移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。
車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
 今回は、電車内で遭遇した“迷惑客”について、2人の体験談を紹介する。

「わざとじゃない」と謝っても執拗に絡む男性に…


「今の、わざとですよね?」満員電車で靴を踏まれた男性と口論に...の画像はこちら >>
 林孝弘さん(仮名・50代)は、仕事帰りにいつものように満員電車に乗っていた。

「駅に到着して電車を降りようとしたとき、隣に立っていた男性の靴を“誤って”踏んでしまったんです」

 すぐに「すみません」と謝った林さん。しかし、相手の男性が放った言葉は予想外のものだったという。

「今の、わざとですよね?」

 林さんが「わざとじゃありません」と否定すると、男性はさらに語気を強めて言い返してきた。

「わざとじゃなきゃ、あんなに強く踏まないでしょ!」

 林さんが再度「わざとじゃない」と説明しても、男性はしつこく絡んできたそうだ。

「なにをそんなに焦った顔してるの? やっぱり、わざとでしょう?」

「私は危険を感じたので、もう一度謝って、その場から離れようとしたんです」と林さん。

 すると、後ろから「逃げる気ですか?」と追いかけてきたという。林さんはとっさに、「なにが目的ですか! 警察を呼びますよ」と声を上げたのだが……。

“私が加害者にされるかも”…その場で110番通報


「男性は、『おもしろいね、早く呼んでよ!捕まるのはそっちだよ』と笑っていたんです。怖くなりましたね。ちょうど駅員の姿が見えたので助けを求めました」

 すると今度は、男性が先に「この人に暴行されました」と訴えはじめたという。

「駅員に『どういうこと?』と聞かれて、このままでは“私が加害者にされてしまう”と感じました。
すぐにスマホを取り出して110番通報しました」

 ほどなくして2人の警察官が到着。双方から事情を聞いた結果、林さんの説明が認められ、「故意ではなかった」と判断された。

「警察官は、『満員電車では、よくあることですからね』と理解をしてくれました」

 その後、男性は警察官に付き添われ、林さんのもとへとやってきた。「すみませんでした。もう大丈夫です」と言い残し、その場を立ち去ったという。

「警察官と男性がどのような話をしたのかはわかりません。なぜか男性の表情は明るかったですね。警察官からは、『いろいろな客がいますから、気をつけてください。万が一、先ほどの男性と顔を合わせると困りますから、別の改札口から出たほうがよいかもしれません』と言われました」

 林さんは頷いて警察官にお礼を伝え、無事に駅を後にした。 

靴のまま座席に立ち飛び跳ねる子ども


「今の、わざとですよね?」満員電車で靴を踏まれた男性と口論に。駅員と警察を呼んだ結果、“意外な反応”で…
電車の優先席
 平日の昼過ぎ、電車に乗っていた山田美優さん(仮名・30代)は、静かな車内で読書をしていた。そこへ、3歳くらいの子どもを連れた夫婦が乗車してきたという。

「乗ってくるなり、夫婦はスマホを触りながら大きな声で会話をはじめました。周りの視線が集まっていましたがお構いなし。
その親子は、私の隣に座りました」

 すると子どもが、靴を履いたまま座席に立ち上がり、ぴょんぴょん飛びはじめたのだ。

「子どもがこちらにぶつかりそうで、読書どころではありませんでした」

 子どもが「ママ、見て。ふかふかだねー!」とはしゃぐなか、母親は注意するどころか、「わー、すごい、すごい」と軽く相づちを打つだけで、気にしていない様子だったという。

 さらに、子どもは親にかまってもらいたいのか、時折奇声を上げていた。そして次の行動に、山田さんはさらに驚かされた。

お菓子をボロボロこぼしても親は無関心


「子どもが『お腹空いた! お菓子食べたい!』と騒ぐと、母親はカバンからスナック菓子を取り出したんです」

 その後の子どもの食べ方に、山田さんは思わず呆れてしまった。

「ずっとしゃべりながら食べていて、口からボロボロと食べかすが落ち座席を汚していました。指はよだれでベトベト。この状況に注意しない親に対して、憤りを感じましたね」

 ついには、よだれのついた子どもの手が、山田さんの髪の毛に触れようと伸びてきたのだ。山田さんは驚き、勢いよく立ち上がった。親も気づいて、山田さんの方を向いたのだが……。

「さすがに謝ってくれるだろうと思いましたが、『ダメだよ、静かに座ってて』と軽く注意しただけで、謝罪はありませんでした」

 山田さんは注意をしようと思ったそうだが、逆上されてトラブルになったニュースを思い出し、怒りをグッと沈めて席を離れたという。


「公共の場でのルールを教えるのは、親の責任だと思います。注意せずに育った子どもが、将来どんな大人になるのか。モヤモヤとした気持ちが残りました」

 電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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