その中心となっているのが、HIDEOMIさん、misakiさん、kosukeさんが立ち上げたギャル男文化の復興を目的としたサークル「Lancer Noise Eldrago」(以下・LANDORA/旧チョベリグ)だ。彼らはギャル男ファッションやヘアセット、パラパラなどのダンス動画を発信しており、渋谷に出現した際には、SNSでは「センター街にギャル男がいる!」と噂になっている。
今回登場するのは、メンバーのひとりであるHIDEOMIさん(年齢非公開)。なぜLANDORAは生まれたのか、彼らにとってギャル男とは何なのか。
ギャル男になったきっかけはホスト。GLAYを参考にしていた時期も

「みんな超かっこよくて。で、この人たちの卒アルを見たら全員ギャル男だったんですよ!あ、俺もこうなりたいと思って。前からチャラチャラはしてたんですけど、もっとガチでやろうって。それで、カラコン入れたらかっけえっしょ!メンズメイクしちゃお!とか色々やって出来上がったのがこれで。ここ半年ぐらいのことですね」

「GLAYとかを参考にしていた時期もありました。昔の雑誌を見て、それを真似しようと髪の毛をいじくってみたりとか。でも今は『men’s egg』モデルだった引地(敬澄)くんが好きですね!」
動画は100万再生超え。ギャル男仲間でサークル「チョベリグ」結成へ

その後、kosukeさんもmisakiさんのカットモデルに。それからmisakiさんの提案で、3人で集まることになった。ギャル男話で盛り上がれることなんてなかなかない。話は尽きなかった。
ある日、3人は渋谷に集まり撮影会を実施。試しにそれをSNSに投稿してみたところ、すぐに100万再生を突破した。平成が来る、ギャル男の時代が来る、そう予感したという。
「一気に認知されてこれやばいわみたいな。じゃあやるしかねえ、一発やろうってことでサークル『チョベリグ』(現LANDORA)が始まりました」
HIDEOMIさんの声かけで目覚める人も

「次はこういう撮影したいよねとか、ここでこういうの撮りたいよねとか、共有しまくってます。3人とも超うるさいし、アホそうなのにめっちゃ賢いんですよ」
DJイベントも定期的に開催している。平成ソングが大音量で流れる中で、バーベキューとパラパラを楽しむというもの。HIDEOMIさんは楽しそうにこう語る。
「音楽をかけて踊るだけだとよくあるけど、そこにバーベキューを足したら新しいんじゃねってなって。はじめはビルの屋上を借りてやりました。でもそれだと苦情はくるわ、雨が降ったら中止だわで、大変すぎて。
チャラそうな男性たちをギャル男の世界へ誘ってみることもある。彼らになぜギャル男にならないのかと聞くと、「ヘアセットの仕方がわからないから」と返ってくることが多いという。
ならば自分がヘアメイクをやればいいと、最近ではHIDEOMIさんが彼らにヘアメイクを施し、みんなで渋谷に出かけることも。それを機にギャル男に目覚める人もいるらしい。
そこでこんなイベントも考えているようだ。
「男はヘアメイクの仕方がわからない人が多いんです。だから次のイベントでは、椅子とVO5(ヘアスプレー)とアイロンを持って行こうと思ってます。男子の髪の毛をがっしゃがしゃやろうと思って(笑)。超ストレートヘアだった子が、会場から出てくると超盛り髪みたいな。それでそこでかかってるBGMが全部平成なんですよ!?そんな最高な空間、令和にないだろって」
ギャル男スタイルは無敵になれる

「ギャルやギャル男を広めることは、社会貢献なんですよ。最近はぴえんの子とかいるじゃないですか。私は死ぬんだみたいな。ってことは、もうすでにどん底なわけじゃないですか。そこから下に行ってどうするのって思うんですよ。だったらみんなで楽しいと思えるものを作ろうよって。みんなを明るくできるところにギャル男の魅力ってあると思います。俺もギャル男になってからいい意味で性格変わりましたから。だから俺たちが広めていければ、人の温かさが戻ってくるんじゃないかなって思います」
実際にLANDORAの活動によって、自信を持ち始めている人もいるようだ。
「この間の撮影でみんなに『COCOLULU』を着せたんですよ。そしたらその中のひとりが『やばい、今日渋谷がきれいに見える』って言うんです(笑)。この街の中で自分が一番目立ってる、自分が輝いてるから景色がきれいに見えるって。
そう話すHIDEOMIさんの目はキラキラしていた。そして、ギャル男文化復興への意気込みをこう語る。
「敵がいればもう越すだけなので。上にいる人間に追いつこうじゃなくて、抜かすしかない。立ち止まればどんどん下に行っちゃう。だから走れるときに走ろうってみんなで駆け上がってますよ。俺もmisakiさんもkosukeさんも負けず嫌いなんで。そしたらもう誰かしら壊れるまでは止まれません」

<取材・文/奈都樹、撮影/長谷英史>
―[“ギャル”のその後]―
【奈都樹】
1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターに。