みなさんはカラオケでどんな曲を歌いますか?
実は、私たちが無意識にデンモクで入れる曲が“歌いやすいように作られている”ことをご存知でしょうか。ランキングを席巻する「メガヒット曲」や「SNSでバズる曲」には、共通する要素が存在するのです。
シンガーソングライターであり、作曲もする“音楽のプロ”の目線で、カラオケ人気曲の“特徴”を解説していきます。

なぜカラオケで「怪獣の花唄」「ドライフラワー」「マリーゴール...の画像はこちら >>

カラオケで歌われた曲ランキングを見てみると…

下に示したのは2024年のカラオケランキングTOP10です。

1.怪獣の花唄-Vaundy
2.Bling-Bang-Bang-Born-Creepy Nuts
3.晩餐歌-tuki.
4.ドライフラワー-優里
5.マリーゴールド-あいみょん
6.残酷な天使のテーゼ-高橋洋子
7.サウダージ-ポルノグラフィティ
8.さよならエレジー-菅田将暉
9.アイドル-YOASOBI
10.ケセラセラ-Mrs. GREEN APPLE

(2024年DAM年間カラオケランキング調査期間:2024年1月1日~11月16日)

ランキングには、1995年発売の「残酷な天使のテーゼ」から、2024年発表の「Bling-Bang-Bang-Born」まで、幅広い世代の曲が並んでいます。これらの曲には、どのような共通点があるかおわかりでしょうか?

曲のメロディ、歌詞、その他の要因の3方向からその共通点を考察したいと思います。

①歌いやすい音域と流れるようなメロディライン

まず、前提としてカラオケでよく入る楽曲は、歌いやすいように設計されており、極端に高すぎたり低すぎたりしない音域で構成されています。

また、メロディがなめらかに流れるようになっており、無理なく歌いやすいのが特徴です。

たとえば、「怪獣の花唄」 は、スムーズなメロディの中で抑揚をつけながら歌うことができます。「さよならエレジー」 は低音から高音へ自然に移行するメロディ。さらには「マリーゴールド」 はリズミカルで一定の流れを持つため、ともに初心者にも歌いやすい楽曲になっています。

つまり、すべて低音域も、高音域も「声が出ない」とはならないわけです。

②キャッチーでクセになるフレーズの繰り返し

次に、広くあてはまるのは、一度聴いたら頭に残るようなキャッチーなメロディラインを持っていること。また、リフレインも効果的に使われています。

「Bling-Bang-Bang-Born」 はサビのリズムとメロディが独特で、一度聴いたら忘れにくい楽曲。「アイドル」 はテンポが速く、メロディにクセがあり、「誰もが目を奪われてく 君は完璧で究極のアイドル」というサビは特に一緒に口ずさみたくなります。「ケセラセラ」 は「ケッセッラ~セラ~」と明るく爽快なメロディが何度も繰り返されていますよね。


③日本人の心に響く「切ないコード進行」

そして、コード進行にも注目したいところ。

日本の楽曲には、マイナーコードを使用した哀愁漂うメロディが好まれる傾向があります。カラオケランキングTOP10に入っている曲をもう一度見直してみてください。

感傷的な雰囲気を持つものが多くないでしょうか。実は、これは偶然ではありません。

「ドライフラワー」 は切ないメロディラインとコード進行が特徴で、感情を込めて歌いやすくなっており、「サウダージ」 は郷愁を感じさせるコード進行で、心に響くメロディが魅力です。「晩餐歌」 は独特な雰囲気を持ち、切なくも印象的なメロディになっています。

いずれも哀愁漂うコード進行という共通点があるのです。

④リズムの特徴と盛り上がり

また、メロディだけでなく、カラオケにおいてはリズムの要素も重要です。

多くの楽曲が、リズムに特徴を持ち、カラオケで歌うと楽しいと感じるものになっています。

「Bling-Bang-Bang-Born」 はヒップホップ要素を含み、リズムが際立ち「アイドル」 は速いテンポと変則的なリズムで、歌いこなしたくなる楽曲に。「ケセラセラ」 はノリやすいポップなリズムが特徴です。

これらの楽曲のメロディは、歌いやすい音域とスムーズな流れ、クセになるフレーズの繰り返し、切ないコード進行、メリハリのある展開、そしてリズムの特徴が共通しています。

やはり、カラオケでの人気が高い理由は、覚えやすく、感情を込めて歌いやすいのです。


歌詞にもカラオケで支持される背景がある

ランキング上位に並ぶ曲は、歌詞にも「カラオケで歌われる要因」があるのです。

・感情を揺さぶる歌詞

切ない恋愛・失恋ソングの「ドライフラワー」「マリーゴールド」「さよならエレジー」、懐かしさや郷愁を感じる歌詞の「サウダージ」「晩餐歌」、前向きなメッセージを込めた歌詞の「怪獣の花唄」「ケセラセラ」。扱っているのは恋愛や人生の葛藤、夢や希望、郷愁など、リスナーの心に響くテーマ。

そして、強い個性や自己表現を前面に出した「Bling-Bang-Bang-Born」「アイドル」。いずれも感情を大きく揺さぶる印象的な歌詞だと思います。

・歌詞に印象的なフレーズが繰り返される

耳に残るフレーズが繰り返されることで、歌詞が覚えやすく、歌うのも比較的容易になっています。

言葉遊びのようなフレーズのおかげでリズムに乗りやすくなっている「Bling-Bang-Bang-Born」 と、「ざ~んこ~くなてんしのテ~ゼッ!」とインパクトのあるサビが繰り返されている「残酷な天使のテーゼ」は象徴的。

「ケセラセラ」も、耳に残る「ケッセ~ラセッラ」という単語が気持ちを明るくしてくれそうです。

・日本語の響きを活かした表現

カラオケランキング上位の曲の歌詞は、日本語ならではの響きや言葉遊びをしているのが特徴です。

たとえば、「サウダージ」 は「いつかまた逢いましょう その日までサヨナラ 恋心よ」と異国情緒ある言葉遣い。「アイドル」 は「洒落臭い 妬み嫉妬なんてないわけがない」と韻を踏むことで、スピード感があります。

全体的に感情を揺さぶるストーリー性を感じさせる歌詞が多いのです。

SNSで思わず手を止めてしまうフレーズがフックにも

近年、TikTokやInstagramのリール、YouTubeショートなどのショート動画プラットフォームの影響力が急激に拡大しました。
これが、カラオケでの人気に作用していることは間違いありません。

「Bling-Bang-Bang-Born」 や 「アイドル」 は、その特徴的なリズムやキャッチーなフレーズが短い動画で使われやすく、ユーザーの記憶に残りやすい楽曲です。

これらの楽曲はバズることで幅広い層に浸透し、カラオケでも頻繁に選ばれていると言えるでしょう。

最後に、ベタですが「盛り上がりやすさ」も大きなヒット要因となっています。「怪獣の花唄」 はエネルギッシュなサビが特徴で、ライブ感覚で歌えるためカラオケで特に人気がでました。「Bling-Bang-Bang-Born」 はテンポの速いラップがカッコよく、挑戦したくなる曲として選ばれることが多いようです。

歌詞やメロディに加え、「歌って楽しい」「みんなで盛り上がれる」「感情を込めやすい」 という要素もまた、ヒット曲を生み出す鍵になっているはずです。

<TEXT/冬月みぃな>

【冬月みぃな】
音楽ライター、クラシカル・クロスオーバー歌手。長年混声合唱団に所属し、様々なソリストに選ばれる。普段はライブやコンサート、モデルをメインに活動する。2022年、テレビ東京系「開運!なんでも鑑定団」のエンディングテーマ「太陽になる」をリリース
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