日本国内にある空港は97か所。そのうち鉄道が乗り入れているのはわずか12か所しかない。
とはいえ、そのほとんどは距離的に離れており、駅によってはバスが接続しているが、徒歩で空港と行き来する者はまずいない。だが、地図で調べてみると最寄り駅まで数キロ圏内という空港もある。
それでも空港へのアクセスとしてまったく機能しておらず、なかには秘境駅と化しているケースも。そのひとつが鹿児島空港の最寄り駅であるJR肥薩線の中福良駅(鹿児島県霧島市)。
筆者は昨春、仕事で鹿児島を訪問。通常マイカーやレンタカー以外では、鹿児島中央駅などと結ぶバスの利用が一般的だが、せっかくなので空港からこの最寄り駅まで歩いて向かうことにした。
滑走路の隣に茶畑が広がる鹿児島空港

でも、空港ターミナルの出入口の横に天然温泉の足湯を発見。無料だったので早速足を入れてみたが気持ちいい。これから歩いて駅に向かうのが嫌になってしまったが、なんとか心を奮い立たせて出発。

地下道を抜け、緩やかな坂を上った先には、あたり一面に茶畑が広がっている。意外に思われるかもしれないが、鹿児島県のお茶の栽培面積と生産量は、いずれも静岡県に次ぐ全国2位。
大昔の噴火によって形成された火山灰を含んだシラス台地がお茶の栽培に適していると聞いたことはあるが、空港のすぐ横に茶畑がある空港は全国でもここだけ。なんだか不思議な光景だ。
街灯すらない細い山道で、空港最寄り駅へ向かう結ぶ道とは思えない

以前、空港最寄りの秘境駅として一部の鉄道ファンの間で有名な北海道の西女満別駅から女満別空港まで歩いたことがあったが、秘境度はこちらのほうが上。
まだ晴れているから木々の間から日差しが入ってくるが、人気のない山道を1人で歩くには勇気が要る。
おまけにまだ春先で虫が少なかったのはよかったが、山はスギだらけ。花粉が大量に飛んでいるのか、山を下りながら何度もくしゃみは出るし、目もちょっと痒い。

空港最寄り駅とは思えない、絵に描いたような山間の秘境駅だった

訪れたのは24年3月下旬。まだ満開ではなかった集落内にあった桜の木が咲き始めていた。これを見られただけでも空港からわざわざ歩いてきた価値はあった。


中福良駅の隣には鹿児島県内で一番古い駅舎も

どちらの駅も空港からのアクセスは、お世辞でもいいとは言えないが、ローカル線が好きな方にはオススメ。
飛行機で鹿児島を訪れた際、あるいは帰る際には、あえて少し足を延ばしてこれらの空港近くの秘境駅に立ち寄ってみてはいかがだろうか。
<TEXT/高島昌俊>
―[シリーズ・駅]―
【高島昌俊】
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。