ませようとしているのです。

 2025年1月、有明ガーデン内にオープンした新たなフードエリア「ARIAKE FOOD STAGE」に新店舗を出店しました。ドミノ・ピザ初のフードコート店です。
イートインとテイクアウトだけの業態であり、デリバリーは行っていません。

 この店舗の看板商品といえるのが「ピザBENTO(ベントウ)」。直径15センチメートルのピザに、フライドポテトがセットになったもの。このセットは500円台から購入することができます。実はこの商品、「マイドミノ」としてこれまでも販売していました。認知度が低かったために2024年7月にリブランド。日本人に親しみのある弁当へと名前を変えました。このネーミングに、ピザを日常食にしたいというマーケティングの狙いがよく表れています。

 ドミノ・ピザは商品開発において、宅配に適しているかどうかを先行して考案しています。しかし、フードコートへの出店強化や日常食化を狙うのであれば、開発姿勢が変わることも十分ありえるでしょう。そうなれば、ドミノ・ピザの商品展開も変化するはず。

 大規模な閉店を行って収益性を高めた後は、今とは別の形で出店を強化するかもしれません。


<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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