前回のテスト販売では早々に売り切れてしまい食べられなかった私は、一体どんな味なのか気になって仕方がありませんでした。そこで今回満を持して実食することに。
ただ単なる個人的な実食レポをしても面白くないので、X上での反応を見ながらいろいろ考察をしてみたいと考えました。
気になる投稿「ガソリンの味がする」
多くの大絶賛コメントがある中で、称賛とは一線を画すような、堂々とした否定意見があることに気がついたのです。その内容を見ていくと、不味い、しょっぱいといった“定番コメント”に加えて、「身体が拒否する」「ガソリンの味がする」といった辛辣なコメントが出てくるではないですか……!えっ、ガソリンの味? ガソリンを味わったことのある人などいないはずなのに、一体なぜなのでしょうか?
このようなコメントを見ると、これから食べようとしている人にとっては悪影響にもなりかねません。だからこそ、私自身が実食しながら、辛辣コメントの信ぴょう性について、公平かつ冷静に整理したいところです。「ニンニク野菜牛めし」の否定派コメントはどこまで説得力を持つのでしょうか?
まずは実食。完食して思ったこととは?

「今日はがっつり食べるぞ」というやる気がみなぎってくるではないですか! もやしとキャベツが期待以上にシャキシャキとしていて、どんどん箸が進みます。予想よりもしょっぱくないと思いきや、別添えの背脂醤油ダレを加えると、かなりのにんにく感と濃厚な味わいを正面から受け止めることに。
あくまでも私の個人的な感想になりますが、お世辞抜きに気に入り、あっという間に完食してしまいました。そして野菜の下に敷かれていた牛めしのおいしさを再実感。野菜を牛肉で巻いて食べる新しい味わい方を知り、なんならリピートしようと決意したほどです。

ニンニクとガソリンのにおい成分には、ある共通点があった

それでは今回のメニューのポイントになっている「ニンニク」と、一部で言われている「ガソリン」のにおい成分はどうなっているのでしょうか? ニンニクには「アリシン」というニンニク独特の香り成分があり、これが疲労回復や滋養強壮に役立つとされています。この成分は刺激性がある硫化アリルの一種であり、「硫黄」を含む物質。一方ガソリンには、主成分の炭化水素に加えて硫黄が含まれます。
ただし人の嗅覚には味覚と同様に個人差があり、誰しもがそう感じるわけではありません。実際に「ニンニク野菜牛めし」をおいしいと投稿している人の方が大半です。しかしながら、今回のように過剰なニンニクが口の中に入った時、一部の人にとってはガソリンのようなにおいを感じてしまい、それが結果として味わいに影響を与えてしまっている可能性は否定できません。
食べる人によって感じ方が違うメニューだった?
ちなみに「ニンニクのにおいをどう感じるか?」についても、実は状況によって変わってくることがあります。そもそも動物はにおい物質に対して好き嫌いの好みを示すものの、おなじにおい物質であっても濃度が変わると好みが変化することがわかっています。例えばインドールという香り成分。低濃度の時にはジャスミンのようなフローラルな香りがするものの、高濃度になると大便のような不快臭になってしまいます。つまりにんにくのにおいも濃度や量によって好みが変化する可能性は大いにあるということ。これらのことから考えると、今回の「ニンニク野菜牛めし」は、食べる人によって感じ方が違う可能性があり、おいしいと感じる人もいれば、許容しがたい嫌悪感を抱く人もいるのかもしれません。今回それがX上で明るみになり、賛否両論が分かれている理由であると考えられます。
商品説明に「超味濃い」と親切に書かれていることからすると、松屋としてはいろいろ言われることを想定した上でテスト販売も経て全国発売に踏み切っているに違いありません。そういう意味では自分がどちらに振れるか、試してみたくなってきませんか? いずれにしても期間限定の商品なので、気になる人は早めに試してみてはいかがでしょうか。
<TEXT/スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。世界中の健やかな食文化を追求。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)が好評発売中。Twitterは@sugiakatsuki12。