そんな外国人観光客について、苦い思いをしているのがタクシー運転手の渡辺宏明さん(仮名・30代)だ。都内でタクシー運転手を務めている田中さんは、外国人利用者の対応に苦しめられているという。
言葉が通じない人と密室に長時間いるのは…
「ここ最近では、週末は半分以上が外国人のお客さんということもある。乗ってくるのは、中国や韓国などアジア系から、アメリカやヨーロッパの人までさまざま。いまでは、多言語に対応しているスマホアプリを入れて、なんとかコミュニケーションをとっている状態です。ただ、すべての言葉がわかるわけではないし、やっぱり外国人のお客さんだと日本人よりもストレスはかかりますね。言葉が通じない人と密室に長時間いるのは苦痛ですよ」値切ろうとする外国人にうんざり
とはいえ、外国人だからといって乗車拒否するのはご法度だ。渡辺さんも、嫌だと思いながらも毎日のようにさまざまな人種の観光客を目的地に運んでいるそうだ。しかも、渡辺さんが所属するタクシー会社はインバウンドビジネスに積極的で、次々とドライバーに外国人をあてがってくるとか。その中で、日本人の客ではあまり起きないようなトラブルも。「タクシー料金を値切ろうとするんです。特にアジア系のお客さんが多いのですが、1500円くらいの乗車なのに500円をプライスダウンしろと言ってくる人もいる(笑)。個人タクシーの場合は、長距離移動のときに端数をまけることもありますが、われわれは会社に所属するドライバーなので応じられません。
「新宿」と「原宿」を勘違いした客が「金返せ」
また、言葉が通じないことで、目的地に関しても些細なトラブルが連発しているそうだ。「とある外国人客を原宿に送った際に、ガイドマップと全然違うと騒ぎ出し。そのガイドマップを見ると新宿を紹介していたもので、そのお客さんが行き先を『原宿』と勘違いして私に伝えていたんです。『原宿と間違えて言いましたよ』と説明しても受け入れず、とにかく料金を返したうえで、新宿に行けと激怒し始めた。こういった、目的地の勘違いは多くて、特に外国人だと道中で気づかないからたちが悪い。
いまでは、不要なトラブルを避けるために、ガイドブックを見せてもらったり、行きたい店や観光スポットを乗車時に聞くようしたりしていて。そうすれば、新宿と原宿のような大きな間違いはないですからね。でも、そこまでやっても、目的地が違うと騒ぐお客さんもいるので困っているところです」
泥酔状態の3人組が車内で乱痴気騒ぎ
文化の違いがあり、何かと外国人観光客への対応で苦労しているという渡辺さん。そんな渡辺さんが、特に注意したいと話すのは夜中の外国人だという。「飲み屋やクラブなどで酒を飲んで、ホテルに送る際の外国人は危険度マックスです。一度、3人の白人を乗せた際は、泥酔状態で大迷惑を被った。
渡辺さんは、できることなら外国人観光客の相手はしたくないとのことだ。
「個人タクシーの場合は、単純に客数が増えて売り上げも伸びるので歓迎かもしれない。ただ、我々のような会社に所属しているドライバーは、収益はそこまで高くならず苦労ばかり多く、できれば日本人のお客さんに使ってほしい。日本人でも嫌なお客さんはいますが、それでも外国人観光客とのトラブルを考えればマシです。それに、不況だと言われていますがコロナ禍以降はタクシーを使ってくれる日本人も増えて、無理に外国人に頼らなくても収益は上がります。とはいっても、さまざまな国からの観光客は今後も増え続けるでしょうし、われわれがスムーズにトラブルを対処するしか解決策はないんですよね」
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マナーの悪い外国人観光客の影響を、モロに受けているタクシー業界。現場で働くドライバーが疲弊してしまわないように、会社だけでなく国もしっかりと対策を練る必要がありそうだ。
<TEXT/高橋マナブ>
【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている