文/椎名基樹

オールスター感謝祭でエガちゃん炎上…

江頭2:50が炎上…令和の時代でも“暴走芸人”を「テレビマン...の画像はこちら >>
 エガちゃんこと江頭2:50が、オールスター感謝祭で暴走し、永野芽郁を泣かせてしまい炎上している。動画配信サービス「TVer」では、エガちゃんの出演部分がカットされて配信された。

 今の時代に、どうしてエガちゃんをブッキングしたか不思議であるが、きっと番組を制作したテレビマンたちも予定調和を超えたバラエティー番組が作りたかったのだろう。


 エガちゃんも自身のYouTubeチャンネルの中でこの件について語り、「今回のテレビ出演にあたって、俺もドキドキワクワクさせたいっていうのはあったよ。それぐらいしかないじゃん。俺の芸って……」と語っている。

スタッフも想定外の事態に…

 エガちゃんは、バラエティーに呼ばれた以上「禁忌」を破ることが、自分の役割だと自負している。きっとテレビスタッフも、そうした彼の姿勢に期待したのだろう。「笑いの神様が降りてくる準備をする」ことが、バラエティー番組を作るということなのだから。

 スタッフは、当然ある程度の暴走は考慮していただろうが、エガちゃんが永野芽郁を泣かせてしまうことまでは想像できなかっただろう。なまはげを恐れて泣く、子供のような純粋さを持った永野芽郁を一瞬にターゲットに選ぶエガちゃんの「バラエティーの野生の勘」が衰えていなかったゆえに、炎上事件に発展してしまったのだ。

 余談だが、私はエガちゃんの「バラエティーの勘」が衰えていないことを確認すると同時に、エガちゃんを恐れて、脱兎のごとくひな壇最上段に駆け上がった永野芽郁の運動神経の良さも知ることになった。

 この番組で行われたバスケットボールのフリースローのゲームでも、彼女の運動神経の良さに感心させられた。このギャップこそが永野芽郁の魅力で、そのユニークな個性にエガちゃんが反応してしまったのかもしれない(笑)。

近年ではエガちゃんの「いい人キャラ」が浸透

 昨今では、エガちゃんは、暴走キャラ以上に「いい人」と認識されている部分も多いと思う。「愛されキャラ」であることが、今回の出演に「GOサイン」が出た理由かもしれない。

 近年では、代々木アニメーション学院の入学式の祝辞が感動的であると話題になった。
「夢を持ったならば、簡単にあきらめるな」という熱いメッセージに、会場の多くの若者が涙を流していた。

 そのメッセージの中で「真剣に夢に向かい合えば、バカにする人間も出てくるだろう。そんな時、辛くなったら、俺を見ろ! 悩むのがばかばかしくなるから」とエガちゃんは言った。

 世の中から疎まれながら、問題を起こし続ける自分の姿が、人を勇気づけるとエガちゃんは信じているのである。自分が一貫して、芸人として同じ姿勢を貫いているからこそ、見る者に何かを与えられると自負しているのだ。

テレビマンがエガちゃんを起用したくなる理由

江頭2:50が炎上…令和の時代でも“暴走芸人”を「テレビマンが起用したくなったワケ」
江頭2:50 公式YouTubeチャンネル『エガちゃんねる』の投稿にて、「SNS等で永野芽郁さんを非難・攻撃するような投稿が見受けられます。永野さんは決して悪くありませんし、江頭本人もこのような事は望んでおりませんので、すぐにおやめください」と注意喚起を行なった
 エガちゃんは「ドブネズミみたいに美しくなりたい」と思っている。だからこそ「ドブネズミみたいに誰よりも優しい」のだ。しかし、現行のテレビのルールでは、ドブネズミはドブネズミでしかない。そんな不寛容な、世界観に違和感を感じるからこそ、テレビマンもエガちゃんを起用したくなるのだと思う。

 くだんの祝辞の中で、エガちゃんは「99人がバカにしても1人が笑ってくれればいいじゃねえか」と言った。だから、エガちゃんにとって今回の行動によって賛否両論が巻き起こることは、最初から覚悟していることだったはずだ。

エガちゃんが許せなかったネット民の声

「エガちゃんねる」の中で、唯一エガちゃんが、気色ばんだのは「どうせ台本なのだから」というネット民のコメントを知ったときだった。「どんな仕事も真剣にやっている」と、てらうことなく若者の前で宣言したエガちゃんにとって、許せないものは、自分に対する批判ではなく、こうした「したり顔の高みの見物」なのだ。


【椎名基樹】
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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