公務員、CA、学校教員。“お堅い仕事”の女性が汚部屋に悩んでSOS!
女性の清掃代行依頼を数多く請け負っているアクト片付けセンターの木下修氏によると、依頼者には次のような傾向があるそうだ。「女性の依頼者で多いのは20~40代。そのうち8割は普通の会社員です。なかには丸の内OLや公務員、CAや学校教員など、お堅めな職業の人も目立ちますし、麻布十番などの富裕層エリアに住んでいる方からの依頼も多い」
東大や慶応といった、いわゆる高学歴の人も多いという。
「皆さん『そもそも部屋の片づけ方がわからない』と言います。勉強や仕事は人並み以上に問題なくできても生活能力は著しく低いのか、我々が掃除をしても元に戻ってしまい、リピーターになる人も少なくないです。片づけられない原因としては、過干渉の親の元で育ち、そもそも片づけや掃除の仕方を知らないパターンと、発達障害などで片づけが困難になっている2パターンが多いです」
「会社の人は私が汚部屋に住んでいるとは、夢にも思わないはず」早稲田卒28歳女性

「会社の人からは『マジメな人』と思われていると思うし、フリーアドレス制で自席がないので、デスクが散らかっているとかもない。会社の人は私が汚部屋に住んでいるとは、夢にも思わないはずです」
では、なぜここまで汚部屋になってしまったのか。
「やはり育った環境の影響が大きいのかな……。
複雑な事情を抱えるA子さんだが、今回は掃除のプロであるヤスダトオル氏、秋元直人氏らの力を借り、汚部屋の一掃に挑んだ。
「ずっと人の顔色を窺って育ったから、とにかく自分で決断するのが苦手。部屋のものも『あとで後悔しそう』って思うとなかなか捨てられないんです。人からもらったおみやげとか、上京して初めて買った服とか、思い入れの強いものには特に執着してしまう。とはいえ、今回は写真に収めながら整理したことで、8割くらいは捨てられました」
精神科医は「怠惰なわけではなく、そういう特性」
汚部屋にしてしまう心理的要因について、精神科医の益田裕介氏は「発達障害が影響していることが多い」と話す。
汚部屋化は決して怠惰が原因ではないのだ。
元汚部屋女子の漫画作者が語る「片づかない理由」
今回、ルポ漫画を手掛けたハミ山クリニカ氏もまた、元汚部屋女子の一人。
汚部屋を片づける依頼者の様子に、共感する部分が多々あったという。
「壊れた香水の瓶が捨てられないという話、とてもわかります。私も思い出に囚われて、昔のものを手放すのがすごく怖かったんです。きっと、人生でこれからいいことがあると信じられる人は物を捨てられると思うのですが、そうでない人は過去のきらめきに執着しちゃうのかなと」
ハミ山氏は「私も業者を呼べばよかった」と回想する。
「片づけが苦手な人が自力でやるのは想像以上に困難で、当時の私は業者を知らず、悔やまれます。手が付けられなくなる前に業者を呼んでほしいですね。汚部屋の原因はだらしない性格のせいと思われがちですが、根底には心の問題が潜んでいることが多い。周囲の人は『片づけろ』と力ずくで介入するのではなく、心の問題にも目を向けて理解が進んでほしいと思います」
部屋と心は密接に関わっている。片づけは心のケアになるはずだ。
【お掃除研究家 ヤスダトオル氏】
清掃会社「ヤスホームサービス」代表。

清掃会社「壱掃」代表。遺品整理や生前整理、特殊清掃、ゴミ屋敷の片づけ等、清掃全般を請け負う。特に汚部屋の整理が得意分野

関東圏を中心に対応するお部屋の片づけ専門店。創業20年で、累計利用者数は1万人以上。テレビや雑誌などメディア出演も多数
【早稲田メンタルクリニック 院長 益田裕介氏】
YouTubeでメンタルヘルスに関する情報発信を行う。『まんが 夜のこころの診療所―精神科医がいるスナック』(扶桑社)など
取材・文/ツマミ具依 松嶋三郎 田中慧(清談社)青山ゆず子 漫画/ハミ山クリニカ




―[漫画ルポ[一流企業OLの汚部屋]に潜入!]―