15頭が登録した3200mの長丁場で勝利に最も近いのはどの馬か。東京大学在学中に東大ホースメンクラブで予想の腕を磨いた鈴木ユウヤ氏にレースの見解を聞いた。
(取材・構成=中川大河、取材日=4月29日)
今年のG1回収率は628%!
——今年に入ってからどのレースもワイド1点で勝負しているそうですね。鈴木:場合によって単勝や馬連1点にすることもありますが、基本的に本命・対抗のワイド1点勝負です。
——今年の回収率は100%を超えているとか。
鈴木:JRAは平場を含めて110%ですね。G1に限れば、桜花賞以外を当てていて、回収率は628%です。
——桜花賞以外ってことは5戦4勝ですか。この勢いで天皇賞(春)もズバッと頼みます!
鈴木:まだ枠も馬場も分からない状態ですが、お役に立てれば幸いです。
——では早速、ヘデントールから行きましょう。D.レーン騎手が騎乗予定で1番人気が予想されています。
鈴木:実は上位人気が予想される馬の中で、唯一下げる要素アリと見ているのがヘデントールです。
最有力候補ヘデントールに死角あり

鈴木:能力が高いのは間違いないのですが、強い勝ち方をした昨夏の日本海S(3勝クラス)と前走のダイヤモンドSはどちらも左回りなんですよね。
——そういえば、今年のG1は1番人気の馬が5戦全敗。今週も波乱のにおいがしてきましたよ。
鈴木:勝っても不思議はないですが、他により魅力的な馬がいますからね。ワイド1点勝負は1頭までなら消した馬に来られても大丈夫というのもあるので。
——ではズバリ、もっとも信頼を置けそうなのはどの馬ですか。
鈴木:サンライズアースです。過去10年で阪神大賞典の勝ち馬が9頭出走していますが、【4-2-2-1】と崩れていません。唯一、馬券圏外だった2020年のユーキャンスマイルも4着でした。
——好相性の阪神大賞典を6馬身差で圧勝。他にサンライズアースの推し材料は?
鈴木:阪神大賞典は残り1200mから11秒台のラップを刻むかなり早仕掛けの展開でした。普通は前が苦しくなるものですが、上がり最速の末脚で後続をちぎりましたから。
——今回も前に行きそうですね。
鈴木:前走は途中まで逃げたことで物見をして集中力を欠いたようなので、ジャンカズマを行かせて2番手で運ぶのが理想でしょうか。前に馬を置いた方がいいのは間違いないです。ただ、どちらにしても残り1000mくらいからロングスパートをかけて、スタミナ勝負に出るでしょうね。逆に後続を引き付けすぎてしまった時は切れ負けする可能性もありますが、そこは百戦錬磨の池添謙一騎手ですから心配していません。
京都3200mは内枠が有利

鈴木:序盤はスローでしょうから、枠順も非常に重要になります。京都の3200mは、コーナーが6回ありますから、外々を通らせると距離のロスが大きいですし、前に壁を作れないと折り合いを欠く馬も出てきます。
——となると、やはり内枠が有利ですね。
鈴木:はい、京都開催の過去10回を見ても1~4枠が【6-6-6-56】(複勝率24.3%、複回収率112%)、5~8枠が【4-4-4-80】(複勝率13.0%、複回収率50%)なので、外目の枠に入った馬は少し割り引いた方がいいでしょうね。
——サンライズアースが内枠に入ったら逆らえないかもしれません。2年前の覇者ジャスティンパレスはどうでしょう。
鈴木:この馬は古馬になってズブさを見せるようになってからいい位置が取れてないんですよ。なので、今回の距離延長はかなりプラス材料ですね。
——3000m超のレースはちょうど2年ぶりなんですね。ただ近走の着順を見ると、精彩を欠いていますが。
鈴木:精彩を欠いているといっても、展開が向かない中で着差はそれほどでもないですし、去年の有馬記念で掲示板(5着)を確保していることも評価できます。過去10年のデータで、前年の有馬記念で5着以内に入っていた馬は【6-2-2-5】(複勝率66.7%)の好成績を残しています。この馬はずっと一線級を相手に走ってきましたから、中距離の王道路線に比べてメンバーレベルがやや落ちるここで2年ぶりの勝利を飾ってもおかしくないと思います。
条件がそろえばこわいシュヴァリエローズ
——穴っぽいところで気になる馬を何頭か教えてください。
鈴木:シュヴァリエローズ、ビザンチンドリーム、馬場が渋ればブローザホーンとマイネルエンペラーも候補です。
——シュヴァリエローズは私も注目していますが、前走の日経賞で12着に惨敗しました。
鈴木:前走は渋った馬場(稍重)と、枠(7枠13番)がすべてでしたね。位置も取れず、外々を通らされましたから。
——ビザンチンドリームは前走サウジで60kgを背負って勝っていますね。
鈴木:前走も強かったですが、3走前の菊花賞で躓く不利がありながら差のない5着。ヘデントールともコンマ1秒差ですし、怖い1頭ですよ。
——雨が降れば、ブローザホーンとマイネルエンペラーが浮上しそうですね。ただ、サンライズアースに話を戻すと、この馬は良馬場しか経験がありませんが、渋った馬場もこなせそうですか?
鈴木:こればかりはやってみないとわかりませんが、兄がダート重賞を3勝しているセラフィックコールなので、力を要する馬場も苦にしないと思います。枠や天気に関係なく、サンライズアースは高く評価するつもりです。
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鈴木氏は1~2番人気が予想されるヘデントールとサンライズアースに対照的な評価を下したが、果たしてその結果やいかに——。天皇賞(春)は、5月4日15時40分に発走を迎える。
【鈴木ユウヤ氏 プロフィール】
東京大学卒。編集者を経てライターとして独立。
取材・文/中川大河
【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。