ぽっちゃり体型を自身の個性・武器として活躍する女性インフルエンサーは少なくないが、3桁体重の女性たちは日常生活でどんな「あるある」や「悩み」があるのか。
今回は、名古屋のラウンジやキャバクラで長年働いてきた、あみさん(126キロ)にインタビューを敢行。体重100キロの大台を突破した経緯や半生を紹介する。
実はJKで、来年から女子大生に…
――今回リモート取材になりましたが、あみさんはどちらのご出身ですか?あみ:生まれは宮崎で、愛知県で育ちました。いまは大阪と名古屋を行き来する二拠点生活を送っています。
――現在のご職業は?
あみ:今は女子高生をやらせてもらっています。43歳、JKでーす。
――それは、定時制高校みたいなところで勉強しているってことですか?
あみ:「N高」ですね。この4月からZEN大学で女子大生になります。
――なるほど……。
「130キロが見えてくる体重」の真相は?
――事前情報では「130キロが見えてくる体重」とのこと。差し支えなければ現在の正確な体重をお聞きしても?あみ:126キロですね。旦那公認の24歳の彼氏に甘やかされて、この2年で20キロ以上太ってしまいました。
――旦那公認の24歳の彼氏?
あみ:ポリアモリーってやつですね。ちなみに私はバツ2で、現在の3人目の旦那はゲイです。
――ツッコミどころが多すぎて、ちょっと手に負えないんですが……。
あみ:あまり脇道に逸れないように気をつけます(笑)。2番目の旦那が今の旦那に惚れて、みんなで旅行した話とかもあるんですけど。
18歳のときに出産を経て、70キロに突入
――あみさんは昔から身体が大きいほうでしたか?あみ:10代のころから周りの女子よりぽっちゃりではありました。水泳をやっていた関係で肩幅もあり、胸も大きかったものですから。だいたい50キロ前後の女子中高生が多いと思うんですが、10代の頃の私は50キロ後半くらい。18歳で一人目の旦那との第一子を出産し、70キロに突入しました。
――けっこう複雑な家庭で育ったと、事前にお聞きしていましたが……。
あみ:そうですね。中学卒業と同時に一人暮らしを始めて、当時は定時制高校に通いながら働いていました。
“ぽっちゃり不毛の地”で狭く深い需要にハマる
あみ:10代後半から20代前半にかけては、女性専用エステや指圧マッサージ店、スナックなどの飲み屋と、いろんな仕事をしました。私の指圧の施術は「体重がしっかり乗っている」と、男性客からわりと好評だった記憶があります。25歳で名古屋・錦のラウンジで働き始めるまでは、ずっと70キロ台でした。――ぽっちゃり系に特化したラウンジで働いていたんですか?
あみ:私以外はみんなモデル体型でした。名古屋ってぽっちゃり店が育ちにくい土地柄で、現在に至るまで名古屋のぽっちゃりは虐げられており、大阪や東京へ出て行く人も多いです。最近もぽっちゃり系の店ができたと思ったら、すぐに潰れていました。
――それはまたなぜ……?
あみ:自動車工場などで働いている男性が多く飲みに来るので、周りの目が気になるみたいです。もちろん、なかには堂々とぽっちゃり好きを公言する男性もいますが、少ないです。
――横の繋がりが強くて本音を出しにくいと。
あみ:あと、名古屋は“三大ブス”みたいな風評があって、女性と飲むお店とかはスタイルで勝負しがちなんですね。盛り髪で頑張っていたキャバクラとかもありましたけど、着物姿のママがいるようなラウンジなどは基本的にはモデル体型がウリで、実際にモデル出身の女性もけっこう働いていました。
――あみさんは数少ないぽっちゃり枠だったんですね?
あみ:深く狭い需要にバチコーンとハマって、たくさん飲み食いさせてくれる太客はできやすかったです。
50キロの減量に成功、しかし売り上げも激減
あみ:そうして甘い汁を吸いながら30代に突入した頃、母が大企業に勤める15歳下の男性と再婚し、イタリアで結婚式を挙げるとのことで、半年で98キロから50キロ減量しました。あまり親子仲が良くなかったからこそ、式に呼んでもらえたことが嬉しくて。――女子高生1人分の体重が消失した計算ですね。
あみ:やはり、一生残る写真だと思ってドカンと。痩せるのなんて“おちゃのこさいさい”ですよ。でも、スリム体型になったら、それまでの私に付いてくれていたお客さんが離れて売上激減してしまったという。
――その代わり違うタイプの男性からモテそうですけど。
あみ:浅く広くはモテたんですが、相手の好き度合いは低い感じがしました。新規の流入が増えたぶん、厄介ごとも増えただけというか。私も痩せている時の自分があまり好きじゃなくて。写真もあまり残していないんですが、キッツい性格悪そうな顔をしているんです。
「二度と痩せない」という誓いを立てた
――ふくよかな女性に親しみを覚える男性は意外と多いでしょうね。あみ:ぽっちゃり女性は基本的に愛嬌のある子が多いんですよ。「二度と痩せない」という誓いを立て、再びぽっちゃりの道を進むようになってからは、私も自然と笑顔が常に溢れている感じがします。「痩せたら楽しい」「人生変わる」みたいな話って、個人的には幻想だと思います。
――ぽっちゃり女性は心に余裕があるんでしょうかね。
あみ:割り切っているぽっちゃりは、そういう子が多い気がします。ただ、病んでいる子も一定数いますね。でも、ぽっちゃり女性を食い荒らす、とんでもない男性も一部いて。そこはちょっと糾弾したいんですけど。ぽっちゃり界の●リチン四天王みたいな輩がいるんです。まあ、それは東京のぽっちゃり界隈の話ですね。
――地域性で言うと、東京のぽっちゃり人気ってどうなんですか?
あみ:東京は、ぽっちゃり系の大きなイベントもいっぱいあって盛り上がっていますよ。「プールデブダンス」とか超おもしろいので、ぜひいつか取材してほしいです。
ぽっちゃり界隈で「一番ウケが良いのは約80キロ」

あみ:ちょっとやりすぎました。
――減量後、どれくらいの期間で100キロに?
あみ:8~9年かかっています。“みけぽ”までの道程は、さすがにちょっと遠かったです。ちなみにぽっちゃり好きの間でも一番ウケが良いのは80キロぐらいですね。みけぽになると需要はより狭く深くなります。
――あみさんは体重が原因で心ない言葉を浴びせられたり、悩んだりした時期はなかったんでしょうか。
あみ:うーん、心ない言葉かぁ……。街を歩いていて何か言われているような感覚もあるんですが、全く気にしていないですね。ぽっちゃり界でも特殊な生い立ちなので、他のぽっちゃりの方とはまた違うかもしれません。
――複雑な家庭で育った影響で、一種の自己防衛的なマインドが身に付いている、と?
あみ:実の両親から傷つく言葉を浴びせられても、「見る目がなくて可哀想」と思いながら、前向きに生きてきたくらいなので。
<取材・文/伊藤綾>





【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii