―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。
物件選びのポイントで私が一番大切にしているのは、住んでくれる人が居て「家賃が入るのか? その状態が長く続くか?」という点です。家賃さえ入ってくれば、わずかかもしれませんがプラスです。大きな勝ちではなくとも、プラスであれば負けはしません。そして、「わずかなプラス」でも長い期間を積み上げれば「大きなプラス」になります。
一方で少しでも投資を有利にしたいという心理から、値上がりするエリアで物件を探している人も多いのではないでしょうか。もちろん所有している物件の価格が上がれば嬉しいのですが……。物件とは、どうせ売ることのない「金の卵を産む鶏」だと考えています。ですから、その価格がいくらであろうが、例え値上がっていくらになっても、売らない限りは自分にはまったく関係のない話なのです。
そこで私の場合は、購入前には「管理組合に借入はないのか?」「大規模修繕などの必要な工事がちゃんと実施されているか?」といった点はしっかり確認するようにしています。借入がある場合は「今までの管理組合の運営が失敗していた」という証左です。過去に管理費や修繕積立金がしっかり集まっていない状況にも関わらず、今後は返済に資金を回さないといけないため、将来的に資金ショートの可能性が高くなります。また、借入がなかったとしても、必要な工事が行われていないケースも危険です。このようなマンションでは購入後に管理費や修繕積立金が上がると容易に想定できるため、当初の見込みより投資効率が悪くなっていくのは自明の理です。
また、その部屋の管理費や修繕積立金の金額についても確認するようにしています。物件によって本当にまちまちで、異常に安く設定されていたり、反対に高い場合もあります。「支払うものだから管理費や修繕積立金は安ければいい」というわけではありません。安いと10~20年単位で行う大規模修繕の工事や給排水管の工事もできなくなります。一方で管理費が高いから「ちゃんと管理されている」と安心してはいけません。管理会社の系列の事業者にしか工事を依頼できず、割高な工事費を請求されているだけのケースも多々有り得るのです。その管理組合がどのようにお金を使っているのか。
一方で、アパート(木造)の多い地区ではマンション(SRC/RC)と比べて建築費が安いこともあり、比較的安い賃料で貸し出している物件も多く、この家賃以下の物件も多数存在しています。結果としてそんな地区では「5万3,700円で募集すれば必ず入居者が見つけられる」という安心感がないため投資ができず、なかなか目標の「23区スタンプラリー」が達成できないという状況に陥っています。
また、私自身はファミリータイプの2LDKや3LDKなどに投資をしないわけではありませんが、1Rや1Kの物件への投資が多くなっています。これは効率性を求めた結果です。ファミリータイプは確かに高い家賃を設定できつつ、入居すると長く住んでくれるメリットがありますが、その分空室になると部屋が埋まるまでには時間がかかったり、修繕でお金がかかることが少なくありません。
これと同じように、不動産投資の物件もあくまで住むのは自分ではなく、他の人に住んでもらうものです。自分なら「この間取りの狭さが気になるから住みたいと思わないかも……」「ここは日当たりが良くないから嫌だな」と思うような物件でも、その地域の平均的な家賃よりも低く貸し出ししても利回りが付いてきて、共用部の管理状態が良い物件であれば、買っても問題ない物件だと思っています。
不動産投資では「自分が最高に良いと思う物件」を探すためにひたすら時間を費やしてしまうケースも見られます。
構成/上野 智(まてい社)
―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。
負けない不動産投資のためには「物件探し」と「維持管理の見極め」が必要だと語ります。実際に探すなかで、投資に至るまでの物件は年2~3件ほど。村野氏が物件探しの極意について語ります。
負けない不動産物件をどう探すのか?
「負けない不動産投資」を掲げているなかで、私自身の昨今の目標は「東京23区スタンプラリー」として東京23区全部に物件を持つこと。ですから、今でも物件を探し続け、年に2~3軒ほど購入しています。物件選びのポイントで私が一番大切にしているのは、住んでくれる人が居て「家賃が入るのか? その状態が長く続くか?」という点です。家賃さえ入ってくれば、わずかかもしれませんがプラスです。大きな勝ちではなくとも、プラスであれば負けはしません。そして、「わずかなプラス」でも長い期間を積み上げれば「大きなプラス」になります。
一方で少しでも投資を有利にしたいという心理から、値上がりするエリアで物件を探している人も多いのではないでしょうか。もちろん所有している物件の価格が上がれば嬉しいのですが……。物件とは、どうせ売ることのない「金の卵を産む鶏」だと考えています。ですから、その価格がいくらであろうが、例え値上がっていくらになっても、売らない限りは自分にはまったく関係のない話なのです。
投資先物件は管理状態を確認すべし
もし不動産投資で長く物件を持つことを考えるのであれば「物件価格が上がるか」ではなく、長い期間を通して「住んでくれる人がいるか」と、人が住んで家賃を支払ってくれるために、「物件の管理状態」を気にするべきだと私は考えています。そこで私の場合は、購入前には「管理組合に借入はないのか?」「大規模修繕などの必要な工事がちゃんと実施されているか?」といった点はしっかり確認するようにしています。借入がある場合は「今までの管理組合の運営が失敗していた」という証左です。過去に管理費や修繕積立金がしっかり集まっていない状況にも関わらず、今後は返済に資金を回さないといけないため、将来的に資金ショートの可能性が高くなります。また、借入がなかったとしても、必要な工事が行われていないケースも危険です。このようなマンションでは購入後に管理費や修繕積立金が上がると容易に想定できるため、当初の見込みより投資効率が悪くなっていくのは自明の理です。
また、その部屋の管理費や修繕積立金の金額についても確認するようにしています。物件によって本当にまちまちで、異常に安く設定されていたり、反対に高い場合もあります。「支払うものだから管理費や修繕積立金は安ければいい」というわけではありません。安いと10~20年単位で行う大規模修繕の工事や給排水管の工事もできなくなります。一方で管理費が高いから「ちゃんと管理されている」と安心してはいけません。管理会社の系列の事業者にしか工事を依頼できず、割高な工事費を請求されているだけのケースも多々有り得るのです。その管理組合がどのようにお金を使っているのか。
ちゃんと見極められればヤバイ物件を掴むことはないと思います。
最低家賃から考える投資判断の基準
私は東京23区でしか物件を所有していませんが……。築古の狭くて安い物件を判断する際に一つ基準にするのは「この物件で、東京都23区の単身世帯の生活保護での上限家賃(5万3700円)が取れるか」です。家の広さも確保されていて、立地も駅近であればほぼ住む人は存在するでしょう。ですから、あとは「いくらで貸せるか?」が鍵になります。そのポイントの一つになるのが生活保護の家賃水準なのです。仮に購入金額が1000万円で家賃を5万円に設定できるならば、想定利回りは6%です。つまり生活保護の方を店子として受け入れる覚悟をすれば、この家賃水準は一つの基準になるかと思います。一方で、アパート(木造)の多い地区ではマンション(SRC/RC)と比べて建築費が安いこともあり、比較的安い賃料で貸し出している物件も多く、この家賃以下の物件も多数存在しています。結果としてそんな地区では「5万3,700円で募集すれば必ず入居者が見つけられる」という安心感がないため投資ができず、なかなか目標の「23区スタンプラリー」が達成できないという状況に陥っています。
また、私自身はファミリータイプの2LDKや3LDKなどに投資をしないわけではありませんが、1Rや1Kの物件への投資が多くなっています。これは効率性を求めた結果です。ファミリータイプは確かに高い家賃を設定できつつ、入居すると長く住んでくれるメリットがありますが、その分空室になると部屋が埋まるまでには時間がかかったり、修繕でお金がかかることが少なくありません。
長く住んでいただけに、壁紙も一部の張替えではなく、全張替えになる場合も少なくはないのです。とすると、かかる費用も大きくなる。つまり収支のブレ幅が大きくなります。ファミリータイプは1Rと比較するとボラティリティが高いと考えています。一方で退去さえなければ美味しい物件ではあります(笑)。
自分の価値基準で考えない
もう一つ、不動産投資における物件選びのポイントに「自分目線で判断してはいけない」という点があります。よく株式投資でも投資家の行動を表すのに「美人投票」の例えが用いられます。自分がもっとも美人だと思う人に投票するのではなく、大多数が美人だと思う人に投票しないといけません。株式投資では自分が値上がると思う銘柄を買うのではなく、大多数の人が「値上がる」と思う銘柄を買うのが王道と言われています。これと同じように、不動産投資の物件もあくまで住むのは自分ではなく、他の人に住んでもらうものです。自分なら「この間取りの狭さが気になるから住みたいと思わないかも……」「ここは日当たりが良くないから嫌だな」と思うような物件でも、その地域の平均的な家賃よりも低く貸し出ししても利回りが付いてきて、共用部の管理状態が良い物件であれば、買っても問題ない物件だと思っています。
不動産投資では「自分が最高に良いと思う物件」を探すためにひたすら時間を費やしてしまうケースも見られます。
私はその探していた1年間で「どれぐらいもらえたであろう家賃を失ったか?」を気にします。「不動産は管理で買え」という格言があるように、①きちんと管理されていて、②たとえ今の居住者が出て行っても次にすぐに住んでくれる人がいそうな物件を、③相場とかけ離れていない金額で買うこと。この3つが負けない不動産投資には大切なのだと考えています。
構成/上野 智(まてい社)
―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)
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