東京の上野でスナックを営む大谷麻稀です。会社員を辞め、未経験の水商売で独立してから早2年。
日本屈指の飲み屋街で、昼も夜もさまざまな人間模様を見てきた私が、今夜のお酒がちょっぴり美味しくなるコラムをお届けします。
「ママ、またダメだったよ……」

深夜3時、ふらりとやってきた常連さんがグラスを傾けながら愚痴をこぼします。

「(女性と)相席できる店に行ったけど、ブスだけどこっちが気遣って話しかけてやったのに、あいつらブスのくせに無視してきた」

ーーまたこの話か……!

「そもそも“いい女”は来ない」20代スナックママが明かす「相...の画像はこちら >>

相席のお店で理想の彼女ができる確率って低くない?

相席系居酒屋といえば、2014年、私が大学1年生の時に、当時勤めていた渋谷のIT企業のすぐそばに1号店がオープンした記憶が。それから10年以上が経ち、久しく聞かなかったこのワードを、最近になって再び耳にするようになりました。なぜなら、この常連さんが婚活場所として選び、使い始めたから。

「いつになったら若くて美人な彼女ができるんだ……」

この会話、もう何度目でしょう。40代後半の彼は、初対面の女性を「ブス」と言い放つのはいかがなものかと思いますが、確かに彼の容姿は悪くありません。

「前回も言ったけど、相席のお店で理想の彼女ができる確率って低くない?」

そんな私のツッコミに、「女の子だって彼氏が欲しくて来てるんじゃないの?」と返す彼。 毎度、敗戦のヤケ酒で記憶をリセットしてしまう彼のために、ここに何が問題なのかを書き記しておこうと思います。もちろん、同様の失敗を積み重ねている読者の方にも有用な内容であることは間違ないはずです。

①そもそも“美人”は相席系の店に来ない

悲しいかな、これが現実です。マッチングアプリがいかがわしいものと思われていたのは昔の話。今では4人に1人がアプリ婚とも言われ、なんならアプリのほうが効率的に出会える時代になりました。

アプリなら、自分の生活圏内で、理想の年齢・職業・趣味・容姿を事前に相互審査した上で顔合わせができます。
独身証明や年収証明が必須のサービスもあるほど。

一方で相席系のお店はどうでしょう? どんな男性が来るのか、何も情報がないまま席に着きます。既婚者が紛れ込んでいるかもしれないし、20歳の女の子の前に50代のおじさんが座ることもある。場合によっては、素人キャバクラと勘違いしているかのようなセクハラを受けることも。

同じ出会いの場といっても、ミスマッチの可能性が桁違いです。美人は出会いに困っていません。そんな彼女たちが、どこの誰かも分からない相手と相席し、1ミリも興味が湧かないのに愛想笑いという苦痛な時間を過ごすリスクを冒す理由がありません。

②タダ飲み・タダ食いが目的

では、どんな女性が相席のお店に通うのか? お察しの通り、出会いがない人、もしくは日常生活で男性にご馳走してもらえない人です。相席系の居酒屋やバーは、女性は基本無料。何時間いてもタダ飲み・タダ食いができる。

ただし、そこで提供されるのは最低グレードの冷凍食品のオンパレード。「俺も無料なら通うわ~」と思うかもしれませんが、興味の持てない男性(男性なら、ご自身のお母さんより年上の女性を想像してみてください)と時間を過ごし、微妙な食事でカロリーを摂取する。美人がわざわざ選ぶ環境ではないでしょう。
彼女たちには、自分のタイプかつ美味しいご飯をご馳走してくれる男性がたくさんいるのですから。

確かに、暇つぶし&飲み代節約目的で来ている若い子の中には可愛い子もいるかもしれません。でも、アラサーになってもこの手の飲み屋に通う “いい女” は、いないわけです。

③ガチ恋目的の男性に引いている

もちろん、本当に出会いを求めて来ている女性もいるでしょう。でも、無料の女子会気分で来ている子が多数派の中、男性が「運命の出会い」を求めて必死になったり、「せめてLINE交換だけでも!」と焦ったりすると、「こんなところで本気の恋愛を探してる時点でナシ」と非モテ格下認定されるわけです。そりゃぁ、話しかけても無視される。

④“すぐ連れ出せる女性”を特別視しないこと

ごく稀に、「この後カラオケ行かない?」などの誘いに乗ってくる子もいるでしょう。でも、彼女たちはよほど嫌な相手でなければ、誰の誘いにも乗っています。

彼女たちは夜遊びが好きで、コミュ力も高い。あなたが「仲良くなれた!」と思っても、彼女にとっては “夜遊び仲間の1人” でしかないかもしれません。「僕と恋愛する気あるの?」といった面倒くさいムーブをした時点で、あえなくLINEをブロックされるでしょう。

さらに、お店側は女性を集めるためにQUOカードやディズニーチケット、高級ドライヤーなどのプレゼントを用意することも。つまり、無銭飲食どころか “お小遣い稼ぎ” の場として来ている女性もいるのです。

結局、期待しすぎるのは危険

「相席系のお店は彼女を作る場所ではない」

こう言うと、「でもワンチャンあるかもしれないし」と返されるのですが、ワンチャン狙いで通うのは “ギャンブル” です。
仮にあなたが「その場限りの飲み会を楽しみたい」なら、ぴったりの業態です。初対面の人と飲むのが好きなら、いい時間を過ごせるでしょう。

でも、「本気の恋愛」を求めるなら、期待しすぎるのは危険です。

「ママ、やっぱダメだったわ……」

そう言って今夜もヤケ酒をあおる常連さんを見ながら、私は「そろそろ気づいて欲しいな……」と思うのでした。

<TEXT/大谷麻稀(まきぱん)>

【大谷麻稀(まきぱん)】
上野にてスナックを経営する28歳。大好きなお酒にコミットするべく鉄道会社を退職し、ほぼ未経験の世界へ転身。TOEIC910取得。趣味は海外一人旅。
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