Googleマップのレビューは賛否両論だが…
今回は都心から近くて遠い、長野県川上村にある「天然水晶洞(湯沼鉱泉旅館)」。川上村は直線で約100kmと都心から最も近い長野県。埼玉県とも接している。だが、間に標高2000m超の山々が連なる秩父山系が立ちはだかっているため、かなり大回りしないと近づけない。だからなのか、珍スポット好き界隈ではあまり知られていないようだ。長野・新潟取材用にGoogleマップを眺めていたら、ロマンチックな名前を発見。それがここだった。写真や口コミは必ず参考にしているのでこちらもチェック。ん? なんだかだいぶ「香ばしい」ところのよう。「猫アレルギーの方は注意 入口の建物が猫くさい」「人を選ぶ宿なので注意」「思っていた10倍は猫臭い」「猫アレルギーでなく、鉱物好き、猫好きなら最高の宿」「ここは一般の方には向かないかもしれません」などなど。
水晶がキラキラ輝くロマンチックなものをイメージしたのだが、どうもそれは違うようだ。賛否両論というか、猫の臭いがすごく、部屋は汚いと「否」が多め? でも鉱物好き、猫好きには天国で、オーナーや女性従業員の方はとてもいい人らしく、31件の口コミで総合評価は★3.9とけっして悪くない。
旅館に泊まるのはほぼ「鉱物マニア」

現地に到着してビックリ。かろうじて看板があるからそれと判別できたが、雑草が屋根に密生し、平屋の建物が森と完全に同化していた。この部分が建物の入口のようだ。自分が猫を飼っているせいか、それとも鼻が悪いせいか(けっこう詰まりがち)特に臭いは気にならない。でも入口(ロビーとは言い難い荒れよう)付近はだいぶ散らかっていて、なるほど宿泊にはかなり勇気が必要そうだ。
鉄製の階段を降りていくと、広大な空間が

錆だらけの支柱を見つつ、薄暗いなか鉄製の階段を降りていく。そこにはかなり広大な空間が広がっていた。天然水晶をはじめ各種鉱物が大量に展示されている。
ただ、ところどころ電気が消えていたり、非常に詳しい鉱物説明書きがあちこちあるものの、汚れて字が読みづらいものが多く、全体的に古びている。もう何年も時が止まっているかのような、なんともいえない不思議な空間だ。水晶がキラキラしている細長い天然洞窟のイメージはすでに完全に崩壊している。スマホのライトだけだと心もとないので、ハンディライトは持参した方がいいかもしれない。
愛されている理由がわかった

オーナーはもともと家業を引き継ぎ農家として働いていた。農地を広げている時に水晶を発見。
その宿も、訪れた時は水回りが故障したままで鉱泉も利用できず、宿泊者には村内の共同浴場を使うように言っているとトーンが下がる。たまに鉱物の話になると語気がいくぶん強くなるが、それ以外は穏やかで優しい口調。時折、猫が横を歩いていく。万人受けはしないだろうけど、愛されている理由がなんとなくわかった。水回りその他不安はあるけど、宿泊・博物館見学希望者は電話で確認を。
<TEXT/関口勇>

本館の受け付け部分。ガラスケース内には鉱石も置かれているが、雑然としていた

これが川上村でしか産出されないという日本式双晶(ハート型水晶)タイプの緑水晶

日本各地の鉱物が並ぶガラスケースは汚れていて見づらい

紫外線で光る鉱物が古めかしい箱に入っていた

近くの山(水晶鉱脈地)に散乱しているという米軍戦闘機の破片も一緒に並んでいる

水晶洞からの帰路は別ルートには、かつてあった湯沼大池(訪れた時は湿地帯)のスワンボートもあった
【天然水晶洞(湯沼鉱泉旅館)】
〒384-1404 長野県南佐久郡川上村居倉293
0267-99-2771(日中は病院通いで不在の場合もあり)
天然水晶洞:入館料500円
宿泊:6,500円(ただしお風呂が使えない場合は6,000円。宿泊者は入山料・博物館入館料が無料)
【関口勇】
『ワンダーJAPON』編集長(フリーランス・発行元はスタンダーズ)。