元セクシー女優でフリーライターの「たかなし亜妖」がお届けする連載コラム。2016年に「ほかにやることがなかったから」という理由でセクシー女優デビュー。
女優生活2年半で引退を決意し、ライターへ転向。現在はメディア出演も積極的に行っている。

夜職の「意外と知られていない3つのこと」

「セクシー女優の撮影現場は“地味な流れ作業”」…元女優が暴露...の画像はこちら >>
 先日、夜職のセカンドキャリアについてのトークショーに登壇したとき、「やはり、夜職の世界は知られていないことが多すぎる」と実感した。公演の時間が限られていたので私が口にした内容は、かなり“初心者向け”だったのだが、良い意味でお客さんたちの反応が良すぎたのである。

 夜にまつわる情報がSNSなどで多く流れているため、「知っている前提」で話すと危険だという学びを得つつ、セクシー女優の現場の流れや給料の件など、まだまだ世間の理解は甘い現実を突きつけられた。

 今回はイベントの中で話した内容からピックアップし「知られていそうで意外と知られていないこと」を3つ紹介しよう。“こちら側の人間”やセクシー女優ファンからすると常識に思える内容も、一歩外を出れば完全なる常識外なのである。

①ビデオ撮影現場は想像以上に流れ作業

 観客の「へ~」といったリアクションがもっとも大きかった瞬間は、ビデオ撮影の現場が淡々と行われる事実を伝えたときだった。

 時間厳守で仕事をこなす部分を私は「ベルトコンベアー」なんてふざけた言い方をするのだけど、「みなさんの想像以上にTHE仕事感満載だ」と「時間通りにやるべきことをやるので、撮影といっても地味な“作業”っぽい」と話したら、意外だったらしい。

 撮影=桃色の世界を想像されていたのか、はたまた派手で華やかだと思われていたのかはわからないが……。実際はバタバタで、ねっとりとした空間とは無縁なのである。だから変な期待を抱いて業界の扉を叩けば、かなりガッカリするだろう。

 もし業界が現場見学ツアーなんて組めば、高確率で期待に胸を膨らませた人々が「金返せ」と怒るに決まっている。

 現場が流れ作業なことが全く知られていなかったことは、話したこちらも予想外だった。


②ナイトワーカーの出戻り率について

 ナイトワーカーの出戻りについても散々記事を書いており、夜職のセカンドキャリアもネットで取り上げられる機会が増えたため、“出戻り率”についてはそこそこ認知されていると思っていた。というか、トークショーを見にくるタイプの人々は、キャストや歓楽街の現状について詳しいと、こちらも勝手に決めつけていたところはあるのだが。

 夜職→昼職や結婚で業界から羽ばたいても、いろいろな事情が相まってカムバックするケースは歓楽街で日常茶飯事。一店舗につき最低1~3名くらいは出戻り組が必ず在籍していて、有名店であるほど「居心地がいいし、お金もいいから戻ってきちゃった」が多発するという……。

 しかし世の中では、スパッと卒業したら戻ってこなかったり、結婚したらそのまま一生幸せになれると思われがちらしい。

 実際は出戻りなんてほぼ“当たり前”。しかも元 売れっ子ほど好待遇で戻れてしまうため、かつて華々しく活動していた演者やキャストほど出戻りを繰り返し、結果的にナイトワーカーを続けてしまう人が多いのだ。

③まだ、稼げると思われている

「セクシー女優の撮影現場は“地味な流れ作業”」…元女優が暴露する「意外と知られていない3つの裏事情」
たかなし亜妖
 世の中には「お金がなくなったら水商売をやればいいや!」と口にする女性や「いいよな、ホストはカッコいいだけで稼げて」と僻む男性、そして「脱ぐだけで月収数百万貰いやがって!」とセクシー女優のアンチおじさんなど、夜職はアホほど稼げると思う人々が存在する。

 私は今まで「夜職はもう全員が全員、稼げる世界ではありません」と散々言い続けているのだが、まだまだ一般には認知されていないらしい。まぁ都心に“1億円プレイヤー”なんて書かれたホストクラブの宣伝カーが走っているくらいだから、「夜職=高収入が当たり前」という考えが根付くのは仕方のない話だけれど。

 本当に稼ぐのはピラミッドの上部のみで、後は昼職よりちょっと良いくらいか、悲惨な生活を送るのが現状だ。今のナイトワーカーはかなりシビアなものの、痛々しい現実を知らないから歓楽街に飛び込む人間が絶えないのかもしれない。

 稼げないから貯金がない、だからこそやめたくてもやめられない。蓄えがないからセカンドキャリアにいけず、いつまでもダラダラと続けてしまう……。
夜の世界は今、こんな負のスパイラルに陥るキャストが多いため、夜のお店の苦戦がキャストたちの次のステップを阻む原因にもなっている。

夜職は“閉ざされた世界”と再認識

 意外と知られていない裏事情が多いことを知り、夜職はやはり閉ざされた世界なのだと改めて思った。だからこそみんなが興味を持ち、自分が業界人にならずともかつての経験者の話に耳を傾けたり、ネット記事を開くのだろう……というのが、自分なりの見解だ。

 夜職の偏見をなくそうとは思わないし、なくなるとは思わない。けれども、裏側を伝えたら何も考えずに業界入りして失敗する人や、「自分には無理だ、やっぱりやめておこう」と踏みとどまる人、そして「いや、私ならこの世界で後悔なく頑張れそうだわ」なんて腹を決める人が増えるかもしれないため、今後も包み隠さずに話すつもりである。

 トークショーへの登壇は、現実を知るのに良い機会だった。「またどこかで呼んでもらえないかしら」と図々しい期待をする私がいる。

文/たかなし亜妖

―[元セクシー女優のよもやま話]―

【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。
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