世界的プログラマーとして知られる中島聡氏は独自の投資哲学で成長する銘柄を見極める投資家でもある。中島氏が説く「100倍になる株の見つけ方」とは? その投資眼に迫る!
「メタトレンド」とは?
「もし10年前にエヌビディアに100万円投資していれば……」昨今の急騰を目の当たりにし、そう悔やむ投資家も少なくないだろう。だが、そんな“たられば”を現実のものにした投資家がいる。
米マイクロソフトの元エンジニアで、’14年にエヌビディアに投資して30倍、さらに’04年にはアップルに投資して90倍という驚異的なリターンを叩き出した中島聡氏だ。
その投資手法をまとめた著書『メタトレンド投資』が発売前から話題になっている中島氏に、10倍株・100倍株をゲットする秘訣を聞いた。
「メタトレンドとは、社会構造の激変や産業の再編、テクノロジーの飛躍的な進歩などが生み出す時代の巨大なうねりのこと。そのトレンドを牽引する企業に長期投資すれば、株価が大化けすることも夢ではありません」

メタトレンド投資はエンジニアだけの特権ではない!
その投資眼の鋭さを示すのがまさにエヌビディア株への投資。’14年当時、テック業界では「AIは確実に伸びそうだ」と噂されていたという。きっかけは’12年に「AlexNet」というニュートラルネットワークのモデルが画像認識コンペで圧勝し、AIの歴史を塗り替えたこと。そのモデルにエヌビディア製の半導体が使われており、「AIブームが本格化すればエヌビディアは大きく伸びる」と直感。
早い段階で購入を決断した。ただ、メタトレンド投資は最新情報に触れられるエンジニアの特権ではなく、多少情報のキャッチが遅れても十分に利益を得られる手法だという。
「私がエヌビディアに投資したのはAlexNetが優勝した2年後。もっと言えば、ChatGPTが登場しAIブームは誰の目にも明らかになった’22年末に投資を始めても、そこから株価は約10倍に上がっているわけです」
AIの進化は登山に例えればまだ3合目

「AIは社会やライフスタイルを一変させるポテンシャルを持っています。今はまだ作業の一部が効率化された程度。本番はこれからです」
そのAIというメタトレンドのなかで、中島氏が「第2のエヌビディア」として注目するのが、半導体メーカー「ブロードコム」だ。
「グーグル、メタ、アマゾン、マイクロソフトなどが独自のAIチップを作っており、将来的にエヌビディアを脅かすかもしれません。その際、実際の製造を請け負う相手として有力なのがブロードコムです」
AIを活用した新薬開発が進む!?

「DNAや塩基配列からタンパク質の立体構造をAIで予測できるような技術が生まれ、新薬開発が加速すると言われています。
まだ実用段階には至っていませんが、今後5~10年のうちにAIを活用した新薬が多数登場するでしょう。すると、オラクルのようなAIインフラに投資している企業や技術を持つグーグルといった企業と提携して新薬開発に取り組む製薬会社は注目です」
特にオラクルのCEOは「AIを活用した医療は大きく進歩する」と語っており、その分野では最注目だ。
“儲かりそうか”より“推せるか”
中島氏の注目銘柄をそのままマネしてもいいが、メタトレンド投資の真骨頂は、「投資が推し活になること」だとか。「私が重視するのは、“儲かりそうか”より“推せるか”。企業の製品やサービス、CEOをアイドルやキャラのように推せるかが私の投資基準です」
一般的に、プロのアナリストに個人投資家は勝てないと言われるが、推しへの投資なら勝機があると胸を張る。
「推し企業」はどんなジャンルでもOK!

実際、私が10年前にテスラに投資をした際もアナリストの評価は散々でした。なにより、推し企業なら株価が急落しても一喜一憂せず、長期保有がしやすいのです」
推しの対象は、ITに限らない。どんな分野でもOKだ。
「私のポートフォリオがIT企業中心なのは、この業界で働いているから。
ただ、この手法の唯一の難点は、推しの企業に愛着が湧きすぎて売りにくいこと。私もエヌビディアやアップルで大幅な含み益がありますが、まだ利益確定ができていません(笑)」
自分なりの「推し先」を見つけ、メタトレンドの巨大な流れに乗りたい。

米マイクロソフト本社でWindows95・98の基本設計を手がけ、「右クリック」などの機能を実装し世界に普及させた。新刊『メタトレンド投資 10倍株・100倍株の見つけ方』(徳間書店)が2月28日発売
取材・文/加藤純平(ミドルマン)
―[マネー(得)捜本部]―