その女性は、この店の創業者のひ孫であるトチョニカペペさん(25歳、以下ぺぺさん)。バズったことで店の知名度が大幅にアップしたが、その一方で「タトゥーが入っている人が作ったものは食べたくない」「タトゥーで料理なんて不潔」など、誹謗中傷や偏見にさらされる声もあったという。
インタビュー前編では、タトゥーを入れたきっかけなど、彼女の生い立ちについての話を伺ったが、今回は誹謗中傷コメントに対して思うことや、タトゥーに対する世間の声の話を中心にお届けする。
子供の目を塞ぐ親も…
世間はまだコロナ禍だった2021年、ぺぺさんは実家の料理屋である加一で働き始めた。現在、SNSでバズったことにより、ネットの声として目に見えるようになった、タトゥーに対するアンチコメント。ただ、SNSを始める以前は“直接的な声”として、ぺぺさんの耳に届いていたという。
「最初はお店に出たとき、お客さんから避けられていました。子連れのお客さんで、子供の目を塞いだり、私を見せないような位置に座らせたりした人もいましたね。直接の言葉としては『このタトゥー本当に入れてる?まさか入れてないよね?』と言われたり……。そういったマイナスな言葉をかけられることが多かったです」

“ネットの声”はさらに辛辣

ただ、ペペさんはそういった声に屈することは一切ないようだ。
「TikTokのコメント欄とか、本当に悪口が多いですよね。タトゥーのこともいろいろ言われますが、それだけでなく『海なしの県なのに海鮮やるな』とか……。そういうコメントがきたら家族で見せ合って『じゃあ日本でフランス料理食べられませんね~』とか言いながら笑ってます。タトゥーのこと言われても『私はあなたとは別の世界の人なので』といった考えでいられるので、まったく気にしないですね。『それで傷つくくらいなら目の前のお客さんを大事にしよう』って思います」
コメントに返信することは一切なし

「絶対にアンチコメントに対して返信をすることはないです。勝手に向こうが送って、私たちのファンの人たちが争っているのを見ています。バトルが繰り広げられるんで、普通の人よりコメント数が多いんですよ(笑)。『投稿して10分しか経ってないのに100件もコメントある……、あぁ戦ってるわ(笑)』って。なんだか笑えてきます。病むことはないし、病んでる暇があるならお店の仕込みをしないと!って思いますね」
ぺぺさんの「反応しない強さ」が、コメント数、およびインプレッション数の増加に繋がり、結果的に店の人気を後押ししているのかもしれない。
アンチコメントに落ち込む人に伝えたいこと
何を言われても落ち込まない。落ち込んでる暇があるならお客さんのことを考える。ただ、SNSの匿名コメントを見て、落ち込んでしまう人が多いのも事実。そんな人が精神的に強いぺぺさんにアドバイスを求めてきたら、どんな言葉をかけるのだろうか。
「まず『落ち込む時間も大切』ということも伝えると思います。でも落ち込み続けてもそれ以上の下はないんで。落ち込み続けて……そのあとは上を向くしかないじゃないですか。そういう落ち込んだ人が上を向いたとき、スッと手を差し伸べられる人に私はなりたいです」
恩返しは「始まりに過ぎない」

「これからもっと家族に恩返ししたいですね。祖父は加一がすべてなので、SNSの影響で加一のことを知っている人が増えてきたことが嬉しいみたいで。この前ニュース番組に出たとき、たまたま祖父が私が出ているのを見て、『出てた!とうこ(ぺぺさんの本名)がテレビに出てた!』って喜んでいたんです。それを見て、私も少しは恩返しできたかなと思うことができました。両親も『忙しくて大変』って言いながらも、顔がウキウキしているんですよ。
また、お店としては「飲食店っていうより“観光地”みたいな存在にしたいんです。見た目も楽しんでもらえるように、提灯をいっぱいにしたり、外観の装飾にも力を入れていくつもりです!」と話した。
“SNSとマッチした”トチョニカペペさんの人間性
“タトゥー女将”として話題となった、ペペさんの言葉には、見た目からは想像もつかない優しさと家族愛、そして芯の強さを感じられた。加一の動画に映し出されている「タトゥー×料理人」「タトゥー×家族愛」。それは、トチョニカペペさんが自分らしく、ナチュラルに生きてきた結果として生まれた“ギャップ”であり、それが炎上や問題提起を含めて“SNSとマッチした”ということだろう。
人は見た目だけではわからない。仕事に対する真面目な姿勢と、性格的な明るさがあるからこそ、彼女の物語は人を惹きつけるのだ。
取材・文/セールス森田
【セールス森田】
Web編集者兼ライター。フリーライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント